PCR検査用ボックスを開発、エアロゾルボックスも製作
看板事業から医療機器分野へ参入 ― 「ものづくりで社会貢献したい」
株式会社 協同工芸社
飛沫感染対策製品の製作で「サプライチェーン補助金」に採択される
㈱協同工芸社は、「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の選考審査で補助対象事業B枠、「国民が健康な生活を営む上で重要なものの生産拠点等の整備」に係る補助事業者として採択された。補助事業は「医療用機械器具・医療用品製造業」としての「飛沫感染対策製品(アクリル仕切板等)の製作」で、工場整備とレーザマシン1台の設備導入に関わる総額8,000万円を経費総額として申請。採択された補助額は補助率上限の3/4にあたる6,000万円だった。
年内には本社工場近くの第4工場を整備し、12月にはレーザマシンFO-MⅡ 3015NTを導入、レーザ加工工場として本格稼働を開始する予定だ。
「ものづくりで世の中を感動させることで、社会貢献したい」
もともと同社は医療機器ではなく、看板の企画からデザイン・製作・施工まで行うスペシャリスト集団だった。今回の補助金事業に申請した背景には「ものづくりで世の中を感動させることで、社会貢献したい」という箕輪晃社長の強い意志があった。箕輪社長は医療機器分野へ参入したきっかけを次のように語っている。
「3月に入って新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)に感染する患者が増え、医療関係者の医療用マスクN95や医療用ガウン、手袋、フェイスシールドなどが不足している ― といったニュースがさかんに報道されるようになりました。そこでまずは、看板に使用するアクリル板で飛沫防止パーテーションを製作することを考えました」。
「そんな時に台湾の頼賢勇医師がエアロゾルボックスを考案、その設計図を世界の医療従事者のために無料公開したことを知りました。人工呼吸器などの管を挿管する際、患者から大量のエアロゾル(気体中に浮遊する固体もしくは液体の粒子)が拡散します。そのため、スタッフ全員が医療用マスクN95の着用を義務づけられています。しかし、当時はN95が不足していました。人工呼吸器を必要とする患者が増えると、院内感染のリスクは高くなります。そこで頼賢勇医師は新生児の保育器をヒントに、感染した患者の顔にかぶせることで、挿管する際のエアロゾル感染を防止できるエアロゾルボックスを考案。特許出願するとほかの人がつくれなくなると危惧し、製作図面を無料公開しました。このニュースに感動した私は、この医師の願いを実現したいと思いました」。
「そこで、交流のあった五井病院(千葉県市原市)と連携、同病院の加藤良二院長に監修をお願いし、飛沫感染のリスクが高いとされる麻酔科医師にヒアリングして、側面にあける人工呼吸器などのチューブ挿入口の位置決めなどを行い、使い勝手を高めました。エアロゾルボックスは滅菌消毒が必要なため、分解できる構造を採用し、サイズはW510×D400×H500㎜で製作しました。最初の50台は全国の感染症指定病院に無料提供、その後は販売をしました」。
「このことが新聞やWebニュースで紹介されると、全国の医師・看護師から『エアロゾルボックスの無料配布を望みます』『肺炎を起こす患者の多くが痰を喉に詰まらせるので、痰を医療者が吸引しなければいけない。この時に大量のエアロゾルが出るので、エアロゾルボックスを使いたい』『歯科治療ではエアロゾルが発生する治療がすべてなので、歯科用のエアロゾルボックスがほしい』などの要望が寄せられました。実際に使用した医療従事者からも感謝の声が届き、社会貢献という言葉が少しずつ実感できるようになりました。そこで医療従事者が困っている課題を解決する機器を開発・製作する仕事を当社の新しい事業に加えたいと考えるようになりました」。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 協同工芸社
- 代表取締役
- 箕輪 晃
- 所在地
- 千葉県千葉市美浜区新港152
- 電話
- 043-242-1675
- 設立
- 1969年
- 従業員数
- 105名
- 主要事業
- 看板、サイン企画・内装・製作・設計・施工
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