Interview

「全ての企業に、テクノロジーの恩恵を。」

東大発のスタートアップ、中小製造業のDXに挑む

匠技研工業 株式会社 代表取締役 前田 将太 氏

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画像:「全ての企業に、テクノロジーの恩恵を。」前田将太氏

東京大学発のスタートアップ、匠技研工業㈱は2022年9月、多品種少量生産を手がける中小製造業を対象とした見積り作業支援ソフト「匠フォース」(特許出願中)をリリースした。クラウドベースのSaaSプロダクトで、月額定額制(サブスクリプション)で提供する。

「匠フォース」は、「案件管理機能」により案件に関連するファイルを一元管理。「見積計算アシスト機能」により、図面やドキュメントを見ながら、各社のルールに基づいた見積り計算を素早く行える。また、「AI類似図面検索/リピート案件判定機能」により、独自開発の画像解析アルゴリズムで図面を認識し、類似図面やリピート案件を判定する。

マニュアル不要のシンプルな操作性と、各社のポリシーに基づいて原価の項目やパラメーターをカスタマイズできる柔軟性も特徴だ。データを活用した科学的なアプローチによって、誰でも迅速に適切な値決めができるようにし、「脱・属人化」「脱・どんぶり勘定」の実現と持続的な黒字経営を支援する。

「匠フォース」のリリースと併せ、ベンチャーキャピタルや東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)などを引受先として、総額6,000万円の第三者割当増資を発表。開発力の強化や新規メンバーの採用などに活用していく方針だ。

東大・法学部出身で現在26歳の前田将太社長は「全ての企業に、テクノロジーの恩恵を。」をミッションに掲げ、「予算が少なくIT技術者が不足している中小企業でもDXを進められるような社会づくりを目指したい」と語る。

「匠フォース」開発に至る経緯と今後の展望について、前田社長に話を聞いた。

東大発のスタートアップ

― 前田社長は異色の経歴をお持ちですが、「匠フォース」の開発に至る経緯を教えてください。

前田 父と祖父が弁護士で、私自身も幼少期から弁護士を志してきました。2015年に東京大学の法学部に入学して2019年に卒業するまでは、体育会系のラクロス部に所属していました。学部を卒業した後は、司法試験を受けるため法科大学院(ロースクール)へ進学しました。1年次のときにアントレプレナーシップ(起業家精神)教育の講座を受講し、スタートアップという選択肢を考えるようになりました。

一緒に受講していたラクロス部の同期のメンバーと事業をスタートし、大学のビジネスプランコンテストで優秀賞をいただいて、自分たちの手で世の中の課題解決に資する事業に取り組みたいという思いを強くしていきました。

2019年に事業をスタートしてから1年半の間は、小学生向けにプログラミング教室を開いたり、コロナ禍で困っている飲食店向けにモバイルオーダーやキャッシュレス決済のサービスを立ち上げたり、手当たり次第にいろいろな事業を手がけました。しかしその過程で、学生あがりの自分たちの視野の狭さを痛感しました。そのとき手がけていた事業が、当初志していたような、これからの日本を支える事業に育っていくとは思えず、思い切ってすべての事業から撤退しました。

その次のフェーズとして、運送・小売り・卸売り・不動産・保険などさまざまな業種の企業を訪問して、世の中の企業がどういう課題を抱えているか、見つめ直しました。

中小製造業向けの事業領域に踏み出したのは2021年4月です。中小製造業の方々とご縁があり、高い技術力を持ちながら深刻な経営課題を抱えている実情を目の当たりにして、製造業界の課題解決に挑戦することを決意しました。

「全ての企業に、テクノロジーの恩恵を。」「匠フォース」が解決する課題

「全ての企業に、テクノロジーの恩恵を。」

― 中小製造業を対象としたビジネスを展開するにあたっては、どのようなお考えがあったのでしょうか。

当社は「全ての企業に、テクノロジーの恩恵を。」をビジョンに掲げています。「全ての企業」には大企業も含まれますが、当社がフォーカスしているのは発注側の大企業よりも、受注側の中小製造業です。中小製造業は高い技術力を持ち、日本の雇用を支えているにもかかわらず、テクノロジーの恩恵を十分に受けられていない。それが日本の製造業全体で大きな機会損失を生み出していると感じます。

また、われわれは製造業でもフェアトレードが実現されるべきと考えています。必要以上に儲けたいということではなく、発注者も受注者もお互いにとってフェアで、適正で、持続可能な取引ができる構造にしていくべきという意味です。

これまでの日本のものづくりは市場が拡大することを前提とした仕組みになっていて、そのために毎年の原価低減も正当化されてきました。しかし、今の時代はそうではありません。物価が上がる理由はあっても下がる理由はなく、労働力人口は減り、人口の減少とともに市場も縮小していきます。中小製造業も付加価値に見合った対価をいただけないと、業界自体がサステナブルでないことになります。

  • 画像:「全ての企業に、テクノロジーの恩恵を。」「匠フォース」の案件一覧画面
  • 画像:「全ての企業に、テクノロジーの恩恵を。」見積り明細入力画面。各社のルールに基づいた見積り計算ができる

全文掲載PDFはこちら全文掲載PDFはこちら

会社情報

会社名
匠技研工業 株式会社
(旧社名:株式会社LeadX)
代表取締役
前田 将太
所在地
東京都文京区本郷4-1-7-402
電話
070-4295-5360
設立
2020年
主要事業
中小製造業特化ソフトウエア(SaaS)事業
URL
https://takumi-giken.co.jp/

つづきは本誌2023年2月号でご購読下さい。

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