ツートップ体制で経営改革を推進 ― 不況期でも仕事が増える事業モデル
外国人材が90%のダイバーシティ工場、新工場開設と自動化で飛躍
株式会社 鶴町製作所
新工場開設で飛躍 ― 塗装・組立にも対応
茨城県笠間市の㈱鶴町製作所は、2021年1月に新工場の本格稼働を開始して以降、飛躍的な成長を遂げている。
「茨城中央工業団地笠間地区」に開設した新工場は、常磐自動車道・友部スマートICから1分以内の好立地で、敷地面積は1万㎡。それまで曲げ工程と溶接工程を担当していた第1工場と、ブランク工程を担当していた第2工場の機能を1カ所に統合した。以前は手狭なうえ、車で10分ほどの距離にある2工場間を1日10回ちかく横持ち輸送していたが、工場を集約したことで生産能力・生産性とも大幅に改善した。
新工場への移転後は、2022年12月にファイバーレーザマシンREGIUS-3015AJ(6kW、フォーク式パレットチェンジャー仕様)を増設した。2023年には、曲げ工程に自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATCを増設し、自動化・スキルレス化を推進。溶接工程にはハンディファイバーレーザ溶接機FLW-1500MTを導入し、溶接品質の向上をはかるとともに、増加が見込まれるアルミ製品への対応力を高めた。
2023年9月には敷地内に塗装工場を増設し、塗装・組立までの一貫生産体制を構築した。新設した粉体塗装ラインは、水切り乾燥と焼付乾燥の工程に電気(中波長赤外線ヒーター)とガス(バーナー)のハイブリッド乾燥炉を採用。中波長赤外線ヒーターにより被塗物の効率的な温度上昇が可能になることから、ガス燃焼方式を全面採用した場合と比べ、炉長・炉体積を少なくでき、省エネ性・塗装品質も優れている。
前期(2023年4月期)の売上高は、工場移転前の約2倍になった。今期(2024年4月期)も前年比20~30%増となる見込みだ。来期(2025年4月期)前半は好調だった建設機械向けが生産調整の局面に入るものの、塗装・組立までのワンストップ対応と新規得意先との取引が本格化し、通期では同10%以上の増収を計画している。
リーマンショックを機に経営改革
鶴町修社長が1998年に入社した当時、同社のメンバーは創業者である鶴町好文氏と鶴町社長の2名だけで、空調機器の中小メーカーからの売上が95%を占めていた。それから10年の間にレーザマシンを導入し、建設機械のカバー類も手がけるようになって、業績は順調に伸びていた。
ところが、2008年のリーマンショックにより仕事量は激減。売上90%減が1カ月、70%減が3カ月あり、4カ月分を合わせても従来の1カ月分に届かなかった。その後はやや上向いたもののピーク時の仕事量には遠くおよばず、低迷期が続いた。
窮地に追い込まれた鶴町社長から話を聞き、専業主婦だった夫人の鶴町梨沙常務が2010年に入社。それ以降は鶴町社長と鶴町常務のツートップ体制で、抜本的な経営改革に取り組んでいった。
改革の内容は、大別すると「町工場から会社組織への脱皮」と「多重下請け企業からの脱却」の2つ。前者は鶴町常務が、後者は鶴町社長が主に担当した。
鶴町常務は独身時代、音響機器メーカーの管理系業務や建築関連企業のCAD設計業務などに従事。男性中心の職場でも臆することなく、きめ細かな配慮と独創的な提案によって存在感を発揮してきた。
鶴町常務は管理業務を一手に担い、組織改革に乗り出した。指示系統を明確にするとともに、独自仕様にカスタマイズした生産管理システムWILLを導入し、受注・出荷、見積り、図面、進捗・実績の一元管理を実現した。また、エコアクション21(2010年)、ISO9001(2018年)、ISO14001(2019年)などの認証も取得し、大手企業との直接取引で求められる管理体制を整えた。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 鶴町製作所
- 代表取締役
- 鶴町 修
- 所在地
- 茨城県笠間市長兎路1320-9
茨城中央工業団地笠間地区内
- 電話
- 0296-71-7271
- 設立
- 1974年
- 従業員数
- 39名(技能実習生・特定技能を含む)
- 主要事業
- 建設機械・印刷機械・昇降機・空調フィルタ・測定器・産業機械などの板金加工・溶接・塗装・組立
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