金型技術とサーボプレス順送ラインの融合で差別化を果たす
自動車プレス部品が主力 ― 新工場完成でさらなる成長へ
株式会社 小松工業
敷地2倍以上の新工場を開設・移転
㈱小松工業は自動車プレス部品を中心に、試作から金型設計製作、プレス加工までの一貫生産を特徴とする金属プレス加工企業。サーボプレスを主とする順送加工の技術と金型技術を融合し、ミクロン台の寸法公差や難加工形状の量産、品質維持を実現している。
2022年1月には、念願の新工場を開設・移転した。敷地面積は900坪から2,000坪と2倍以上になり、6棟に分かれていた建屋を1つに集約して、生産能力・生産効率を大幅に改善した。
旧工場は周辺に住宅が増え、騒音問題への対処に悩まされ続けてきたため、新工場では騒音対策にこだわった。
プレス加工現場と金型製作現場は防音壁で囲った。さらに、最大の騒音源であるプレス加工現場は、金型置き場と出荷場で挟み込み、「空気層」とすることで遮音性能を高めている。出荷場は、プレス加工現場へ通じるトビラと出荷ゲートをずらして配置し、ゲート開放時も騒音が減衰するよう配慮した。ゲートが閉まっているときは、敷地内の駐車場、工場建屋のすぐそばに立っていても、内部のプレス加工音はほとんど聞こえない。
屋根は断熱材入りの二重折板とした。防音壁で囲われたエリアは断熱効果も大きく、空調完備で労働環境も改善された。プレス加工現場と金型加工室は出荷場を挟んで切り離し、プレス加工の振動が金型加工室に伝わらないようにした。
また、新工場開設に合わせてすべての加工機にネットワークカメラを設置。ドライブレコーダーのような役割で、作業プロセスを映像で記録することにより、品質管理上のトレーサビリティー確保と社員の安全衛生管理に役立てている。
新工場への移転により設備増強の余地が生まれ、作業動線も最適化できた。騒音対策が万全となったことで、2交代制・3交代制による夜間稼働も選択肢に加わり、さらなる成長へとつなげていく考えだ。
1社依存から脱却し、10年間で売上2.5倍
小松工業は1955年、現社長の祖父にあたる鳥山太郎氏が創業し、スポット溶接を中心にフランスベッドや農業資材の加工を手がけ始めた。
1971年に自動車ボディー部品を生産する1次サプライヤーとの取引を開始し、プレス部品製造事業へとシフト。それ以降は大手自動車メーカーの2次サプライヤーとして、半世紀以上にわたり実績を積み上げてきた。2002年頃には250トンのダブルクランクプレスを導入し、現在の主力である順送プレス加工をスタートした。
2011年に鳥山光典社長が就任してからは、強力なリーダーシップで事業改革を進め、急速な発展を遂げてきた。
職人頼みの町工場から会社組織へと進化するため、若手社員を募って人材育成に力を注いだ。2013年にはISO9001を取得し、業務の標準化と会社の組織化を推進。ものづくりプロセスの再構築にも取り組んだ。
1社依存から脱却するため、飛び込みやテレアポによる営業活動を展開。現在の主力得意先でもあるシートベルト部品などの自動車保安部品メーカーをはじめ、新規得意先を開拓していった。
現在、基幹3事業の売上構成は、「自動車向けプレス部品製造」が83%、「家電向けプレス部品製造」が13%、「金型製造販売」(外販)が4%となっている。
鳥山社長が就任した2012年6月期から10年間で、売上高は2倍強に、得意先は2~3社から16社に増えた。かつては1社依存度が80%を占めていたが、現在は自動車保安部品メーカーが35%前後、自動車ボディー部品メーカーが20%強、家電メーカーが13%程度と分散化にも成功した。
新工場の建設計画に着手した頃は、新工場移転から2年以内に当時の売上の約1.7倍とする野心的な目標を立てたが、おおよそ目標どおりのペースで推移している。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 小松工業
- 代表取締役
- 鳥山 光典
- 所在地
- 静岡県浜松市浜北区新原4382-1
- 電話
- 053-587-3512
- 設立
- 1975年(1955年創業)
- 従業員数
- 28名
- 事業内容
- 自動車向けプレス部品、家電向けプレス部品製造、金型製作・販売
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