Interview

「グリーンディール」の加速で新たな板金需要が生まれる

次世代の洗浄機を2月5日に発表

株式会社 平出精密 代表取締役 平出 正彦 氏

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画像:「グリーンディール」の加速で新たな板金需要が生まれる平出正彦社長

㈱平出精密は、1964年に平出正彦社長の父が「平出精密鈑金製作所」として創業した。同社のルーツは戦中の飛行機部品の加工で、先代は手板金で±0.2㎜の精度を出す技術者だった。その後はプレス加工部品を金型レスで加工する独自技術で発展し、近年はロボット開発・電気自動車部品・交通システム・医療機器など先端技術の開発をサポート。加工精度±10μmの「微細板金」の領域に至っている

強みである高度な技術力を生かし、インクリメンタル成形による「絞り板金」、「積層板金」による機械加工部品の工法転換、時計やカメラなどの「機構板金」、ハステロイ・インコネル・チタン・コバール・パラジウムなど特殊材料の特性を生かした「機能板金」などを開拓。機械装置一式の受託生産にも対応する。

2017年には法人設立50周年を機に「ハイブリッド精密板金」を商標登録し、積極的な広報活動をスタートした。「ハイブリッド」には「材料の複合化」と「工法の複合化」という2つのテーマが込められている。

コロナ禍で事業環境がきびしさを増す中、精密板金加工技術の先端を走り続ける同社はどのような取り組みを行っているのか ― 平出正彦社長に話を聞いた。

「グリーンディール」が加速

― 昨年10月に菅首相が「2050年にカーボンニュートラルを実現する」と発言してから、日本でも「グリーンディール」(脱炭素化と経済成長を両立させる産業政策)が話題になっています。

平出正彦社長(以下、姓のみ) コロナ禍の影響もあって欧州・米国・日本が「グリーンディール」に舵を切り、サステナブル社会(持続可能な社会)の実現に必要なインフラ市場がこれから本格的に動き始めます。そこには多くの板金需要が生まれてきます。

当社は15年ほど前からこうした分野に手を広げ、さまざまな開発案件を受注してきました。

たとえば「太陽熱発電」というものがあります。太陽熱発電は太陽光発電とちがい、太陽光をレンズや鏡などで集めて熱に変換し、その熱を使って生成した蒸気でタービンを回転させて発電するシステムです。火力発電など、タービンを利用する既存の発電方法と併用できることや、技術の進歩で発電効率が良くなったことから注目されるようになりました。クリーンエネルギーの米国のスタートアップ企業「Heliogen」が1000℃を超える高温を用いる技術を開発したことで実用化が加速するといわれています。当社の地元・長野県富士見町でも、三鷹光器さんが、当社がお手伝いしたヘリオスタット(反射鏡)を用いた太陽熱発電の研究を続けられています。

高温・低温の温度差を利用して発電する「温度差発電」も、海洋や温泉(源泉)を活用する実験が行われています。CO2を発生させない「水素発電」は、LNGや石炭に比べてコストが高いという欠点を克服できれば、大きく成長できると予測されています。

お客さまとの守秘義務契約で詳細はお話しできませんが、こうした分野でも板金加工の需要が顕在化してきています。「グリーンディール」によって、板金業界にはフォローの風が吹くと思います。

― 御社は自社製品としても環境に配慮した工業用部品洗浄機をラインアップされています。

平出 当社が長年開発してきた洗浄機も、環境にやさしい商品として販売が伸びてきています。2月5日にはデザインを一新した新ブランド製品「VORTENRYU(ボルテンリュウ)」を発売。溶剤をいっさい使わず、独自開発した「シャワー洗浄」「浸漬・揺動洗浄」「流水洗浄」を同時に行う世界11カ国の特許洗浄技術「トリプルウォッシュ」により、流水で汚れを落とす次世代の工業用部品洗浄機です。

左:太陽熱発電の太陽追尾型ビームダウン方式のヘリオスタット(反射鏡)/右:水素ステーション向け水素変換機の部品左:太陽熱発電の太陽追尾型ビームダウン方式のヘリオスタット(反射鏡)/右:水素ステーション向け水素変換機の部品

クルマの電動化への対応

― カーボンニュートラルの観点から、自動車の電動化が大きく取り上げられています。

平出 15年以上前からバッテリーケースや電池セパレーターの試作など電動化に対応した仕事に取り組んできました。今後は電動化によってこうした需要が大きく伸びると思います。

ただ、バッテリーケースやセパレーターは量産になれば何百万個というロットになるため、板金の出る幕はありません。1,000個試作したときは、「翌月からロット1万個納めてほしい」と要請をいただきましたが、当社では対応できず、翌月も1,000個を納入させていただきました。

それよりも板金需要として想定されるのは充電インフラです。普通充電器・急速充電器・ワイヤレス充電器などありますが、いずれにしろ板金加工で対応する分野になっていくと思います。燃料電池車(FCV)に対応する水素ステーションの需要も期待できると思います。当社ではすでに水素ステーション用脱水素装置を試作しています。

①同社の提案事例(脱水素装置)。曲げ加工では長さ600㎜でレンジ0.05㎜の通り精度、ファイバーレーザによる気密溶接、アルミ材によりステンレス材の約1/3の重量を実現した/②2月5日にデザインを一新して発売した工業用部品洗浄機の自社ブランド製品「VORTENRYU」①同社の提案事例(脱水素装置)。曲げ加工では長さ600㎜でレンジ0.05㎜の通り精度、ファイバーレーザによる気密溶接、アルミ材によりステンレス材の約1/3の重量を実現した/②2月5日にデザインを一新して発売した工業用部品洗浄機の自社ブランド製品「VORTENRYU」

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会社情報

会社名
株式会社 平出精密
代表取締役
平出 正彦
所在地
長野県岡谷市今井1680-1
電話
0266-22-8866
設立
1967年
従業員数
130名
事業内容
半導体製造装置、医療機器、通信機器、航空・宇宙関連、燃料電池などの精密板金加工
URL
http://www.hiraide.co.jp/

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