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「環境経営」「生成AI」が2025年のキーワードに

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年頭に行われた各工業会の賀詞交歓会では、「カーボンニュートラルへの対応」や「人工知能(AI)関係の研究開発を加速したい」ということを目標に掲げる挨拶が多く聞かれた。

欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は、2024年の世界の平均気温が産業革命前に比べて1.6℃高くなり、2年連続で史上最も暑い年だったと発表した。気候変動対策の国際的な枠組み「パリ協定」で掲げる気温上昇幅の抑制目標である1.5℃を単年で超えるのは初めてだ。

さらに米西部カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で発生した山火事での想定被害額は、1,500億ドル(約23.3兆、1ドル155円換算)以上とされており、米国の山火事被害として最大規模になるという。火災の要因のひとつとして、地球温暖化による干ばつでカリフォルニア全体が乾燥していたことなどが挙げられており、気候変動対策としても、カーボンニュートラルを加速しないと、地球温暖化による自然災害が頻発する可能性が指摘されている。

2028年度には日本でも二酸化炭素の排出量に価格を付け、排出した二酸化炭素の量に応じて課税される「炭素税」の導入が開始され、2030年(予定)から本格的に実施されるため、化石燃料を多く使う産業にとっては、大きな変革期になると言われている。大企業は導入される前から、自主的な排出削減に取り組むことが必要となっている。そのため対象となる企業は、自社内で排出される二酸化炭素に加えて、協力工場を含めたサプライチェーン全体での排出量削減に取り組む必要がある。

そこで気になるのが「カーボンニュートラル」へのサプライヤーの対応だ。取材先の経営者の方々と話をしていても、一昨年に比べると脱炭素に対する取り組みはトーンダウンし、環境経営に二の足を踏んでいる気がする。2028年度からは「炭素税」の導入が開始されるので、発注元である大企業はサプライヤーにも排出削減に取り組むことを要請するとともに、企業が「パリ協定」に準じた温室効果ガスの排出削減目標を設定し、脱炭素に取り組んでいることを示す「SBT認証」(中小企業版)の取得を指導し始めており、削減努力をしない企業との取引を停止する可能性も指摘されている。

ところが肝心のサプライヤーへの要請・指導が減少傾向という。小誌1月号に掲載したアンケート調査では、「要請される可能性がある」とする回答が前年より△12.9ポイント減の16.9%と大幅に減少。「すでに要請されている」「要請の予告を受けている」「要請される可能性が高い」「要請される可能性がある」の合計は72.1%で、引き続き高水準ではあるものの、前回から△10.0ポイントの大幅減となった。

この結果を見る限り、サプライヤーの脱炭素に対する取り組みが心配だ。2025年は「環境経営」への取り組みがポイントになる。

また、生成AIの登場で、人間が持っている創造性の一部をある程度模倣することが可能になる。そこで生成AIと自社データを組み合わせ、熟練社員に依存していた仕事やサポートを熟練社員に頼らなくてもできるようになり、熟練社員の退職にともなう技能継承・人手不足対策にも役立つと言われ、従来の常識を覆す可能性を秘めるようになってきた。生成AIを適切に活用することで、社会の飛躍的な進歩を実現できる可能性がある。そのため、企業でも業務改革や製品開発段階で、生成AIを活用する動きが加速している。

2025年は「環境経営への取り組み」と「生成AIの活用」がキーワードになりそうだ。

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