Webマーケティングのパイオニア、さらなる進化を目指す
EM-ZRT導入 ― 稼働率改善と付加価値創出に貢献
株式会社 星製作所
5Sが行き届いた製造現場。2022年5月にパンチングマシンEM-3510ZRT(右)を導入し、生産合理化を実現。新たな付加価値創出を目指す
電子・情報通信向け板金筐体に集中投下 ― 新たな付加価値創出を目指す
代表取締役の星肇氏
東京都八王子市の㈱星製作所は2022年5月、パンチングマシンEM-3510ZRTを導入した。EM-2510NTとの入れ替えで、300型収納の大容量金型ストレージを搭載し、自動金型交換に対応したことにより生産合理化を実現した。
それと同時に、2007年に星肇(ほしはじめ)社長が就任して以来、経営資源を集中投下してきた「電子機器・情報通信産業向け板金筐体」の加工プロセスを大幅に強化。これまでWebマーケティングや3次元設計からのワンストップ対応によって深掘りしてきた板金筐体の市場で、新たな付加価値を生み出していこうとしている。
Webマーケティングのパイオニア ― 「板金ケース.com」を立ち上げ
星製作所は総勢6名という小規模事業者でありながら、板金業界におけるWebマーケティングのパイオニアとして知られている。
2010年、リーマンショックの影響で売上が激減する中、板金筐体の自動見積り・セミオーダーサイト「板金ケース.com」を公開し、Web経由での新規受注開拓に乗り出した。
「板金ケース.com」では、製作個数・寸法・素材・穴数・表面処理などを入力すると、自動計算で概算見積りが表示される。見積り加工単価のわかりにくさが板金の敷居を高くしている一因となっている中で、あえて価格をオープンにすることで通信販売のような手軽さを追求した。
立ち上げて半年ほどの間はほとんど手応えがなかったが、少しずつ小口の注文が入るようになり、小規模量産の受注も増えてきた。既存顧客の売上高が減少へ向かう中、Web経由で開拓した得意先からの売上高は着実に増加していった。
その後はラズベリーパイやラテパンダといった電子工作キットを対象とした「自作ケース.com」や、音響機器のエフェクターを対象とした「エフェクターケース.com」など、ニッチ分野に特化したブランドサイトを立ち上げ、市場に提案していった。
2010年に開設した板金筐体の自動見積り・セミオーダーサイト「板金ケース.com」
板金エンジニアリングシステムVPSS 3iを操作する鈴木道人工場長。アセンブリーで管理し、ものづくりの“見える化”に取り組んでいる
設計から製品化まで一式で手がける「筐体設計.com」を展開
2016年には新たな展開として、板金筐体の設計から製品化までワンストップで手がける「筐体設計.com」を立ち上げた。「板金ケース.com」のユーザーから寄せられた要望に応えたかたちで、主なターゲットはシステム開発事業者のエンジニア。ユーザーにとって専門外の板金筐体を一式で請け負うことで、ユーザーにはシステム設計のエンジニアリングに集中してもらおうというコンセプトだ。
「筐体設計.com」のサイト上で実装基板の数、基板の寸法、電源・コネクター・ファンといった取り付けるパーツの数を入力すると、設計費の概算見積り金額が表示される。それから注文へ移行すると、具体的なヒアリングを行い、3次元CADによる設計を行っていく。
筐体に収納する基板やコネクター、実装する電子部品、取り付けるネジも含めて3次元モデルとして再現し、それがフィットするフルカスタムの板金筐体を設計する。3次元モデルであれば、スケルトンにしたり回転させたりしながら検証できるため、板金三面図に不慣れな電子・情報通信分野のエンジニアも直感的な判断ができる。事前検証の精度が高くなるため、試作品の2度づくりを防ぎ、トータルコストの削減とリードタイム(開発期間)の大幅短縮も可能になる。
2017年には、前職でシステム開発事業者の設計・エンジニアとして活躍し、専門的な知識・スキルを持った野村健司設計主任が入社。設計力・提案力はさらに高まった。
専門的な知識・スキルを持った野村健司設計主任が加わり、3次元CADによる設計力・提案力が高まった
GPU市場向け高機能板金筐体の3次元モデル。オフセット金型により絞り加工を加えることで、約2倍の穴数で放熱特性を高めながら剛性を確保している
会社情報
- 会社名
- 株式会社 星製作所
- 代表取締役
- 星 肇
- 所在地
- 東京都八王子市美山町2161-15
- 電話
- 042-659-0808
- 設立
- 1984年
- 従業員数
- 6名
- 主要事業
- 産業・電子機器向け精密板金加工、基板実装関連部品、ページング(構内放送設備)関連部品、タッチパネル関連部品、情報・通信関連部品の製造
つづきは本誌2022年10月号でご購読下さい。