アルミ車両の内装部材加工で貢献する
モノづくりプロセスの可視化を進める
株式会社 弘木技研 代表取締役 弘中 善昭 氏
弘中善昭氏
㈱弘木技研は1950年に木工家具メーカーとして創業した。その後、家具製造で培った技術をもとに、アルミを主とする鉄道車両内装部品メーカーへ業種転向。1992年に現社名に変更した。
日立製作所を中心に、総合車両製作所、近畿車輛、川崎重工業、日本車輌製造と、国内の5大鉄道車両メーカーと直接取引、新幹線車両をはじめ、各種鉄道車両に組み込まれる部材を提供している。
2004年に当時42歳だった弘中善昭氏が社長に就任して以降は、乗降口付近に組み込まれるコーナーデッキパネルなどの部材を設計から加工、組立まで一貫生産を行う体制を構築。IT技術を活用した生産プロセスの“見える化”に取り組み、車両メーカーのベストサプライヤーとしての存在感を増している。
鉄道ビジネスの将来は明るい
― 最近の鉄道ビジネスの動向をどう見ておられますか。
弘中善昭社長(以下、姓のみ) 世界の鉄道市場は年々拡大し、2019~2021年には年間24兆円の規模にまで成長すると見込まれています。
新興国での鉄道需要が高まり、先進国でも都市間を鉄道網で結ぶニーズが高まっています。鉄道発祥の地、英国では、老朽化した車両を高速鉄道に置き替える事業 ― 都市間高速鉄道計画(IEP)がはじまっており、このビジネスは日立製作所様が約8,000億円(車両866両)で受注されています。
鉄道車両メーカーの「ビッグ3」の間では急速に合従連衡が進んでおり、フランスのアルストム、ドイツのシーメンスは昨年9月に鉄道事業の統合を発表、売上規模2兆円を超えるメーカーが誕生しました。売上トップの中国中車も先進国市場に進出しています。
日本の鉄道車両メーカーも世界の鉄道市場での受注獲得に力を入れています。日立製作所様は社会インフラ事業の先陣として鉄道インフラの輸出に力を入れており、英国での受注を契機にイタリアの関連会社を買収して、日立レールイタリア(HRI)を立ち上げました。最近では川崎重工業様が米国・ニューヨークの地下鉄車両を約4,000億円(約1,600両)で受注したというニュースが発表されたばかりです。その意味では鉄道ビジネスの将来は明るいと思います。
ファイバーレーザ複合マシンACIES-2515T-AJ+ASR-3015NTK
ACIES-AJによる高品質加工
日欧のモノづくり文化のちがい
― 弘中社長は欧州市場も視察されていますが、日本とのモノづくりのちがいを感じておられますか。
弘中 HRIの仕事を見ると、欧州の車両メーカーは同じ車両を長い期間、たくさん製造する傾向があります。日本でも東海道・山陽新幹線のN700系のように多数を製造する例はありますが、途中でモデルチェンジやマイナーチェンジのリスクがあり、大量につくる文化はあまりありません。
欧州のように生産数両が多い場合、メーカーはつくりやすさを考えた設計から入ります。当社のような内装を手がけるメーカーなら、デザイン画に基づき車体断面図を作成して屋根・側・床を設計してモノづくりを行います。ところが日本では、車両断面図は鉄道事業者が描くので、メーカーの意向が反映されにくい傾向にあります。その結果、同じ用途でもカタチの異なった部品が多数できるムダが散見されます。
欧州は車両のみならず、信号システムから保守メンテナンスを含めてリース会社が一括して所有、鉄道事業者はリース契約して車両を運行するというビジネスモデルなので、鉄道車両にこだわりを持ちません。そこが日欧で根本的に異なるところです。
生産台数が少なくなればコストも上がり、運行業者・車両メーカーにとっても採算性が悪化するため、「車両の共通プラットフォーム化」を提唱する動きが出始めています。
すでに2020年からの運行が決まっている東海道・山陽新幹線の次世代車両「N700S」は、それまでの車両とは異なり床下機器をモジュール化してレイアウトを見直し、編成両数に自由度をもたせています。連結パターンが柔軟で、東海道新幹線の16両に加え、九州新幹線や山陽新幹線の8両や12両といった編成でも対応が可能な設計がされています。世界市場を見据え、設計段階からつくりやすさや、編成・構成の柔軟性が考えられはじめています。
左:HG-1703などが並ぶ曲げ工程/右:E5系・H5系・E7系・W7系新幹線のグランクラスの天井パネルと荷物棚を受注している
会社情報
- 会社名
- 株式会社 弘木技研
- 代表取締役
- 弘中 善昭
- 住所
- 山口県下松市葉山2-904-15
- 電話
- 0833-46-3535
- 設立
- 1965年
- 従業員数
- 83名
- 主要事業
- アルミ特殊加工、鉄道車輌部品製造、ユニット組立と艤装およびその他の関連事業
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