建材・流通向け厚板・パイプ部品の曲げ加工にサーボプレスを活用
バラ積み取り出しロボットを搭載した自動パレタイジング装置も増設
井戸口産業 株式会社
「運送」と「製造」の両輪体制
「運送部門」と「製造部門」の両輪体制で事業を展開する井戸口産業㈱は、デリバリーまで含めた迅速かつ高品質な製品供給を強みに顧客の信頼を勝ち取ってきた。
1976年に井戸口秋秀会長が運送事業者として開業して以降は、主力得意先である大手鉄鋼メーカーのグループ会社から、道路向け大型標識柱や配管部品などの輸送を請け負っていた。
製造業に参入したのは、創業から約20年後の1998年。同社が輸送していた大型標識柱・配管部品の加工企業が撤退することになり、主力得意先から「やってみないか」と声がかかったのがきっかけだった。
2000年からはスーパーマーケットやドラッグストアなどで使用する什器・備品の製作から組立・完成までの一貫生産に対応し、2006年からは建設現場で地盤を強化するために用いる「鋼管杭」(パイル)の製作も手がけ始めた。いずれも主力得意先またはその関連会社からの推薦や紹介だった。
これらの製品は、パイプの加工を含むことが多いというゆるやかな共通点はあるものの、サイズ・重量・ロットサイズ・工程などの生産要件が大きく異なる。にもかかわらず同社はそれらを積極的に取り込み、毎年のように工場建屋を含む設備投資を行って生産体制を充実させていった。
大型標識柱や鋼管杭の製作に用いる走行式溶接ロボットシステム、鋼管杭の製作に用いる自動開先・キー材溶接ロボットシステムといった専用ラインをいち早く導入する一方で、作業者とスペースが必要になるアセンブリーにも対応してきた。
2022年1月には、初の本格的なプレスマシンとしてサーボプレスSDE-3030iⅢを導入し、流通業界向け什器に用いる長角パイプの曲げ加工や、鋼管杭に用いる板厚22~55㎜の厚板部品の曲げ加工などに活用している。2023年にはバラ積み取り出しロボットを搭載したパレタイジング装置を増設し、スケッチ材の加工からパレタイジングまでを自動化した。
2023年末には、土木建設現場の溶接工不足により需要が高まっている「機械式継手」を鋼管杭の両端に接合する用途で、8mの走行台車付き高出力アーク溶接ロボットを導入した。これにより加工時間は従来の1/5に短縮できる見込みだ。
2019年に2代目社長に就任した井戸口肇社長は「設備やノウハウがなくても、やらずして断ることはありません。そしてやるとなったら、お客さまと当社がWin-Winになれるように、新しい技術・設備を模索していきます。最適なものづくりを目指してアイデアを出し提案する、新しいことにも経営トップが先陣を切って挑戦するといった当社の企業姿勢をご評価いただき、お客さまとのパートナーシップ構築につながったのだと思います」と語っている。
主力製品は鋼管杭と流通業界向け什器類
現在の売上構成比は、「運送部門」が約20%、「製造部門」が約80%で、「製造部門」の成長が著しい。
「製造部門」の中では、主に鋼管杭を手がける「建材事業部」が20~30%、スーパーマーケット・ドラッグストアなどの流通業界向け什器・備品を手がける「流通事業部」が70~80%を占めている。
「利益率まで考慮した事業ウエイトで見れば、『建材』と『流通』はほぼイーブン」と井戸口社長は語っている。
「当社が手がける鋼管杭は、ビルであれば9階建てくらいまでの中小物件向けが中心。需要は堅調で、当社の加工重量はコロナ前と比べて7%程度、増加しています。また、現場の溶接工が不足していることから、溶接レスで継ぎ杭ができる機械式継手を備えた鋼管杭も注目されています」。
「流通業界向けの什器・備品類は、青果類の陳列棚や各種スタンド、カゴ置き台、消毒液スタンドなどさまざまで、アイテム数は1万を超えます。コロナ以後もスーパーマーケットやドラッグストアの業績は堅調のようですが、新規出店は減少傾向で、その分、従来店舗の改装・リニューアルに力を入れるケースが増えています。当社が取り扱う製品の需要は横ばいから漸減傾向ですが、2020年から新たに手がけ始めた『6輪台車』は堅調です」(井戸口社長)。
会社情報
- 会社名
- 井戸口産業 株式会社
- 代表取締役
- 井戸口 肇
- 所在地
- 群馬県太田市新田木崎町1404-10
- 電話
- 0276-52-8111
- 設立
- 1989年(1976年創業)
- 従業員数
- 60名
- 主要事業
- 運送部門:一般貨物自動車運送事業、自動車運送取扱事業/製造部門:住宅基礎支持杭・鋼管杭の製作、流通関連製品の製作・組立、大型標識柱の製作など
つづきは本誌2024年1月号でご購読下さい。