特集

特色を出す東海地区の板金加工企業

技術開発力とスピード対応で工業化住宅製品のシェアを拡大

板金内製化で「スピード対応」を強化 ― 自社製品の加工にも活用

宇都宮工業 株式会社

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画像:技術開発力とスピード対応で工業化住宅製品のシェアを拡大2022年に増設したファイバーレーザ複合マシンEML-2512AJ(左下)と、2023年にEG-6013とEG-4010を増設した曲げ工程(右上)。同社の強みである「スピード対応」を強化し、自社オリジナル商品「ミュート」の開発・生産にも活用する

プレスと板金の両輪体制を構築

宇都宮工業㈱は1960年の創業以来、金属プレス加工・板金加工を中心とした工業化住宅製品や自動車部品の製造に取り組んでいる。開発設計から試作、量産までワンストップで対応する自社内一貫生産体制と、高度な技術開発力に裏づけられた提案力、圧倒的なスピード対応により、顧客の信頼を勝ち取ってきた。

2015年には豊川市大木地区工業用地に本社事務所・工場(敷地面積2万5,190㎡)を開設した。屋根の全面に太陽光発電パネルを設置し、出力容量は642kW。また、自社でも販売している高性能の遮熱シートを屋根部材として採用し、真夏の炎天下でも空調を使わずに常時28度以下をキープする環境配慮型工場となっている。

本社工場の開設とともに、パンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT、ベンディングマシンHD-8025NTを導入し、板金加工に参入した。それ以降は毎年のように板金加工設備を増設し、プレス加工と板金加工の両輪体制を充実させている。現在の工程別比率はプレス加工80%に対して、板金加工20%で、板金加工の割合が徐々に高まっている。

現在は、2024年7月の本格稼働を目指して、本社工場の隣地に新工場を建設中だ。屋根には自家消費型の太陽光発電システムを導入し、本社工場と同様、遮熱シートを施工する。竣工後は金型加工設備を移設し、同社最大能力となる400トンプレスを導入して加工能力の増強をはかる。

画像:技術開発力とスピード対応で工業化住宅製品のシェアを拡大左:2015年に開設した本社事務所・工場。太陽光発電パネルの出力容量は642kW。遮熱シートを施工し、真夏でも空調いらず/右:2023年12月に導入したばかりのベンディングマシンEG-4010(2台目)

自動車部品から工業化住宅製品へ事業転換

同社は創業から約30年の間、自動車部品の金属プレス加工を手がけてきた。

転機が訪れたのは1990年代初頭で、異業種である工業化住宅製品の分野に参入した。自動車メーカーが海外生産移転を進める中、内需型産業をコア事業に据えるため、大手住宅メーカーとの取引量を拡大し、住宅業界へのシフトを果たした。それ以前は自動車部品が売上全体の90%以上を占めていたが、今ではほぼ逆転している。

事業転換のカギとなったのが、自動車業界との継続取引を通じて培ってきたものづくりのノウハウと技術開発力だった。土井昌司社長と開発責任者の2名が住宅の建設現場で大工職人からヒアリングし、それをもとに住宅部品の試作品をつくって大手住宅メーカーへ技術提案を行った。提案内容もさることながら、他社だと1~1.5カ月かかる提案を1週間で行ったことが評価され、本格取引へとつながった。

同社はその後も、持ち前の技術力を生かして同社と顧客がWin-Winになるような提案営業を展開していった。それまで手作業で一つひとつ加工していた製品を、機械化により誰でもワンタッチでできるようにするといった工法提案や、材料変更の提案も行った。営業部の主要メンバーはCADの操作スキルを備え、顧客の開発段階から関与している。

土井社長は「お客さまの設計担当者は、図面を描いていても部品の具体的なイメージまではつかめていないことが多い。たとえ完成度が7割でも現物を手に取ることができれば、『次はここをこうしよう』と話がつながっていきます。その積み重ねによって、『開発型企業の宇都宮工業に頼めば開発スピードが加速する』というご評価がお客さまの間で浸透していきました」と振り返る。

現在、同社が取引する住宅関連の得意先は、大手住宅メーカーや中堅のビルダーを含め25社を超える。その多くが、事業転換の際に本格取引が始まった大手住宅メーカーからの紹介で、顧客満足度はきわめて高い。

足もとの業況は集合住宅の需要が堅調で、前期(2023年5月期)の売上高は前年比20%増、今期(2024年5月期)は12月時点で同10%増と好調に推移している。

  • 画像:技術開発力とスピード対応で工業化住宅製品のシェアを拡大集合住宅の生活音を減衰する金具「ミュート」(特許取得済み)。同社のオリジナル製品で、住宅メーカーが採用を進めている
  • 画像:技術開発力とスピード対応で工業化住宅製品のシェアを拡大薄型遮熱シート「リフレクティックス」を組み込んだ金属製の屋根部材を製造・販売している

会社情報

会社名
宇都宮工業 株式会社
代表取締役
土井 昌司
本社工場
愛知県豊川市大木町柏木2-1
新城工場
愛知県新城市八名井字赤松1-7
電話
0533-93-2626
設立
1969年(1960年創業)
従業員数
146名
主要製品
工業化住宅用金物部品、自動ドア金物部品、自動車部品内外装品、プレス金型・治具
URL
https://www.u-m.co.jp/

つづきは本誌2024年2月号でご購読下さい。

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