“強み”を生かして成長する板金モノづくり企業
BCP対応で自家発電装置を設置
道路・鉄道・プラント向け「防音パネル」、プラント向け「防音ボックス」が好調
株式会社 たつみ電機製作所
大型筐体にワンストップで対応
①防音パネル、②防音ボックス(エンクロージャー)、③受配電盤の3本柱で事業を展開する㈱たつみ電機製作所。創業70年超の実績に裏づけられた高い技術力を備えるとともに、高さ4,000㎜を超える大型筐体の設計から板金加工、溶接、塗装前処理、塗装、組立・配線、仕上げ、試験、保管までワンストップで対応できる強みを生かし、得意先から高い信頼を得ている。
2019年9月、その信頼をいっそう強固なものにするため、「製品を安定供給し、産業活動を停滞させないのが企業の責任」(佐野雄彦社長)との考えから、BCP(事業継続計画)の一環として、定格出力230kVAの非常用発電機を導入した。燃料のA重油を最大1,769リットル貯蔵できるタンクとセットで設置し、災害などにより長時間の停電が発生しても、最低3日間は工場の稼働に必要な電力をまかなうことができる。
「考え方は“損保”と一緒」 ― 非常用発電機導入の経緯
「非常用発電機の導入を考えたきっかけは、2018年に発生した大規模停電でした」と佐藤和亘会長は振り返る。
2018年9月末に台風24号が直撃し、浜松市を中心とする東海地方は大規模な停電に見舞われた。想定以上の強風による送配電設備の損傷が各地で相次ぎ、点検・工事にあたる作業員が足りず、完全復旧までには足かけ7日間もかかった。
「静岡県中が大変な騒ぎでした。倒木で送電線が損傷したため当社も2日間ほど停電が続き、その間は生産だけでなく出荷もできませんでした。当社が手がけている大型筐体は、フォークリフトでは搬送できません。トラック・トレーラーへの積み込みは基本的に天井クレーンを使いますが、停電中は役に立ちませんから、完成はしていても出荷ができず、お客さまへの製品供給が完全にストップしてしまいます」。
危機感を募らせた同社は、まず、事務所の稼働が止まらないように、ガソリンを燃料とする定格出力4.0kVAの小型インバーター発電機を2台導入。停電中も設計・プログラムやメールなどのパソコン作業はできるようにした。
さらに続けて、工場用の非常用電源の確保を検討し、冒頭で述べた非常用発電機の導入を決断した。
「投資額は約1,000万円。国・県・市の補助金はなく、全額自前でした。当社のピーク消費電力は、空調を使っている状態で240kW。エアコンを使わなければ230kVAでほぼまかなえます。電力消費が大きいCO2レーザを使わなければ、空調を使っても問題ないでしょう」(佐藤会長)。
非常用発電機を導入した意図について佐藤会長は「考え方としては“損害保険”と一緒です。まず前提として、この発電機が役立つような事態にはなってほしくない。コストは、1,000万円の導入コストだけでなく、定期的なメンテナンスや燃料の入れ替えといったランニングコストがかかりますが、すべて“掛け捨て”です。発電機が利益を生むわけではありません。お客さまの安心感は高まるかもしれませんが、だからといって新たに仕事をいただけるわけでもありません」。
「万が一、停電が長時間続くような事態になったとしても、お客さまにご迷惑をかけずに工場を稼働できる ― それが唯一のメリットです。費用対効果を考えると、こうした代替電源の普及がなかなか進まないのも理解できます。しかし、毎年のように大規模な自然災害が発生している現状を考えると、今後は中小製造業もこうしたリスクマネジメントが必要になっていくのではないかと考えています」(佐藤会長)。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 たつみ電機製作所
- 代表取締役会長
- 佐藤 和亘
- 取締役社長
- 佐野 雄彦
- 住所
- 静岡県富士市木島595-1
- 電話
- 0545-56-2300
- 設立
- 1952年(1946年創業)
- 従業員数
- 71名
- 事業内容
- 高低圧配電盤・制御盤の設計・製作、道路・鉄道および民間向け防音パネルの製作、各種大型防音ボックスの製作、パワーコンディショナーなど屋外収納ボックスの製作
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