新型コロナで社会・産業構造そのものの転換が加速
『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫
経営者には決断が迫られている
小誌1月号の「視点」で、ポストコロナへ向け「グレートリセット」が求められる、経営者には決断が迫られている ― と書いたところ、Webサイトの1月のコンテンツ別アクセスランキングで1位になった。これまで「視点」は、トップ10にランクインすることはあっても1位になることはなかったので、驚いた。
この頃は、訪問取材またはオンライン取材を申し入れると、「お聞きしたいことがあるのでぜひ来社してほしい」と逆にお誘いを受けるケースが増えている。取材で遠方へ出かけた折には「近くまで来ているなら会って話したいので立ち寄ってほしい」と申し込まれることもある。
また、毎年この時期には講演を依頼されて地方へ出向くが、今年はオンラインに切り替えての講演になり、視聴いただいたお客さまから「参考になったので使用した資料をいただけないか」と問い合わせをいただくこともある。
こうしたことは、リーマンショック後にはあまりみられなかった。お客さまも時代の変化に合わせて、いろいろご苦労されていることがわかる。
ウイズコロナ、アフターコロナの経営課題
こうしたお客さまが抱えられている経営課題を大まかに分析すると、次の4点に分類できる。
1.これまでは業種・業界ごとに縦割りでお客さまをとらえていたが、大きく変化し、業種・業界を横断的にとらえる必要が生じている
2.2020年10月に菅首相が発表した「2050年カーボンニュートラル」に対応した「グリーン成長戦略」が板金需要に与える変化をはかりかねている
3.「2025年問題」 ― すなわち生産労働人口減少への対応と、「非接触」「リモート」というウイズコロナ、アフターコロナにおける働き方改革への対応
4.事業承継
業種・業態とサプライチェーンの変化
1点目の問題「業種・業界を横断的にとらえる必要」は、発注元である大手企業のリストラクチャリングで製造部門のアウトソーシングや事業売却が相次いでいることから生じている。特に電機メーカーは、「GAFA」のように工場設備や作業者などの固定費負担が大きい製造部門を切り離し、ファブレス化や製造子会社化、事業売却を行い、身軽になることで高収益体質への転換を目指すようになっている。
その結果、事業部ごとに口座を持っていたサプライヤーは子会社化された製造会社との間で新たな契約を取り交わす必要が生じている。しかし、統合された製造拠点は必ずしも従来の工場とは限らず、遠方に移転する場合もあるため、取引のかたちが大きく変わる。
事業売却によって製造拠点がなくなる事態も起きており、サプライチェーンが大きく変化している。また、コロナ禍により既存のサプライチェーンの脆弱性が露呈したことから、サプライチェーンの再構築 ― 特に事業継続計画(BCP)の見直しが行われ、製造拠点の再配置が行われる一方で、部品の標準化によってどこからでも調達できる体制づくりが一般的になったことも見逃せない。調達部門をアウトソーシングし、国内・海外を問わず価格優先で調達する傾向も見られている。
Web上の受発注プラットフォームを活用した調達ビジネスも拡大している。受発注プラットフォームを通して新規の仕事を受注する板金サプライヤーも増えており、受発注プラットフォーム経由での受注が受注額の半分を占めている板金企業も生まれている。
こうした動きから、「業種・業界」という概念や「ピラミッド型の下請け構造」は崩壊したと言っても過言ではない。
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