3兆円の建設機械産業を支える板金サプライヤーの最新動向
道路機械・油圧ショベル向け部品が好調に推移 ― 売上比30~40%
エンジニアリング提案とDXによる正確な管理で信頼獲得
株式会社 ヒラノ
道路機械・油圧ショベルの部品が好調
㈱ヒラノは2003年頃から大手建設機械メーカーのサプライヤーとして取引を継続。油圧ショベル、アスファルトフィニッシャーなどに用いられるエンジンカバー・外観カバー・エンジンブラケット・ステーなどのパーツ加工からサブアッシー、塗装まで対応している。
最近は精度要求がきびしいエンジンまわりで、スライダー溶接ロボットラインなどで溶接し、機械加工で100分台の精度に仕上げるサブモジュール製品の仕事が増えている。
平野利行社長と伊藤昌孝営業部長は、建設機械の受注動向について次のように語っている。
「当社が取引している建設機械メーカーのお客さまは道路機械の市場シェアが高く、当社もこれまではアスファルトフィニッシャーなどの道路機械の仕事が中心でした。しかし、ここへきて油圧ショベル関連の仕事が増えています」。
「道路機械はパネルやカバーなどの製品が多いのですが、油圧ショベルは“超精密”ともいうべき高い精度を求められる製品が多く、その大半がエンジンまわりで使われます。受注しているのは50トン、80トン、120トン、200トンといった大型の油圧ショベル向けの部品です。コロナ禍と半導体などの供給制約で生産調整が長引きましたが、7月からは需要回復への対応と積み重なった注残を消化するための増産が始まっています。その影響で建設機械向けの仕事が増え、売上構成比はこれまでの30%から40%に増えました。ただ、油圧ショベル関係は景気の影響を受けやすいので、この状況がいつまで続くかはわかりません」。
VA/VE提案と“正確さ”で差別化
建設機械メーカーから受注する機種は道路機械、油圧ショベルなど10機種。1カ月の受注アイテム数は約350件で、子部品では3,600~4,000点におよぶ。そのうち90%以上が板金加工に機械加工が加わり、95%以上が溶接・塗装まで行う複雑で難易度の高い製品となっている。
加工材料はSPHCとSS材が大半で、パネル・カバー関係は板厚1.6~2.3㎜、各種ブラケットは4.5~19㎜が多い。リピート率は約90%となっている。
「10%の新規品・設計変更品は、当社が製造性を検証してVA/VE提案を行います。お客さまも3次元設計を行っているので、新機種開発の段階では製品モデルをいただき、それをもとにつくりやすい形状に変更し、バラシ・展開・試作まで行って提案をします」。
「当社の加工設備・金型を考慮した最適な提案を行いますが、最近はBCP(事業継続計画)への対応で、特定のサプライヤーしかつくれない提案図面は不可とされ、当社以外のサプライヤーでも加工できる汎用性のある提案が求められるようになってきました。バーリングなどの成形金型を使った提案を行う場合には気をつけるようにしています」。
「ただ、そうなると価格競争に陥りやすくなります。当社としてはエンジニアリング提案などの非価格競争によって評価していただきたいのですが、次第に難しくなってきました」。
「他社に転注された仕事が当社に戻ってくるケースもかなりあります。抜き・曲げ・溶接後の機械加工で100分台の精度に仕上げ、塗装までできるサプライヤーは限られます。当社は見積りから加工、出荷まで、すべてのプロセスで“正確さ”をモットーにしています。今はそれが差別化ポイントになっていると思います」(平野社長)。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 ヒラノ
- 代表取締役社長
- 平野 利行
- 所在地
- 千葉県旭市蛇園5601-1
- 電話
- 0479-55-4626
- 設立
- 1973年
- 従業員数
- 51名
- 主要事業
- 建設機械・航空関連・消防車・建築・医療機器・厨房機器などの板金・製缶・塗装
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