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2024年は、変化対応力を備える「登竜門」

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明けましておめでとうございます。

2024年は「辰年」。陽の気が動いて万物が振動するので、活力旺盛になって大きく成長し、かたちがととのう年だといわれています。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻、中東情勢の悪化、さらに朝鮮半島情勢、台湾問題など、軍事力による波動が大きくなっており、人々の暮らしや国際経済にも大きな問題が残され、安寧な年越しにはなりませんでした。

日本では「物流の2024問題」による物流コスト、人件費の上昇、高止まりしている原油価格、円安による輸入物価の上昇圧力の強い状態も続いています。物価上昇によって家計の節約志向が強まり、個人消費の伸びも抑制傾向となっています。加えて、海外経済の減速や人手不足を背景としたサプライチェーンの制約といったマイナス材料が加わることで、景気の回復ペースは鈍っています。

春の賃上げ水準がどの程度になるかによっても景気に影響が出ます。円安によって輸出企業を中心に業績改善が進みましたが、11年続いたマイナス金利による「異次元緩和」でぬるま湯につかっていた企業も、日銀の政策転換がちかくなり金利上昇への備えを迫られてきました。経営者のマインドも「守り」に向かう傾向が見られ、企業の設備投資も活発さを失ってきました。

「新春景気見通しアンケート調査」の結果を見ても、2024年は「横ばい」と考える経営者が増えています。また、「主要業種別トレンド分析」を見ても、コロナ禍以前の数字を上まわるという予測を出した業種は多くはありませんでした。微増、微減はあるものの、全体としては「ゆるやかな回復基調」であると考えています。

ところで、個別の企業業績を見ると、手がけている業種に関わりなく好・不調がより明確になっており、二極化が鮮明になってきました。この中で「勝ち組」といわれる好調企業に共通しているのは、事業の「多様化」です。さまざまな業種の仕事を受注するというよりも、特定の業種・顧客の仕事を総取りし、板金・プレス・機械・樹脂・ゴム・木工と幅広い加工領域に対応するとともに、川上の設計から川下の電装組立までをターンキー受注していることです。

ある経営者は「金属製品の総合デパート」「ものづくりはサービス業」などと称して、さまざまな加工機能を横串するソリューションを開発し、DXを進めています。そして、自社で足りない設備・技術にも企業連携やM&Aによって果敢に実現しています。それによって1社ではカバーしきれなかった分野の仕事を見つけ、設備や人を融通し合い、新たな分野の仕事を生み出して差別化を進め、設計・加工提案を行っています。先代からの慣習に捕らわれず、思いきって新しいネットワークや人脈を生かしてチャレンジ ― ヒトとヒトの出会いはどんなドラマを生んでくれるかわかりません。

2000年前後から板金業界に構造変化が起き、「板金ゼネコン」が誕生する ― と述べてきましたが、20年あまりが経ち、そうした企業がぽつぽつと生まれています。その中には売上規模が100億円を超える勢いのある企業も数社見られるようになっています。

板金業界も大きく変化しています。その変化に追随、もしくはリーダーシップを執るためには「変化対応力」が求められます。辰は「竜」とも書き、天高くのぼる姿は「雨を降らし豊作をもたらす」「悪運を絶つ(辰)」といった言い伝えもあります。また、「登竜門」という言葉は鯉が滝をのぼって竜になったという古代中国の故事から、立身出世の関門のことといわれています。

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