板金論壇

物流の「2024年問題」への対応を考える

物流コストの「見える化」が必要

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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ドライバーの時間外労働時間は年間960時間が上限に

お客さまを回っていて耳にするのが、物流の「2024年問題」。2024年4月1日以降、自動車運転業務の時間外労働時間を年間960時間とする規制が設けられることによってさまざまな問題が生じると予想される。

厚生労働省労働基準局が2021年度に行った「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査」によると、1年の拘束時間について「3,300時間以上」と回答した事業所は21.7%。この中には「3,516時間超」の4.3%が含まれている。

法定労働時間が1日8時間、週40時間であり、1年が52週であるとすれば年2,080時間が法定労働時間で、これに時間外労働の上限960時間を加算すると3,040時間となる。少なくともトラック運送会社のうち21.7%の会社が早急に改善の対策を講じなければ労働基準法違反となり、罰則の対象となる。

  • 画像:物流の「2024年問題」への対応を考える図1:道路貨物輸送・宅配便のサービス価格指数の推移
  • 画像:物流の「2024年問題」への対応を考える図2:売上高物流コスト比率の推移

物流コストのインフレが進む

この問題の難しさは働き方改革にはとどまらないところにある。労働時間が減ることでドライバーの収入は当然減り、1日に運ぶ量が減り、運送会社は売上が減少。車を手当てできても人は集まらず、結局収益の悪化につながる。

こうした課題を解決するためには運賃値上げは避けられず、上げ幅も「2024年問題」まで考えるとかなり高い数字にならざるを得ない。しかし、運賃の値上げは簡単なことではなく、とりわけ中小の運送会社では経営が困難になることも想定される。

また、運賃値上げになれば商品への価格転嫁も避けられず、消費者物価のさらなる上昇につながり原材料、エネルギー、運賃のトリプル値上げでインフレが進み、景気の押し下げも懸念される。

図1は日本銀行の「企業向けサービス価格指数(2015年基準)」より経済産業省が作成した道路貨物輸送・宅配便のサービス価格指数の推移グラフである。ここでは道路貨物輸送のサービス価格が2010年代後半にバブル期の水準を超え、過去最高(物流コストインフレ)となっている。特に、宅配便の価格の急騰が顕著になっている。

また、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の物流コスト調査のグラフ(図2)によると、2021年度の売上高物流コスト比率は5.7%となり、過去20年の調査で最大の上げ幅となった。

つづきは本誌2023年6月号でご購読下さい。

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