技能検定制度を生かしたエキスパート人材育成の取り組み
「技能検定」を活用し、 自分で考え判断できる人材を育成
12名の工場板金技能士がものづくりを支える
大永工業 株式会社
電子機器や無線通信機器関連を手がける
大永工業㈱は1958年にプレス加工業として創業、1969年に法人化し、1984年に精密板金部門を開設した。創業当初より長野県内の無線通信機器メーカー、電子機器メーカーから電子機器や無線通信機器関連のシャーシや部品加工、交通情報板関連の仕事を手がけてきた。
1999年に村田和夫氏(現会長)が3代目社長になると、デジタル化・自動化による合理化を推進。営業活動も意欲的に行い、2001年には現在地に本社・工場を移転、企業体質を強靭なものにした。
2011年には、しなの鉄道「テクノさかき駅」近くに工場を借り、ブランク加工に特化した「テクノ工場」を開設した。2019年には製造部長・工場長を歴任していた西定男氏が4代目社長に就任、村田会長との二人三脚の体制となった。
デジタル化・自動化で対応力を強化
現在の課題は、手狭になってきた本社工場とテクノ工場との間でブランク加工後のシートの搬送などの横持ち作業が発生していること。作業のムダを省くため、両工場の統合による課題解決が大きなテーマとなっている。
同社の業績は2016年以降、黒字が続いている。2020年4月以降はコロナ禍の影響を受け、9月頃までは受注が30%ほど減少したが、11月以降は徐々に回復。最近は交通情報板、測定機器、医療機器など、主力得意先からの発注量が増え、最終的に第52期(2020年度7月)の決算は5期連続の黒字となった。
西社長は製造現場を熟知しているが、同時に村田会長が進めてきたデジタル化・自動化の推進も継承している。
西社長は「生産管理システムWILLの運用では、2018年にモバイル端末iPodを活用したiP進捗を導入してバージョンアップ。作業指示書のバーコードを読み込むことで、工程進捗・実績管理が簡単に行えるようになりました。これにより生産管理課では特急・割込みにも迅速に対応できるようになりました」。
「2020年には変種変量生産対応製造支援システムvLot ManagerをWILLとの連携で導入。ブランク工程・曲げ工程のネットワーク対応型マシンから進捗情報を自動で収集できるようになりました。さらに、現場リーダーには作業者支援ツールvLot Naviの端末を支給、その日に加工する製品がガントチャートで表示され、進捗状況なども画面上で確認することができるようになりました。これによりものづくりプロセスの可視化が実現できました」。
「また、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを2006年から活用しており、一部のお客さまからは製品の3次元データを受け取って、バラシを行う段階で曲げか溶接分断かを判断し、その結果に基づいて板金属性を備えた板金モデルを作成し、お客さまの承認をいただきます。垂直立ち上げで製品化するケースにも対応できるようになりました」。
「コロナ禍でお客さまを訪問して提案する機会も少なくなり、リモートで、バーチャルなデザインレビューを行う機会が増えてきました。3次元化に対応した長年の取り組みがコスト対応力強化につながり、お客さまからのきびしい要求にも対応できる力が備わりました」という。
会社情報
- 会社名
- 大永工業 株式会社
- 代表取締役会長
- 村田 和夫
- 代表取締役社長
- 西 定男
- 所在地
- 長野県埴科郡坂城町南条6390-1
- 電話
- 0268-82-3230
- 設立
- 1969年(1958年創業)
- 従業員数
- 41名
- 主要事業
- 情報機器・無線通信機器関連のシャーシや部品加工、医療機器関連の筺体、LEDやLCD(液晶ディスプレイ)の筐体、測定機器などの精密板金加工、プレス加工、組立など
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