「JIMTOF2024」の印象と、気になる脱炭素
11月5日から10日までの6日間、東京ビッグサイトを会場に、「技術のタスキで未来へつなぐ」をテーマにした「第32回日本国際工作機械見本市」(JIMTOF2024)が開催された。19カ国・地域から1,262社の出展者が5,743小間(11万8,540㎡)に最新の工作機械、各種金属加工機械を出展した。会期中の来場者数は12万9,018人と前回を13%上まわった。
久しぶりの展示会への参加だったが、熱心な来場者、対応する出展者の姿に、堅調・堅実な日本の製造業の「今」を見た感じがした。
会場では、出展者を除くと欧米からの来場者は目立たなかったが、中国・台湾・韓国から視察に訪れる来場者が多くみられた。特に台湾からの来場者が目立っていた印象だった。
今回は鍛圧・板金機械関連の出展が少なく、結果として板金業界からの来場者は意外に少ないという印象だった。会場でお会いする業界関係者の数も少なく感じられた。
お会いした何人かのお客さまから「板金機械関連の出展が少なく、残念だった」という声を耳にした。会場でお会いしたお客さまに印象を伺うと「板金機械・工作機械を含めてもこれはというめぼしい機械は見られなかった」と一様に話されていた。
板金機械に関しては出展メーカー、レーザマシンの出展も少なかった。
私の印象では、人手不足を背景に省人化に対応した協働ロボットが、どのブースにも出展され目についた。溶接治具を定盤のテーブルに取り付ける協働ロボットの実演には、あらためて人手不足の深刻さを感じた。
工作機械では、オークマがAIセンサーを取り付けたマシニングセンタを出展。各駆動軸の挙動をセンサーでリアルタイムに感知、AIがそのデータから予知制御する実演をしており、多く来場者が足を止めていた。
今では設備機械のオンラインサポートが普及し、異常が起きる前に事前予告で部品交換の提案が行われるようになってきたが、インプロセスで機械の状態監視をAIが行うようになると、さらに便利になる。
来年開催される「MF-TOKYO」では、レーザ加工機などの制御や監視にAIがかなり使われるようになると推測されているので楽しみだ。
その一方でお客さまからは、ここに来て得意先からのコストダウン要請がきびしくなっていると伺った。鋼材価格や人件費の高騰分などの価格転嫁が一時ほどにはすんなり認めてもらえなくなっているという。
また、気になったのがカーボンニュートラルに対応した、脱炭素への取り組みに関して、メーカーの要請がトーンダウンしているという話を伺ったことだ。
欧州連合(EU)では、2026年から炭素国境調整メカニズム(CBAM)によりCO2排出量に応じて課徴金が徴収されるほか、2027年からは製品のライフサイクルにおけるCO2排出量(カーボンフットプリント)や原材料、リサイクル性などの情報開示を要求するデジタル製品パスポート(DPP)の義務化も始まる。当初の対象製品・分野は限定的だが、いずれ対象は広がるとみられる。それだけにEU域外で製造した製品をEUへ輸出する企業はサプライヤーへの指導を強化するはずだが、現実はそうではないようだ。見本市会場でも脱炭素を前面に打ち出し訴求するメーカーは少なかった。これも気にかかる課題だった。