特集

“競争”から“協創”へ ― 日台連携を望む台湾板金業界

「新しいビジネスにアンテナを張りチャレンジすべきだ」

2019年上期の売上は前年同期比10%増を見込む

岳峰工業有限公司(PUNCHTEK IND. CO.,LTD.)

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画像:「新しいビジネスにアンテナを張りチャレンジすべきだ」左:ベンディングロボットシステムEG-6013AR/右:大型モニターに表示された稼働サポートシステムのバーチャルファクトリー画面で工場設備の稼働状況が確認できる

金属プレス加工企業の営業から転身

画像:「新しいビジネスにアンテナを張りチャレンジすべきだ」朱丞郁総経理(左)と夫人の黄安楡さん(右)

岳峰工業有限公司は、創業者である朱丞郁総経理の「新しい事業を考えるべき」という考えのもと、1997年に創業した。朱総経理は、それまで父親やその兄弟が経営していた金属プレス加工企業で営業を担当していたが、「このままでは量産の仕事は中国大陸へ移り、台湾国内には多品種少量などのロットの小さい仕事しか残らない」という状況に危機感を覚え、独立を決意。140坪の貸工場にパンチングマシンPEGA-357とベンディングマシンRG-50×2台、2次元CAD/CAM AP100を導入し、夫人の黃安楡さんを加えた社員15名でスタートした。

仕事は、前職の営業担当の頃から出入りしていたスキャナー・通信機器・工業用コンピュータ(IPC)のメーカーなどから受注することができため、順調なスタートをきることができたが、すぐに生産能力が追いつかなくなった。そのため、2001年には近くの240坪の貸工場に移転。新たにレーザマシンLC-1212αⅡとRG-50×2台を増設し、それまで外注していたレーザ加工を内製化した。

「受注量が増えていたIPC関連では、パンチングとレーザの複合加工に対応することで、品質向上と工期短縮を実現できたのも大きな成果です」と朱総経理は当時を懐かしむ。これにともない、従業員数も35名に増員、売上も創業時の4倍にまで増えた。

その後も必要に応じて設備の導入や工場の移転・拡充を続け、会社の規模は徐々に大きくなっていった。

日本の板金工場へ見学に行った際にはERPシステムの導入効果を知り、同社もERPシステムを導入して進捗・実績管理を行うようになった。また、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを導入、ITを活用したデジタルなモノづくりに取り組んでいった。

そして、商社を通じてパーツ単位で受注していた日系医療機器メーカーの仕事が、円高が進んだことですべて台湾生産に切り替わり、同社にもアセンブリー対応が求められるようになった。仕事の量も質も変化する中で同社の業績は向上、2014年には創業からわずか17年で社員数は6倍の85名、売上も大幅に増大した。

仕事はIPC筐体や日本の歯科医療機器などが中心になっていった。いよいよ工場が手狭になったので、2008年に近くの工業地1,400坪を購入。2009年末に2階建ての新工場の建設に着工し、2010年に竣工、移転した。そして日系医療機器メーカーが台湾生産にシフトした製品のアセンブリーに対応するため、溶接工程を内製化する必要があり、溶接ロボットなどを導入。さらに、組立スペースが不足してきたこともあって、2階建ての工場建屋に3階、4階を増築した。

画像:「新しいビジネスにアンテナを張りチャレンジすべきだ」左:ファイバーレーザ複合マシンLC-2515C1AJ/右:LC-2515C1AJで加工したIPCの筐体部品

2019年上期の売上は、前年同期比10%増

ここ2~3年は為替の影響による仕事の減少、それから「一例一休」(台湾の労働基準法改正)によるコスト増大の影響により、業績は低迷した。とくに影響が大きかったのが、円高で台湾生産にシフトしていた日系医療機器メーカーからの仕事が、2017年以降、円安を契機に生産が日本に引き上げられてしまったことだった。

さらにIPCの仕事も景気変動の影響を受けるようになった。そして昨年9月に起きた米中貿易摩擦の影響で、台湾のIT関連企業は大きな影響を受け、同社もその打撃を受けることになった。

これにより、2017年、2018年の業績は減収減益。しかし、MRT(地下鉄)駅構内に設置される宅配ボックスなど新規の仕事の受注に成功するなどして業績は上向くようになっており、2019年の業績は2014年と同水準にまで回復。米中貿易摩擦や半導体需要の落ち込みなどの懸念材料はあるものの、2019年上期の売上は前年同期比で10%ほど増加する見込みとなった。

朱総経理は「台湾は中国へ出荷するものが多いため、中国経済の影響は大きいです。そのため今年の上期の状況は非常に厳しい。下期には米中貿易摩擦の問題もある程度落ち着き、もう一度、景気は回復するだろうと言われていますが、6月以降どうなるかはまだわかりません。今は様子を見ている状況です」という。

  • 画像:「新しいビジネスにアンテナを張りチャレンジすべきだ」工業用コンピュータ(IPC)の組立工程
  • 画像:「新しいビジネスにアンテナを張りチャレンジすべきだ」組立中のモニターカバー

会社情報

会社名
岳峰工業有限公司
董事長
朱根皇
総経理
朱丞郁
住所
台湾・桃園市蘆竹区內厝街50号
電話
+886-3-322-2259
設立
1997年
従業員数
85名
主要製品
工業用コンピュータ筐体、ハードディスクユニット、鉄道機器カバー、電子設備関連商品、宅配ロッカー、船舶用機器関連、精密板金加工品など

つづきは本誌2019年5月号でご購読下さい。

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