第36回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その1)
精密試作板金のプロフェッショナルがつくった米粒大の超精密部品
「ナビ、リレー」が「経済産業大臣賞」を受賞
株式会社 アイキ
大きさは2.0㎜角の極小サイズ
「第36回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「単体品の部」に出品した㈱アイキの「ナビ、リレー」が「経済産業大臣賞」を受賞した。同賞は「最高度な加工技術・手段の開拓など、その成果が板金業界に広く貢献すると思われる作品」に贈られる。
この作品は大きさW2.0×D2.0×H2.0㎜の極小サイズで、息を吹きかければ飛んでしまう。銅に対して熱吸収率の高い微細加工用のファイバーレーザマシンを使って加工しており、自社で設計・製作した積層の専用治具にセットし、板厚0.1㎜の銅板を±0.1㎜の精度で加工した。その後、自社で設計し、ワイヤ放電加工機で製作した曲げ加工用の簡易金型を加圧力6トンのベンディングマシンFMB-062にセットし、ピンセットなども使って、高精度に曲げていった。曲げたときの対角寸法は0.1㎜となっている。専用金型を準備する段取り時間を除き、製作にかかった時間はプログラム時間に30分、加工に1個30分で、加工数量は2個だけだという。
小型化が進む製品への対応で培われた技術力
受賞の喜びを松下絢一専務は次のように語っている。
「今回はこのような素晴らしい賞を受賞することができ、社員一同たいへん喜んでおります。今回は私たちが日常的に加工している得意技術の一つである超精密部品を出品しました。板金フェアの応募作品は技術力が詰まっており、見た目も素晴らしい製品が多く、正直当社が選ばれるとは思ってもいませんでした。世の中の製品の小型化・軽量化が進む中、当社の加工製品もどんどん小さくなって、その都度、技術力を駆使して取り組んできました。来る仕事は『断らない』を信条に、努力して培った技術だと思います。今後さらに部品が小さくなっていく可能性もあるため、今以上に精密な部品に対応できるよう、取り組んでまいります。次回出品する機会があれば、さらに小さい部品に挑戦したいと思います」。
同社はこれまでも試作品の中から形状がおもしろいものを選び、寸法を変えた作品などを板金フェアに応募しており、第26回(2013年度)では「ナビ部品」が「日刊工業新聞社賞」を受賞。ほかの出品作品も「技能賞」「技能奨励賞」などを受賞している。
電子機器・AV機器・携帯端末などの仕事に対応
同社は松下竪宏社長が1998年に創業した。「アイキ」という社名は、松下社長が恩人から「愛情」と「気力」でお客さまに尽くせ、と諭されたことに由来している。当初は貸工場で、夫人を含めた社員5人のみでのスタートだった。近在のプレス工場を営業してまわり、小さな仕事を積み上げて信用を得ていった。2007年には現在地に自社工場を建設、大手メーカーとの取引はもちろん、1個、2個の小規模な顧客にも誠心誠意対応していった。
そうした苦労が実を結び、創業から25年で、従業員数25名、社員1人あたりの月間売上高が200万円超えの試作板金企業へと成長した。
主に電子機器・AV機器・携帯端末・カーナビ・計器類・車載搭載機器などの試作を手がけている。月間に受注する製品は図面枚数で1,000件で、大半が新規品。受け取る製品情報は2次元CAD、3次元CADのデータが多く、試作品の多くはロット10個未満となっている。微細なうえ精度もきびしいため、部品1個に対してブランク材を5個程度加工しておき、2次加工での不具合発生に対応している。
得意先は九州から関西、関東まで広く分布し、西日本と東日本の売上比率は7対3となっている。2008年のリーマンショック、2020年からのコロナ禍では開発が止まり、試作の仕事が落ち込み、受注に影響が出たが、得意先からの引合いは「絶対に断らない」「ノーとは言わない」を信条に、小さな仕事や短納期の仕事を集める積極的な営業活動を行っていった。顧客の喜びを追求し、顧客の気持ちを深く考える「お客さま第一主義」に立ってものづくりを続けている。
同社が製作する製品は指先に乗る2㎜角くらいの極小サイズから、肩幅サイズまでと幅広い。主に鉄・アルミ・ステンレス・真鍮・リン青銅・ばね材などの薄板金属を使い、独自の経験とノウハウを活かして、高難度な要求や絞りと曲げをともなう複雑形状の加工などに対応し、単品の試作品から多品種少量品まで提供している。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 アイキ
- 代表取締役
- 松下 竪宏
- 所在地
- 大阪府八尾市泉町3-61-5
- 電話
- 072-990-2861
- 設立
- 1998年
- 従業員数
- 25名
- 主要事業
- 試作、精密板金、金型設計(製作)、マシニング加工、ワイヤ放電加工、レーザ加工、曲げ加工、絞り加工など
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