脱ワンマン経営 ― 社員に寄り添った経営改革で好循環サイクルを形成
FLW-1500MTを導入し、加工領域を拡大
株式会社 富士溶工
わずか4年半で売上2.6倍に成長
「板金屋らしくないことを本気でやりたい」 ― ㈱富士溶工の新川洋右社長は力強く語っている。新川社長は2018年に38歳で3代目社長に就任して以降、さまざまな社内改革により、わずか4年半で同社の売上を2.6倍にまで押し上げた。
同社が目指しているのは、顧客・協力会社・自社・社員・世間 ― 同社に関わるすべての人が、豊かで幸せになる「五方良し」の企業。ワンマン経営になることを避けて、社員の意見を積極的に聞き、協力会社や工業会などで関わった同業種・異業種の企業から情報・知識を得て、それを自社の取り組みに生かす。そうした蓄積されてきたさまざまな取り組みは、売上増、得意先数増、従業員数増、社員満足度の向上へとつながり、好循環サイクルとなっている
創業73年の板金加工・製缶加工企業
同社は創業73年をむかえる大阪府の板金加工・製缶加工企業。主に鉄・ステンレス・アルミなどの加工を得意としており、長年培ってきた技術と設備を生かし、薄板から厚板まで、小物から大物まで、一貫生産・短納期・小ロット・高品質など顧客のさまざまな要望に対応する。
現在の得意先は70社ほどで特殊車両、造船、食品機械、工作機械、医療機器、制御盤、プラント関係、建築内装品と多岐にわたる。毎月受注しているのは約40社。売上の45%を占める特殊車両の仕事はリピート品が多く、電気部品・エンジン以外のカバーやパーツを同社が一式で製造しており、1ロットは5台ほど。そのほかの製品は大半が新規品となっている。
加工材料はSS400のミガキ材、酸洗材を含む鉄が70%、ステンレスが25%、アルミが5%。鉄は板厚12㎜くらいまで、ステンレスとアルミは9㎜くらいまで、製缶加工は30㎜くらいまでに対応する。それ以上の厚みのものは協力会社に委託して対応することもある。
売上は毎年前年比10~15%程度で増えており、2022年には社長就任時の2.6倍となった。
得意先から最初に思い出してもらえる会社でありたい
新川社長はもともと、製造業にはあまり興味がなかった。学校を卒業後は製造業とは関係のない業種で営業などの業務を担当した。しかし次第に、人と接する楽しさを再認識するとともに、「せっかく営業をするのだったら父や祖父が携わった製品を売りたい」と思うようになり、2004年に24歳で同社に入社した。
2008年にはリーマンショックの影響で、売上の95%を占めていた特殊車両の仕事が大きく減少し、一時は廃業も考えた。「このままではいけない」と思った新川社長は、父親に「営業に行かせてほしい」と頼み込み、所属している大阪府シートメタル工業会や尼崎工業会をはじめ、知り合いや協力会社に仕事を紹介してもらい、得意先を増やして業績を回復させていった。
2020年には「第3工場」を竣工した。敷地面積650㎡で、吹き抜け構造で天井が高く、高さが5,500㎜もあるような大型製缶の仕事にも対応できる。ここで新川社長が社員たちに話したのは、5S活動の徹底と「社外の人が来たときには挨拶をすること」だった。
新川社長はその理由について「製造業とはいえ客商売ですから、仕事がきちんとしていることは大前提で、工場がきれいで元気良く挨拶することが大切です」。
「挨拶をして『どんどん来てください』という雰囲気をつくっていけば、お客さまが仕事をどこに出そうか悩んだときに、最初に当社を思い出していただけるかもしれない。『とりあえず富士溶工に出しておこう』と思っていただけるような会社を目指しています」と語っている。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 富士溶工
- 代表取締役
- 新川 洋右
- 所在地
- 大阪府大阪市西淀川区佃4-9-2
- 電話
- 06-6471-2823
- 設立
- 1949年
- 従業員数
- 40名
- 主要事業
- 鉄・ステンレス・アルミを中心とした各種金属の製缶・板金・溶接組立加工
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