建坪10倍 ― 顧客と社員にとって魅力ある工場に
ものづくりの上流で付加価値を生み出すスタイルで新規得意先を開拓
有限会社 田中金属
念願の新工場を開設 ― 顧客と社員にとって魅力ある工場に
千葉県市川市の㈲田中金属は2021年9月、千葉県印旛郡の酒々井町に新工場「酒々井工場」を開設した。
酒々井工場は、東関東自動車道の酒々井ICから車で5分、「酒々井プレミアム・アウトレット」(運営:三菱地所・サイモン)至近のひらけた町並みの中に立地している。敷地面積550坪、建築面積300坪で、市川市の本社工場と比べ、敷地面積は11倍、建築面積は10倍となった。
1階の製造現場には、本社工場から板金加工設備が移設され、設備増強の余地ができた。パーテーションで区切られた溶接エリアは集塵・換気の設備が整えられ、溶接ヒューム対策も万全だ。2階には設計や生産管理を行う事務所、ミーティングルーム、オープンラウンジなどがあり、いずれも心が浮き立つような鮮やかな色彩で彩られている。生産管理システムをはじめとするオンプレミス型システムのサーバールーム(24時間空調完備)も備えている。
2015年に3代目社長に就任した田中智隆社長は「板金ものづくり企業として説得力を出せる生産能力を実現したかった」と語っている。
これまで同社は、自動化ラインが入っていてもおかしくないだけの受注量を常に確保していたが、都心に近い本社工場はスペースの問題で設備を増設できない状態が続いていた。そのため、まずは“器”を大きくして、設備を増強できるスペースを確保した。
「設備面では、パンチングマシンの自動化ラインを導入するのが次の目標。その後も、できるだけ社員の負担を軽くするような人間工学の発想を採り入れた自動化設備を順次導入していきたい」と田中社長は語る。
「それと同時に、一緒に仕事をするお客さまや、これから入社してくれる若い人から見て、可能性を感じ、期待を抱けるような魅力ある工場にしたかった。今年生まれた人が成人して働くようになる20年後、30年後に、『ここで働きたい』と思ってもらえるような工場 ― 気難しい職人が思い思いに仕事をするというよりは、明るくて風通しが良く、チームで盛り立てていくような工場を目指しました」(田中社長)。
“エンドユーザー”の満足度を最重視
同社はこれまで、敷地50坪、従業員数5名前後と“ハードウエア”の面で大きな制約がある中で、デジタル化を含む“ソフトウエア”を武器に発展を遂げてきた。
先代の田中幸雄氏は1993年頃から、コンピュータを活用したデジタルなものづくりへとシフトするため、他社に先駆けてIT武装に取り組んだ。曲げ加工データ作成全自動CAM Dr.ABE_Bendを導入して曲げのネットワーク化にいち早く対応したほか、生産管理システムWILL、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを導入して、見積りから受発注、展開・プログラム、生産管理まで一元化したデジタル板金工場を構築。千葉県内の精密板金業界においてデジタル化のパイオニアとして同社を発展させてきた。
2005年には子息の田中智隆社長が入社し、SolidWorksによる3次元設計と展開・プログラムを担当。3次元モデルを活用したエンジニアリング提案を武器に、メーカー・商社の商品企画・開発設計まで深く入り込み、新規得意先の開拓を進めてきた。田中社長は、メーカーの設計者や商社の担当者とともにエンドユーザーとの打ち合わせにも同席するなど、“エンドユーザー”の満足度を最重視するスタイルで提案を行い、揺るぎない信頼を獲得していった。
2015年頃にはソリューションサイト「筐体ファクトリー」を立ち上げ、潜在顧客の課題解決に役立つ技術情報を掲載。Webマーケティングの手法により、年4~5社のペースで新規顧客を開拓している
会社情報
- 会社名
- 有限会社 田中金属
- 代表取締役
- 田中 智隆
- 本社
- 千葉県市川市塩浜3-27-2
- 酒々井工場
- 千葉県印旛郡酒々井町飯積2-7-3
- 電話
- 047-395-6300(本社・酒々井工場)
- 設立
- 1987年
- 従業員数
- 8名
- 主要事業
- 通信機器・医療機器・食品機械などの精密板金加工
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