事業承継の選択肢としてM&Aが一般的に ― 買い手にとっては新たな成長や価値創出の手段
『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫
多くの課題を抱える中小企業
中小企業・小規模事業者は、新型コロナの5類移行後も物価高騰、賃上げ、深刻な人手不足など、引き続ききびしい経営状況が続いている。こうした状況から抜け出すため、経営者は得意先に対する価格転嫁への努力に加え、GXなどの新たな構造変化への挑戦、生産性向上や賃上げを促進する景気の好循環サイクルの実現など、多くの課題に取り組まなければならない。
「2025年問題」を前に中小企業のM&Aが進む
その一方で、経営者の高齢化にともない事業承継のめどが立たず、休廃業する企業は多い。近年70代・80代以上の経営者の割合が高まってきており、2025年までに中小企業・小規模事業者の経営者は70歳以上が約245万人に達するとの試算もあり、後継者難が大きな問題となっている。こうした事態を乗り越えるため、M&Aがさかんに行われるようになっている。
国は、後継者不在に悩む中小企業・小規模事業者に対して事業承継(引継ぎ)を支援するため、各都道府県に「事業承継・引継ぎ支援センター」を設置。親族内への承継、第三者への引継ぎなど、中小企業の事業承継に関するさまざまな相談に対応しており、相談社数は増加傾向となっている(図1)。
中小企業がM&Aを行う背景には、後継者不足の問題や、事業規模の拡大を目的とした経営戦略、行き詰まった経営の立て直しなどがある。特に第1次ベビーブームで生まれた団塊世代が75歳以上になることにともなって起こるさまざまな社会問題(「2025年問題」)を前に、企業の廃業や倒産を可能な限り食い止めるため、M&Aによる救済が進められている。中小企業はM&Aを行うことで事業承継・引継ぎ補助金が支給されたり、優遇税制によって税金の負担を軽減できたりする制度を利用できる。こうしたことも中小企業のM&Aが増えている理由となっている。
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