「過ちて改めざる是を過ちという」
論語にある「過ちて改めざる是(これ)を過ちという」 ― この言葉をあらためて重く感じています。過ちは誰でも犯すが、本当の過ちは過ちだったと知りながら悔い改めないことである ― という意味ですが、私を含め多くの方が、胸に手を当てて考えてみると思い当たることが多々あるのではないかと思います。
東京都では7月12日から4度目となる緊急事態宣言が発令され、7月23日から開催される東京五輪は、神奈川・埼玉・千葉・北海道・福島を含む1都1道4県にある競技会場では無観客で開催されることになりました。
今さらながら、1年前に開催延期を決めた際の状況把握の甘さが指摘されています。さらに、その後は「中止か延期か」という議論も行われてきましたが、結果として成り行きまかせで開催時期をむかえてしまったと感じている国民が多いのではないかと思います。
緊急事態宣言についても、罰則がないに等しい宣言では国民に「お願い」をするだけなので、回数を重ねるごとに緊張感が薄れてしまっています。
ワクチン接種についても、1日100万回の接種で加速させると意気込んだものの、大規模接種と企業単位の職域接種が始まってみれば、2回目の接種に必要なワクチンが確保できなくなり、日程延期の通知を出す自治体も出ています。
また、ワクチンを保管する冷蔵庫の温度管理がうまく作動せず、温度が上がりすぎて貴重なワクチンを大量に廃棄せざるを得なくなった自治体も出ており、ワクチン接種を待っている人たちの心を挫く事態にもなっています。単身赴任の働き盛りの人の中には、半年以上も家族に会えず、「今回の接種でやっと帰れる」と期待していた人もいると聞きます。
コロナ禍は全世界にとって初めての経験ばかりで、想定もしていなかった事態が次々発生していることは理解できます。しかし、今の状況を見ていると、もっといろいろなケースを想定して準備・対策ができなかったろうかと思わずにはいられません。対応が後手後手になっていて、読みの甘さが露呈しています。
さらには、飲食店などへの休業要請にともなう休業補償も、申請から交付までに時間がかかり過ぎることから、ここへ来て先払いで補償金を支払うことを検討し始めました。こうしたことは以前から指摘されていた内容であり、当てのない休業補償では経営を続けられない飲食店が、結果として緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で示された酒類の販売や閉店時間を守らずに営業するケースが目立ちます。
こうしたことが感染防止の効果を妨げ、感染拡大に歯止めがかからない現実を招いています。また、若い人を中心とした路上飲みも増え、20代、30代の感染が広がっているのも事実です。あまりに縛りがきつくて発散したい気持ちもわかりますが、ここは辛抱、ぐっと我慢してほしいところです。
「過ちて改めざる是を過ちという」の言葉が当てはまる事態が日常化していることに問題があるように思います。政府与党は、衆議院選挙までに20兆円規模の補正予算を組んで、経済へのテコ入れを計画しているようですが、その財源の大半は赤字国債。国の借金がふくれ上がり、その責任を誰が負うのかといえば「すべての国民」であり、私たちの子や孫たちがツケを支払うことになります。出生率が下がり、高齢化がますます加速する中、負の遺産を背負い続けることになる次世代の人たちには心苦しく思います。しかも、こうした事態を是正しない政治家や官僚は、誰もその責めを負うことがありません。
「過ちて改めざる是を過ちという」 ― この言葉をかみしめなければ、暗たんとした未来への不安が広がっていきます。