ロングテール型の多品種少量生産にマルチな複合マシンがフィット
工数削減で残業解消 ― ブランク工程は25%減、2次加工は40%減
株式会社 アルカディア
新工場を開設し、複合マシンを初導入 ― 再び成長軌道に
㈱アルカディアは2022年2月、精密板金加工の新工場を開設した。従来は精密板金工場と組立工場の2棟で操業していたが、板金加工設備の大半を新工場へ移設。工場スペースを確保するとともに、板金工程のレイアウトを全面的に見直し、整流化に取り組んだ。
新工場には新鋭設備として、ファイバーレーザ複合マシンACIES-2512T-AJをテイクアウトローダー付きサイクルローダー(2棚)仕様で導入した。同社初の複合マシンで、これまでパンチングマシンEM-2510NT(単体機)で加工していた製品のほぼすべてと、レーザマシンFO-MⅡ 2412NT(シャトルテーブル仕様)で加工していた製品の一部、人手で加工していたタップ・皿モミなどの2次加工をACIES-AJに集約した。
同社の生産能力・生産効率は大きく改善し、2022年8月期はコロナ前を超える過去2番目の売上高を達成した。コロナ禍で一時的に落ち込んだ需要の回復と新工場開設のタイミングが重なり、再び成長軌道に乗ったことになる。
整流化と労働環境に配慮した新工場
春原直樹社長は「新工場の建設計画に着手したのは2017年頃。農地転用の行政手続きやコロナ禍の影響で時間がかかりましたが、とうとう実現できました」と語る。
「計画にあたり一番大切にしたのは“モノの流れ”です。それまではスペースが限られ、繁忙期にはモノがあふれる状態で、作業効率を度外視せざるをえませんでした。社内に検討チームをつくり、現場の意見を採り入れながらみんなで新工場の設備やレイアウトを考えました」。
空調はもちろん、バリ取りと溶接の工程には粉塵やヒュームへの対策として集塵機を設置し、社員が清潔かつ快適な環境で働けるように配慮した。溶接工程は専用のエリアをつくって他工程と仕切っている。近隣には民家が多いため、チラーや集塵機はすべて工場内に設置し、騒音・振動・廃棄物を外へ出さない構造にした。
コロナ禍で工場に足を運んでもらうことが難しいため、稼働開始後はバーチャルで新工場の製造現場を見学できる360°VRショールームを公開した。高画質なVR空間撮影用カメラで撮影されており、建物の内部構造や設備レイアウトが鮮明に映し出される。画面上の説明タグをクリックすると加工設備それぞれの役割や特徴を知ることができ、板金加工に詳しくない人でも身近に感じられるように工夫した。
「こうしたツールも活用しながら、お客さまはもちろん人材採用の場面でも新工場をアピールしていきたい」と春原社長は語っている。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 アルカディア
- 代表取締役社長
- 春原 直樹
- 所在地
- 長野県上田市小泉2566-1
- 電話
- 0268-25-0034
- 設立
- 1983年
- 従業員数
- 34名
- 事業内容
- 精密板金部品の開発・設計・製造、電子機器・制御機器の設計・製造
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