進化を続ける「デジタル板金工場」の現在地
新工場稼働 ― 自動化設備・RPA・AI・ロボットをフル活用
株式会社 フジムラ製作所 代表取締役社長 藤村 智広 氏
藤村智広氏
㈱フジムラ製作所は2023年4月に第三工場と第四工場の稼働を開始した。同社の主要3事業 ― 「多品種少量」「量産」「Web受発注サービス」のうち、主に「量産」「Web受発注サービス」の仕事に対応する。生産内容によって各工場の役割を明確にするとともに、AI・ロボットなどを活用した最先端のデジタル技術をふんだんに採り入れた。
同社は2001年に藤村智広社長が入社して以来、「デジタル板金工場」をテーマに掲げ、見積りから製造、納品、フォローまでのすべてのプロセスでデジタル化を推進してきた。加工プロセスの自動化・合理化だけでなく、“見える化”による情報共有、課題抽出、改善・改革の手段としてデジタル技術を活用し、多くの成果を挙げてきた。
デジタル化の取り組みは同社の成長を加速させ、この5年間で従業員数・売上高とも2倍以上になった。
こうした同社の取り組みが認められ、「彩の国工場」(埼玉県)、「川口市技能振興推進モデル事業所」、「川口i-wazaブランド」に認定されるなど、企業ブランドの向上にもつながっている。
常に新しい挑戦を続ける藤村智広社長に同社のデジタル化の取り組みと考え方について、話を聞いた。
DXに対応した精密板金工場を2棟竣工
2023年4月に稼働開始した㈱フジムラ製作所の「第四デジタル板金工場」。最先端のデジタル技術をふんだんに採り入れた
― 第三工場と第四工場が稼働を開始し、製造拠点が5カ所になりました。各工場の役割について教えてください。
藤村智広社長(以下、姓のみ) これまで当社がメインとしてきた「多品種少量」の仕事を本社・第一・第二工場に、「量産」「Web受発注サービス」の仕事を第三・第四工場に集約しました。工場再編の狙いは、「多品種少量」と、「量産」「Web受発注サービス」の工場を分けることで作業を効率化すること、今後ますます受注量の増加が予想される「Web受発注サービス」への対応力強化です。
「本社工場」では多品種少量品の板金加工、「第一製缶組立工場」では多品種少量の製缶品の溶接と板金アッシー品の組立、「第二溶接組立工場」では多品種少量品の溶接を行います。
第三・第四工場は、本社工場から車で15分の場所にあり、当社が掲げる「デジタル板金」をさらに進化させ、DX時代に対応した精密板金工場となっています。「第三溶接組立工場」では量産品・Web受発注サービスから受注した製品の溶接、「第四デジタル板金工場」では量産品・Web受発注サービスから受注した製品の板金加工を行います。
約700社と取引 ― コロナ禍でも増収
― 「多品種少量」「量産」「Web受発注サービス」の3事業を展開されています。それぞれの業況はいかがですか。
藤村 現在の得意先は約700社で、売上構成比は多品種少量品が約60%、Web受発注サービスが約25%、ユニット・アセンブリー製品も含めた量産品が12~13%となっています。業種は事務機器、イベント関係、医療機器関係、食品機器関係、自動車設備関係、半導体製造装置関係などさまざまです。このうちユニット・アセンブリー製品の組立まで行っているのは3~4社で、1製品あたりの構成部品が60点ほどの製品もあります。
コロナ禍の期間は、イベント関係の仕事が完全にストップし、アセンブリーまで手がけている事務機器も減産しました。そのかわり半導体製造装置や医療機器、食品機械の受注が増加。当社が3次元設計と構造解析にも対応できることで通信機器関係のお客さまから新規の受注をいただけたこともあり、コロナ禍でも増収基調でした。
左:CADルーム。ほとんどのメンバーがSheetWorks、SolidWorksによる3次元設計を行う/右:現場のスタッフの多くがモバイル端末を持ち、進捗情報の入力などに使用する
デジタル化による業務改善を続ける
― 「デジタル板金」をコンセプトに掲げ、さまざまな工程のデジタル化に取り組んでこられました。
藤村 これまでさまざまな切り口から「ものづくりの“見える化”」を推進してきました。見積りから製造、納品、フォローまでの全プロセスでデジタル化を徹底し、生産プロセスのスピードアップだけでなく、ノウハウや知識・経験の社内共有などを進めてきました。
最初に取り組んだのは見積りの見える化でした。2006年に生産管理システムWILLと見積りモジュール+LDを導入し、加工費・材料費・ST(標準作業時間)などのコストテーブルを整備して、社内標準単価を確立しました。2010年からは3次元ソリッド板金CAD SheetWorksにより、アセンブリーまで考えた設計提案から溶接組立、電装組込まで一貫して対応できる生産体制を構築。より付加価値の高い「ユニット・アセンブリー製品」にも対応できるようになりました。
生産拠点はすべてVPNでつながり、今ではWILLの受注台帳やiP進捗キットの進捗情報といった「生産情報」、図面や写真といった「画像情報」、3次元モデル・三面図・展開図・加工データといった「技術情報」を一元管理しています。
事務所の壁面に設えられた大型スクリーンには、工場の各所に設置されたネットワークカメラのライブ映像と、工程管理板KAIZENが収集するネットワーク対応マシンの稼働状況をリアルタイムに表示。また現場の各工程では、大型モニターにジョブリストが表示され、その日に対応しなくてはならない仕事をひと目で把握できます。
現場のスタッフにモバイル端末を配布し、進捗情報の入力、図面や製品モデルの確認などに使用しています。トラブルが発生した場合に加工状況などを即座に確認できるよう、トレーサビリティーも確保しています。
今後は、動画マニュアルの作成にも取り組もうとしています。写真だけではわかりにくい機械の立ち上げ方や操作方法、特殊な溶接作業の手順などを動画で保存し、教育や作業支援に役立てていこうと考えています。
加工知識がない人や図面が読めない人でも仕分け作業ができる製品識別機AuDeBu Scan
「加工知識がない人でも簡単に溶接できるシステム」の実現を目指し、開発中の「AI搭載型自動溶接システム」
会社情報
- 会社名
- 株式会社 フジムラ製作所
- 代表取締役社長
- 藤村 智広
- 所在地
- 埼玉県川口市領家3-12-10(本社)
- 電話
- 048-225-7781
- 設立
- 2002年(2000年創業)
- 従業員数
- 120名
- 主要事業
- 各種精密板金加工・NCタレットパンチング加工・レーザ加工・NCベンディング加工・プレス加工・スポット溶接・各種溶接・カシメ加工など
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