Interview

変化に対応し続ける100年企業

“見える化”と量産への対応力強化を推進

株式会社 北村鉄工所 代表取締役 北村 征志 氏

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画像:変化に対応し続ける100年企業北村 征志 氏

㈱北村鉄工所は2016年に100年企業の仲間入りを果たした老舗企業。その足跡は、時代の変遷に対応して常に“変化”を遂げてきた中小製造業の象徴的な姿といえる。

1916年(大正5年)に鍛冶屋として創業し、その後は高度な溶接技術を生かして、京都の老舗産業機械メーカーの認定工場として事業を拡大。1957年に法人化して以降は、少しずつ他分野の仕事も開拓していった。

1997年に主要得意先メーカーが工場を移転したことがきっかけとなり、同社のコア技術である溶接技術と、部品製作・外注手配・市販品手配・組立配線までワンストップで対応できる強みを生かし、半導体・FPD製造装置関連、印刷機器、電機・電子部品関連などの分野へと進出した。

ITバブル崩壊後の2003年頃には、安定業種とされる医療機器、製薬機械、防災関連、食品機械の得意先を集中的に新規開拓し、リスク分散をはかっていった。

2010年代に入ってからは自社ブランドの食品機械を本格展開。食品工場向け「包装リーク検出装置」のほか、連続炊飯器・洗米機・ほぐし機・盛り付け機といった「米飯加工機械」を展開している。

そして2018年からは生産体制を抜本的に見直し、一品一様の多品種少量生産だけでなく、量産品への対応力を高めている。

時代の変化に対応し続ける同社の取り組みについて、北村征志社長に話を聞いた。

100年企業 ― コロナ禍の影響は限定的

― 2016年に100年企業の仲間入りをされました。

北村征志社長(以下、姓のみ) 一口に100年といっても、その間の変化はとてつもなく大きいものでした。コロナ禍に見舞われ、「グレート・リセット」という言葉が聞かれるようになった今日、大きな変化の節目に来ていると感じます。

私が4代目社長に就任したのは2012年、42歳のときでした。タイミングとしては、リーマンショックや東日本大震災の影響で、非常に不安定な市場環境でした。私は就任にあたり、人間が生きていくために欠かせない「食品」「医療」「防災」を事業の3本柱として育てていくことを方針として定めました。中でも「食品」は、すでに自社ブランド製品がありましたから、他力本願ではなく自分たちの努力で開拓・発展させていける分野として特に力を注いできました。

― 現在手がけている業種を教えてください。

北村 消防車向け外装ユニット、工業用熱処理装置や真空機器などの産業機械、食品機械、介護用ベッドや入浴補助設備といった介護機器、製薬機械、印刷機械・FPD製造装置関連、搬送機器などの部品加工・ユニット製作を手がけています。「包装リーク検出装置」や「米飯加工機械」といった自社ブランド製品も展開しています。

真空気密溶接で培った溶接技術をコア技術とし、精密板金・製缶・切削による部品加工のほか、各種装置の設計・システム開発・組立・配線・据付までワンストップで対応します。

売上構成は、工業用熱処理装置が25~30%、消防車向け外装ユニットが25%前後、自社ブランド製品が15%前後となっています。

― コロナ禍の影響はいかがですか。

北村 幅広い業種を手がけているおかげで、落ち込みは少ない方だと思います。業種やお客さまによってバラツキがありますが、トータルでは10%減程度でおさまっています。

やはり産業機械関係の仕事は落ち込んでいます。介護用ベッドや入浴補助設備といった介護機器も落ち込み気味です。消防車向け外装ユニットの仕事は、ほとんど影響を受けていません。自社ブランドの食品機械はかえって好調です。

  • 画像:変化に対応し続ける100年企業ファイバーレーザ複合マシンLC-2515C1AJ。同社にとって初めての複合マシン、棚付き自動化設備、5´×10´対応設備で、量産への対応力を強化
  • 画像:変化に対応し続ける100年企業自動金型交換中のベンディングマシンHRB-1003ATC

量産への対応力を強化 ― LC-C1AJ導入

― 2018年にファイバーレーザ複合マシンLC-2515C1AJ+ASR-3015Nを導入されました。御社にとって初めての複合マシン、棚付きの自動化設備、5´×10´対応設備です。導入の意図を聞かせてください。

北村 従来は、真空気密溶接で培った高度なTIG溶接技術を強みに、他社では対応できないような一品一様の製品を中心に手がけ、量産の仕事とは距離を置いていました。

しかし、YAGレーザ溶接やファイバーレーザ溶接の台頭により風向きが変わり、溶接技術では特色を出しにくくなってきました。レーザ溶接は加工スピードが速く、熟練していない作業者でも高品位な溶接ができます。普及すれば当社の優位性は薄れ、競争力が低下します。

このタイミングで量産の領域にも打って出る必要があると考えました。ただ、量産のコスト・納期に対応するためには、多品種少量生産に特化していた従来の生産体制を抜本的に見直さなければなりません。かといって完全に量産にシフトするのは危険ですから、多品種少量生産と量産のどちらにも対応できるようにする必要がありました。

そこで、ワンクランプでパンチ・レーザ・成形・タップに対応でき、手差しにも対応できるLC-C1AJを棚付きで導入することを決めました。

― 量産の仕事を獲得できる見込みはあったのでしょうか。

北村 工業用熱処理装置のお客さまから、お話はいただいていました。以前から当社の技術力を高くご評価いただいていたのですが、数が多く、コスト・納期に対応できないため、受注できずにいました。そのお客さまの製品サイズに対応するため、LC-C1AJは5´×10´仕様を選択しました。

  • 画像:変化に対応し続ける100年企業同社のコア技術であるTIG溶接技術
  • 画像:変化に対応し続ける100年企業2010年代に入ってから本格展開している自社ブランドの食品工場向け「包装リーク検出装置」

会社情報

会社名
株式会社 北村鉄工所
代表取締役
北村 征志
所在地
京都府京都市南区久世中久世町4-33
電話
075-931-3121
設立
1957年(1916年創業)
従業員数
45名
事業内容
一般産業機械、各種自動化・省力化機器、検査装置の設計・製作/真空関連機器・装置および部品の設計・製作/精密板金加工部品、切削加工部品の製作/装置・ユニットの組立、調整、搬入・据付作業全般/業務用炊飯システム・各種包装検査装置などの製造・販売
URL
http://www.kitamura-co.com/

つづきは本誌2021年1月号でご購読下さい。

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