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「リスクに備えて持続可能な経営を~BCP(事業継続計画)セミナー」

BCPは「経営環境の変化に対応する取り組み」(後編)

目に見える業務改善やコスト削減につなげて継続運用

H.R.C 堀池 眞臣 氏(BCPアナリスト)

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「災害対応」(線形・静的マネジメント)と「事業継続」(非線形・動的マネジメント)

「BCP-HRCモデル」(企業価値を高めるBCP)のフレームワークは大きく7つ(図1)。このフレームワークに沿って説明していく。最後に「中小企業強靭化法」についても触れる。

「BCP-HRCモデル」のポイントは、繰り返しになるが、“平時”と“有事”を統合して考えることだ。危機管理は、ISO的には“平時”であれば「情報セキュリティマネジメントシステム」(ISMS)や「リスクマネジメント」(RM)、“有事”であれば「事業継続計画」(BCP)がある。“平時”と“有事”は“災害”を間に挟むかたちで単独で存在しており、相互に整合が取れていない。「BCP-HRCモデル」では、それを統合して考える。

“平時”と“有事”は、同じ時間軸で連続している。まず“平時”があり、災害が発生して“有事”になり、BCPによる事業継続が発令される。しかし実際にはもう少し複雑で、事業継続の前に「災害対応」が発生する(図2)

「災害対応」と「事業継続」は似て非なるものだ。BCPの目的は“事業継続”だが、災害対応マニュアルの目的は“人命”だ。“事業継続”では「どの事業を優先させるか」と明確にプライオリティを設けるが、“人命”には優先順位をつけられない。災害が発生した直後の“初動”―最初の72時間は、“人命”ありきで動く。そのため、災害対応マニュアルには避難・安否・連絡・参集・救助といった行動が盛り込まれている。そして“人命”が担保されてはじめて、“事業継続”へとシフトしていく。

「災害対応」は線形で、事業継続フェーズは非線形だ。「災害対応」の目的は“人命”なので、県庁でも大手企業でも中小企業でもやることに大差はない。しかし「事業継続」の内容は、環境や経営戦略のちがいで大きく変わる。「災害対応」と同じ線形的な考え方でBCPをつくってしまうと、必ず想定外が生まれてしまう。

  • 画像:BCPは「経営環境の変化に対応する取り組み」(後編)図1:「BCP-HRCモデル」のフレームワーク
  • 画像:BCPは「経営環境の変化に対応する取り組み」(後編)図2:“有事”の対応は「災害対応」と「事業継続」

継続事業(業務)の範囲の特定

BCPでは、継続事業(業務)の範囲を決めて、それに対して持っているリソースをすべて投入し、早く立ち上げることを目指す。継続事業(業務)の範囲が狭ければ狭いほど、事業継続はやりやすくなる

継続事業の範囲を決めるファクターとして、多くの企業が“重要度”で考える。しかし、すべての企業活動は重要であり、重要度で考えると範囲の絞りこみは困難をきわめる。“重要度”だけでなく、“緊急度”“公共性”といったファクターも含めて考えていくと良い。

継続事業(業務)の範囲を決めることは非常に難しいが、範囲が曖昧になってしまうと事業継続は難しくなる。特に範囲を広く設定してしまうと、その企業のBCPは破綻する。広範囲に設定することは、リソースの冗長化(設備二重化、在庫保有増など)により“平時”の企業経営を圧迫する要因となる。範囲の適切な絞りこみはBCPの成否を左右する非常に重要な要素といえる。

つづきは本誌2020年7月号でご購読下さい。

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