発展する食品機械と板金加工
寸胴鍋・おでん鍋などのステンレス製厨房用品を製造
「人が必要とするもの、困っているもの、ステンレスが生きるもの」がベース
株式会社 ワクイ
左:EM-2510MⅡにスケッチ材をセットしブランク加工を行う/右:業務用ステンレス鍋
半世紀以上にわたりステンレス加工に取り組むスペシャリスト集団
涌井義弘社長
㈱ワクイは1939年に燕市で創業、今年で76周年をむかえる。1943年に涌井兵器㈱として軍需関連でスタートしたものの、翌年には涌井工業㈱と社名を変更、自動車部品の製造を行った。
戦後は鋳物の風呂釜を、1964年からはステンレス製の風呂釜を開発・製造し、次第にステンレスを素材とする製品加工に取り組むようになった。
ステンレス製寸胴鍋の製造を開始
1968年頃に燕市内の厨房用品の商社2社と連携し、多くの食材を入れて煮込んだりするときに使用する寸胴鍋のOEM供給を始めた。
寸胴鍋は円筒形で容量が大きく、一度に大量の食材を煮込むことができ、飲食店の厨房などで幅広く使われている。寸胴鍋には、アルミ・ステンレス・モリブデン・銅・ホーローなどさまざまな素材のものがあるが、酸やアルカリに強く、塩気の多い調理にも向くステンレス鍋が多く使われている。
同社では直径20~75㎝までの寸胴鍋をシリーズ化、材料はSUS304、SUS430、SUS316、SUS443、SUS442で、板厚は0.5~2.0㎜が多く、大半が1.0㎜前後となっている。工法は底板をプレスで打ち抜き、側板はシャーリングマシンで所要の寸法に切断したステンレス板をロールベンダーで曲げ加工して、底板とシーム溶接して仕上げている。
ロール・溶接・プレス・研磨・洗浄を行った後に梱包して出荷。シリーズごとにOEM先の商社から注文が入り、月産数百個を受注生産で対応している。
2017年に導入したベンディングマシンHD-1303NT。曲げ長さ3mまで対応する
溶接工程。加工しているのは業務用のおでん鍋
自社一貫生産体制が特徴
涌井義弘社長は「当社は業務用から家庭用まで幅広い厨房用品をはじめとしたOEM製品・自社製品の製作・販売を行っており、材料手配から完成品まで自社一貫生産体制で小ロット・短納期生産に対応するとともに、加工途中での設計変更にも即応する柔軟性を備えています。シャーリング、パンチングマシン、プレスマシン、ベンディングマシン、ロールベンダー、シーム溶接、TIG溶接、研磨、包装、販売までを一貫して行っています」と事業内容を語っている。
「寸胴鍋は、40年以上継続取引が続いています。ある溶接機メーカーに特注で製作してもらった、底板と側板を溶接するシーム溶接機に特徴があり、歪みが少なく溶接ビードの仕上がりもきれいな溶接ができます。底板の大きさに応じて治具が柔軟に対応するので段取りも楽です。しかし、このマシンも経年劣化が進み、後継機種としてアマダのファイバーレーザ溶接機の導入を検討中です」(涌井社長)。
左:研磨工程。業務用ステンレス鍋の研磨を行っている/右:自社商品のステンレス製大型ゴミステーション「環境ステーション」
会社情報
- 会社名
- 株式会社 ワクイ
- 代表取締役社長
- 涌井 義弘
- 住所
- 新潟県燕市小池3330-19
- 電話
- 0256-62-5061
- 設立
- 1939年
- 従業員数
- 43名
- 主要事業
- ステンレス製業務用厨房機器、医療機器、ステンレス製インテリア製品・エクステリア製品、表札などの建築金物類、精密板金加工
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