「事業継続力強化」が求められている ― もはやQ,C,Dの時代ではなくなった?
『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫
活力が戻り始めた板金業界
板金業界では好調な設備投資需要を背景に「工作機械」「半導体製造装置」「産業用機器」「電子部品・デバイス」「光学計器」などに関連する業界が活発になっています。また「事業再構築補助金」「サプライチェーン補助金」「ものづくり補助金」「省エネ補助金(エネ合)」など、各種補助金事業に採択される企業も増え、業界全体に活気が戻り、設備投資意欲も旺盛になってきました。
日本鍛圧機械工業会がまとめた「板金系機械」の月次受注額を前年同月(カッコ内)と比較すると、2021年5月は69.8億円(26.5億円)で2.6倍、6月は111.7億円(44.9億円)で2.4倍という数字になっています。
2020年は、6月頃までは1回目の緊急事態宣言の期間と重なり、日本経済は大きく落ち込みました。板金業界でも2020年前半(1-6月)は受注量が半分以下になった企業が多く、設備投資意欲も低調でした。そのため、機械受注も大きく落ち込みましたが、今年の状況と比較すると、「天国と地獄」といえるほどの大きなちがいが表れています。
お客さまの工場を訪問すると、どこも忙しく、先行きを楽観視する声が大きくなっています。
鋼材価格の高騰と入手難
懸念材料があるとすれば、材料価格の高騰と入手難です。その兆候は昨年から表れていましたが、年が明けてから急速に事態が進んでいるようです。最近は店売りの鋼材のみならず、自動車などの大口需要家のひも付き需要も含め、供給全体がタイトになっています。
背景にあるのが海外向けを含めた需給のタイト化です。これまでは高値の輸出向けが優先された結果として国内向けがタイトになっていましたが、今回は海外需要も含めて顕著な需給調整が行われ、高炉メーカーの生産能力が需要レベルに対して限界に達しているためです。
もともと国内の高炉メーカーは、将来的な国内需要減少を見越して、これまでにない規模で生産設備の改革に着手、多くの高炉が運転を停止しています。そこに新型コロナウイルスによる世界的なパンデミックが発生し、需要が減少。その反動による需要増―特に海外市場での需要増と価格高騰によって、輸入材の激減が大きく影響しています。
電炉材も、中国の鋼材需要の急拡大を背景に鉄スクラップの需給が逼迫し、価格の高騰だけでなく、入手そのものが困難となっています。指標品種H2の電炉買値は、年初からの上昇率が東京で17%、大阪で26%に達しています。
鉄スクラップなどの原料価格の高騰は、2~3カ月後には電炉材の価格に転嫁され、鋼材価格がさらに高騰することになります。電炉メーカーに確認すると、鉄スクラップの入手難はさらに続くとみられ、電炉メーカーは減産を余儀なくされています。そうなると、価格高騰と入手難という現状が改善される見通しは立っていないのが現実です。特にニッケル系ステンレスは、世界的にニッケル価格が上昇していることから、先々の価格高騰は避けられません。
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