新工場稼働 ― グループシナジーで薄板から極厚まで同一拠点で対応
自動化・ワンストップ・見える化 ― 経営改革をさらに前進
株式会社 新和
新工場のブランク工程の主力マシンACIES-2515T-AJ。300型収納の金型ラックを装備し、背後に見える自動倉庫MARSと連動することで、長時間連続運転に対応する
新工場を開設 ― 薄板から極厚まで1カ所で対応
左から、髙園克也営業部長、遠藤重裕社長、古賀義康業務部長、奥陽光工場長
㈱新和は2022年3月、工場の拡張移転を終え、新工場の本格稼働を開始した。
新工場は、親会社である鋼材流通会社・和信産業㈱の東金工場(千葉県東金市)の敷地内に建設した。延床面積は約4,900㎡で、旧工場(千葉県印西市)の約3倍となった。
事務所棟は、1階に管理部門と設計・プログラム部門、2階にミーティングルームや応接室、オープンラウンジなどが配置され、同社のコンセプトでもある“鉄”の質感を生かした家具・建具がいたるところにしつらえられている。
工場棟のメインエリアは中柱のない無柱大空間。旧工場から移設した加工設備のほか、新たにファイバーレーザ複合マシンやベンディングロボットシステム、自動倉庫などを増設し、生産能力を大幅に増強した。
工場棟の一部は2階建てで、1階は溶接工程、2階は受注動向や顧客ニーズに応じて組立作業などにフレキシブルに対応できる多目的スペースとなっている。溶接・組立といった下流工程を強化したことで、パーツだけでなくサブアセンブリー、完成品までワンストップで対応できる生産体制を整えた。
今後は、薄板コイルセンターと厚板溶断・製缶を手がける和信産業との連携を強め、グループとして川下戦略強化に取り組んでいくことになる。これまで和信産業グループの製造拠点は、薄板コイルセンター事業を手がける千葉工場(千葉市)、厚板溶断・製缶事業を手がける東金工場(東金市)、薄板精密板金を手がける子会社の新和(印西市)の3カ所に分散していた。今回、新和が東金工場の敷地内へ移転したことで、グループとしては東金工場1カ所で薄板の精密板金から極厚の溶断・製缶まで対応できるようになった。
髙園克也営業部長は「新和の新工場の隣には、和信産業の厚板の製缶工場があります。板厚0.3㎜から100㎜まで ― これだけの加工範囲に同一拠点で対応できることは大きな差別化ポイント。新工場への移転を機に、グループ内のコミュニケーションを密にして、シナジーを生み出していきたい」と意気込みを語っている。
左:2022年3月に本格稼働を開始した㈱新和の新工場。左奥に、厚板溶断・製缶事業を手がける和信産業㈱東金工場の建屋が見える/右:工場棟のメインエリアは中柱のない無柱大空間。壁面には156段の自動倉庫MARS-3015N(13列12段)が設置されている
鋼材流通会社がM&A ― シナジー創出を目指す
新和は、建築金物や鋼製家具・什器の板金部品を得意とする板金加工企業。創業者に後継者がいなかったため、一時期は事業継続が危ぶまれたが、2016年9月、薄板コイルセンター事業と厚板溶断・製缶事業を手がける和信産業㈱がM&Aで取得し、新和の事業を引き継いだ。事業継続を希望する新和の創業者と、川下への事業領域拡大を模索していた和信産業の思惑が一致したかたちだ。
2017年4月には和信産業の常務取締役(当時。現在は代表取締役)を兼務するかたちで遠藤重裕社長が就任し、和信産業グループとしてのシナジー創出を目指して経営改革を推し進めてきた。
遠藤社長は、生産管理システムWILL、板金加工ネットワークシステムASIS100PCLサーバー、板金エンジニアリングシステムVPSS 3iを導入し、事務所・工場のネットワーク化と加工情報の一元管理に取り組んだ。それと並行して、2018年にはファイバーレーザ複合マシンLC-2515C1AJ(材料棚・製品棚・TK付き)、2019年には自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATCを導入し、加工領域拡大と生産効率改善、自動化を推し進めていった。
左:曲げ工程のHG-1003ATC(手前)は入社3年目の森田茜さんが、EG-6013AR(奥)は新入社員の小川由希菜さんが担当する/右:FLW-600MTによる薄板板金筐体の溶接作業
会社情報
- 会社名
- 株式会社 新和
- 代表取締役社長
- 遠藤 重裕
- 所在地
- 千葉県東金市小沼田1561-14
- 電話
- 0475-78-5877
- 設立
- 1997年
- 従業員数
- 30名
- 主要事業
- オフィス家具、歯科医療用設備、建築部材などの精密板金加工
つづきは本誌2022年6月号でご購読下さい。