第33回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)
培った知識・技術・技能のすべてを表現した渾身の作
多様な材質を活用した「おしゃれ♡将棋盤&駒」が「溶接品の部」でグランプリを受賞
株式会社 神村製作所
「溶接品の部」と「組立品の部」でダブル受賞を達成
㈱神村製作所が製作した「おしゃれ♡将棋盤&駒」が職業訓練法人アマダスクール主催の「第33回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)で「溶接品の部」のグランプリを受賞した。同社は「組立品の部」に出品した「おしゃれ♡ダーツ」でも技能賞を受賞しており、ダブルでの受賞となった。
同社は毎年、製造部の取り組みとして、半年から1年ぐらいかけて、社員が設計から考えて加工サンプルを製作する社内コンペを行っている。今回の受賞作品もその社内コンペに出されたものである。
製造部試作Ⅰグループの江藤雅晃リーダーは「守秘義務のもとで製作する試作品とはちがい、私たちのグループが持っている技能・技術のすべてを存分に表現できる加工サンプルとして将棋盤と駒の製作を発案しました。2019年10月の全社員参加の方針発表会で表明し、2020年3月末までに作品を完成させる計画を立てました」と経緯を語る。
江藤リーダーは同じ製造部試作Ⅰグループの村上賢人さんと製作に取り組んだ。江藤リーダーは大学卒業後、中途で同社に入社した勤続15年のベテラン。村上さんは高校卒業後に入社し、8年目をむかえた中堅社員。2人とも国家資格である工場板金技能士(機械板金作業)1級やJISのステンレス溶接に関する資格を取得しており、3次元CADや2次元CAD/CAMの操作、パンチング加工、レーザ加工、曲げ加工、各種溶接技能に精通している。
「培った知識・技術・技能を出し切ることを目標にしました」と江藤リーダーはいう。
3次元CADから各種技能まで精通
製作は2020年1月に開始した。社内には3次元CAD Rhinoceros(ライノセラス) 3Dが4ライセンスあり、製造部のメンバーの大半が操作できるため、仕事の状況に応じて空いているマシンで3次元設計を行った。
江藤リーダーは将棋盤をモデリング。3次元モデルからバラシを行い、そのDXFデータを2次元CAD/CAMに取り込み、パンチ・レーザ複合マシンでブランク加工を行った。
将棋の駒は、王将、飛車、角行、金将、銀将、桂馬、香車、歩兵の8種類あり、先手・後手20枚ずつで合計40枚。それらをあえて材質をバラバラにしてつくることにした。
駒の大きさは規定サイズの最大寸法にし、駒の種類によって異なる材質を使用するため、板厚は0.5㎜から1.5㎜までを使い分けた。銅や真鍮などの高反射材もあったため、材料の切り出し、駒の切断はすべて1kWのファイバーレーザマシンを活用した。銅と真鍮に関しては溶接の経験がほとんどなかったこともあり、かなり苦戦したが、最後は満足のいく作品をつくることができた。
将棋盤のマス目加工と駒の溶接に苦労した
将棋盤で苦労したのが盤のマス目の部分だ。
「LC-1212C1NTを使い、担当の作業者に加工データを預け、一任しました。将棋盤の材料にはSUS304・板厚1.5㎜を使い、マス目はφ1.5㎜のパンチ金型で追い抜き(ニブリング)加工しました。金型が壊れることも覚悟のうえで、トライしました」。
「曲げ加工は村上さんが、金型をダブルで段取りし深曲げに対応できるRG-35Sで加工し、TIG溶接で完成させました。そして最後のハードルがバフ研磨、表面を研磨装置や手研磨で鏡面に仕上げていきました」。
「駒は、ファイバーレーザで切り出した素材をTIG溶接で1枚ずつ突き合わせ溶接しました。銅や真鍮は熱伝導率が高いため、手で保持しながら溶接すると、材料が急激に高温になり、指が何カ所か熱傷を負いました」。
「製作に費やした時間は、おおよそですがプログラムに1,200分程度、加工に2,000分程度です」(江藤リーダー)。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 神村製作所
- 代表取締役社長
- 神村 圭
- 所在地
- 京都府宇治市大久保町西ノ端1-23
- 電話
- 0774-43-4800
- 設立
- 1987年
- 従業員数
- 38名
- 主要事業
- 精密板金加工、精密金属加工、簡易金型成形加工、産業機器部品加工および関連装置設計・組立
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