「製造業のテーマパーク」づくりを支える女性スタッフ
板金加工から塗装までワンストップ対応
株式会社 吉見鈑金製作所 栁澤 亜美 さん / 西牧 美奈子 さん
左:塗装部門の西牧美奈子さん/右:第一製造部の栁澤亜美さん
「製造業のテーマパーク」を目指して
㈱吉見鈑金製作所の吉見昌高社長
㈱吉見鈑金製作所は、工作機械・環境機器・医療機器・農業機器・鉄道車両など多岐にわたる業種の製品を手がける長野県上田市にある板金加工企業だ。また、Webプラットフォームからの受注が4割を占めるまでに成長している。
これまで最新設備を活用した自動化やITを活用した仕組みづくりなどさまざまな改革を行ってきた同社が、現在新たなテーマとして掲げているのが「製造業のテーマパーク」だ。
吉見昌高社長が入社した1990年代前半の製造業は、「技術は見て盗むもの」という考え方が当たり前。また、3K(きつい・汚い・危険)というバブル期から続いているイメージから脱却できておらず、若者から敬遠され、募集しても応募者が集まりにくい傾向があった。吉見社長はこれらの課題を解決し、明るくきれいで、どんな社員も夢ややりがいを持てる職場にするにはどうすれば良いのかと考えた。そして思いついたのが「目線を変えて見る」ことだった。
きっかけは吉見社長がテーマパークに遊びに行った際、清掃員がゴミを「星のかけら」と呼んで拾っていることだった。その姿に衝撃を受けると同時に、目線を変えることで工場を「きつい・汚い・危険」な場所から「楽しい」場所に変えることができるのではないかと考えた。
同社が目指しているのは、訪問者も働く人も同社と関わるすべての人が楽しいと思える「製造業のテーマパーク」。その中では社員は演者であり、社長は舞台をつくるプロデューサー。演者(社員)が楽しく演じ(働き)、より高いパフォーマンスを提供することができれば、顧客は高い満足を得ることができる。そのため吉見社長はプロデューサー(社長)として、社員が働きやすい環境の整備や工場の美化、福利厚生といった仕組みの見直し、社員同士のコミュニケーションの場の創出などに努めている。また社会貢献の一環として2023年にSDGs宣言を発表、今年8月にSBT認証も取得した。
2023年7月に完成した塗装工場の壁には地元出身のアーティストがデザインした同社のものづくりと塗装工程のイメージが描かれている
塗装工場はシンナー臭がしないよう工夫を凝らしており、人に優しい作業環境を整えている
女性・若手人材を積極的に登用
吉見社長は、新人や加工経験の少ない社員でもすぐに熟練工と同じような加工ができるよう加工設備等にも積極的なデジタル投資を行ってきた。熟練工には若手の指導にあたってもらったり、これまで培ってきた技術やノウハウをデータ化することで、経験の少ない人でも同社の加工技術を引き継げるようにする。また、社内のDX化を進め、仕事の流れを見える化し、社員間であらゆる情報を常に共有し、女性や新入社員でもプラモデルをつくるような感覚でものづくりができるようにするための仕組みづくりを行っている。
従業員85名のうち、10~30代の割合は約70%を占めており、平均年齢も36.6歳と若い。また社員のほぼ1/3が女性で、事務職やプログラム工程だけでなく、ブランク工程や溶接工程などの製造現場で活躍する女性の姿も目立つ。
今回は同社で働く女性スタッフの中から、「第一製造部」でネスティングやブランク加工などを担当している栁澤亜美さんと、「塗装部門」で納期管理や出荷手配などを担当している西牧美奈子さんに話を聞いた。
本社工場の事務所でネスティングを行う栁澤さん
大きな製品や厚みのある製品を運ぶ際は声をかけ合い協力して行っている(写真は塗装工程の西牧さんと女性スタッフ)
会社情報
- 会社名
- 株式会社 吉見鈑金製作所
- 代表取締役社長
- 吉見 昌高
- 本社
- 長野県上田市小泉346–1
- 東御工場
- 長野県東御市滋野乙1571-1
- 電話
- 0268-27–7647(本社)
- 設立
- 1988年(1979年創業)
- 従業員数
- 85名
- 主要製品
- 工作機械・環境機器・医療機器・農業機器・鉄道車両・制御盤・半導体製造装置・射出成形機などのカバー・機構部品・Webプラットフォーム受注品
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