異業種から転職して、イノベーションを興す
多様なモノづくりに設備力で対応する新工場
金剛 株式会社 代表取締役 田中 稔彦 氏
金剛㈱は業界トップクラスのシェアを誇る「丸ハンドル式移動棚」のほか、自動書庫・音声ガイドシステムといった、IT化対応の製品・ソフトや免震技術の開発にいち早く取り組み、業界をリードする製品の開発・製造・販売を一貫して行っている。
阪神・淡路大震災や東日本大震災、熊本地震でも同社の免震技術は、納入先から高い評価を受けた。
同社は2018年3月、総事業費60億円で新工場を建設。管理本部、営業本部、製造本部をはじめとした本社機能を移転した。最新設備の導入とIoT対応を進めた新工場では生産性向上と新製品開発に力を注ぎ、地震からの創造的復興を果たし、より社会から必要とされる企業へ成長していこうとしている。
田中稔彦社長は佐賀県出身。1960年生まれの59歳。創業者である故・谷脇源資氏の女婿だ。1982年に熊本大学工学部を卒業し、熊本県民テレビで各職を経験後、報道制作局編成企画室長、営業局次長などを経て、2008年に取締役開発本部長兼管理本部長として金剛㈱に入社、2009年10月に社長に就任した。社長就任以来、「安心と先進で社会文化に貢献する」を企業理念に掲げ、事業のテーマを「空間をデザインする」とし、単品の棚から空間のデザインという特徴ある経営を行い、社業を発展させている。
田中社長に「Society 5.0」の社会に対応する同社のビジネスモデルに関して話をうかがった。
「ガバナンス局」の発足
― 社長室の社員の方からいただいた名刺に「ガバナンス局」と印刷されていますが、これはどういったものでしょうか。
田中稔彦社長(以下、姓のみ) これまでは現場サイド中心に管理・営業・製造の3本部制を採用していました。しかし、コンプライアンスや危機管理など、さまざまなリスクが想定される社会の変化に対して、ガバナンスだけはしっかりしておいた方が良いとの考えから、昨年新たにコンピュータネットワークなどを主管する情報室と社長室から構成される「ガバナンス局」をつくりました。
私は、ネットワークとは人間の血管みたいなものだと思っています。血液の巡りが良くないと人間も企業も危なくなります。ですから、システムと連動するガバナンスを会社の中に構築することを最優先にしようと考えました。サイバーセキュリティーをはじめとしたリスク対応、コンプライアンスなど有事の時にガバナンス局が「社長の声」として発信するようにしました。
新工場建設の狙い
― 昨年3月に竣工した新工場建設の目的についてお聞かせください。
田中 現場からいろいろな声が上がってくる中で、「そろそろ新しい工場を」と考えていました。そんなときに熊本地震を経験し、リスク等をシミュレーションした結果、現在の場所が広さでも安全性でも最適だということになりました。
熊本地震からの復興という大きなテーマがあったので、行政にも積極的に関与していただいて、手続きを進めていただきました。建設投資は当初は約50億円でしたが、震災からの復興を支援する国のグループ補助金を申請、採択され10億円強を補助していただくことができ、総事業費は60億円になりました。
会社情報
- 会社名
- 金剛 株式会社
- 代表取締役
- 田中 稔彦
- 工場
- 熊本県上益城郡嘉島町大字上仲間八津1825
- 電話
- 096-355-1111
- 設立
- 1951年
- 従業員数
- 300名
- 主要製品
- 移動棚を中心とした図書館・美術館・博物館・オフィス・学校(大学ほか)・病院・物流センターなどの快適・安全・機能的な空間づくり事業
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