梅雨明けに訪れる熱気のような景気回復に期待
今年は梅雨入りが遅れる一方で、紫陽花の開花時期に真夏日や猛暑日となるなど気候変動が続いています。
欧米を中心に自国第一主義を掲げる保守系右派勢力が国政選挙で議席獲得数を伸ばす一方、覇権主義で軍事侵攻や海洋進出をはかる中国・ロシア、宗教対立、出口の見えない中東情勢や朝鮮半島情勢、立候補者が刑事事件で有罪判決を受ける中で争われる米国大統領選挙 ― 正義や理念も見られず、世界が分断と混迷に向かって突き進んでいる気がします。
日本の景気状況も足踏みが続き、各種経済予測を見ると、足もとは停滞しているものの下期に景気回復を予測するとの見方が多いものの、「たられば」が多く、不確実性が強まっています。
景気の先行指標といわれる建設機械の出荷額、工作機械の受注額も下振れ傾向が続いています。特にここ3年好調だった建設機械は、年初の時点では今年度もプラス成長が継続すると予測されていたものの、2月の出荷額から前年同月比で減少に転じ、コマツ・日立建機も通期見通しで減収減益になる見通しを示しています。建機向けの鋼材需要も落ち込んでおり、今後はさらなる落ち込みも懸念されています。
工作機械の受注額も、5月は17カ月ぶりに前年同月比でプラスに転じたものの、先行きは予断を許しません。業界関係者は秋に開催されるJIMTOF(日本国際工作機械見本市)以降の受注回復に期待していますが、11月の米国大統領選挙の結果次第ではどう転ぶかわからなくなっています。
半導体製造装置は、AI半導体やパワー半導体などが牽引し、需要回復が著しいものの、ハイテク分野での米中摩擦、中国に対する輸出規制の影響で、対中輸出の落ち込みが懸念されています。
鋼材や板金製品の需要先として大きい建設需要も、都市再開発や都市部の高層マンション建設などの大型プロジェクトを抱えているものの、人手不足で工期が大幅に遅れ、それにともなって建材や建物に設置される設備・機器の発注も先送りされるケースが目立っており、景気を牽引するほどの勢いに欠けています。
対照的に、動きが顕著な業界のひとつが防衛産業・航空機産業です。2022年12月に閣議決定した国家防衛戦略では「先進的な技術に裏付けられた新しい戦い方が勝敗を決する」「各種企業や研究機関が生み出す研究成果を短期間で防衛装備品に取り込んでいく」との趣旨がうたわれ、円安と物価高を踏まえ、2023~2027年度の5年間の防衛費総額は約43兆円と大幅に増額されました。
さらに、戦闘機や戦車など武器の開発・製造に携わる企業だけでなく、これまで民生用機器を製造していた企業や研究機関が「防衛産業」に参入しています。無線通信分野では「ミサイル防衛」に対応する機器の開発が進んでおり、それに合わせたアルミ製筐体部品の仕事が増えています。
航空機産業は、ボーイング社によると、2042年までの20年間の新造機需要は機数ベースで4万2,595機、金額ベースで8兆ドルと見込まれています。国内では座席やギャレー、ラバトリーなどの内装品が主体ですが、今後はエンジン部品、コックピット内の機器などへの拡大も期待できます。すでにJIS Q 9100などの認証を取得している企業の仕事量は伸びています。
梅雨明けにともなって気温が上昇するように、日本経済や板金業界にも熱気がもたらされることを期待します。