Interview

日本ならではの食品機械を海外へ広める

お菓子の手づくり技術の機械化に取り組む

株式会社 マスダック 代表取締役社長 増田 文治 氏

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画像:日本ならではの食品機械を海外へ広める「全自動どら焼機」

和洋菓子製造機械メーカーの㈱マスダックは1957年の創業以来、和菓子や洋菓子などの「手づくり技術」を機械化することにこだわってきた。

1959年に開発された「全自動どら焼機」は同社を代表する食品機械で、どら焼きの焼成機では国内トップシェアを誇る。最近はどら焼きの中身もバラエティに富んでいる。同機は大量生産可能な「サンドイッチパンケーキマシン」として海外での販売も伸びている。また、海外では「スチーマー」で蒸されたケーキは「ヘルシーなケーキ」として人気が高い。最近ではスペイン、イタリア、トルコなどでスチーマーの販売が伸びている。2004年に、マスダックヨーロッパ(現:マスダックインターナショナル)を設立、2009年にはオランダで現地生産をスタートした。

マスダックの2017年3月期の売上高は、前期比6.2%増の132億円。売上の54%は「機械事業」で、売上高は71億円。そのうち、輸出が11億円程度(約16%)となる。売上の46%は「食品事業」で、同社の「ソフトムーンケーキライン」でご当地ブランドの蒸し菓子などをOEM生産している。

2014年3月には、「グローバル市場においてニッチ分野で高いシェアを確保し、良好な経営を実践している企業」として、経済産業省から「グローバルニッチトップ(GNT)企業100選」に選定された。「食品関連製造装置分野」からは、ほかの2社とともに選定されている。

同社はこれまで海外の展示会にも積極的に参加し、市場開拓に努めてきた。2002年、フランス開催の食品展示会「ユーロパン」に、2003年にはドイツで開催された世界最大の製パン・製菓機械展「iba2003」に単独出展した。近年は、2016年にシンガポールの「FHA 2016」、2017年には上海の「Bakery China 2017」などに出展している。

また、「食の安全・安心」を実現するため、2015年に食品事業部、管理本部、品質保証室で「FSSC 22000」を取得。リスクマネジメント体制の構築や従業員の食品安全意識の向上、統一された管理基準によるルールの徹底、社内プロセスの継続的改善などに力を注いでいる。

食品機械の業界団体、一般社団法人日本食品機械工業会(以下、日食工)の会員構成としては、年商1億円未満の企業が19%、年商10億円未満の会員企業が約70%となっている。その中で、年商100億円以上の同社は、業界トップ企業のひとつとして存在感を示している。

増田文治社長に食品機械業界の動向をお聞きした。

FOOMA JAPAN 2017のプレゼンス

画像:日本ならではの食品機械を海外へ広める増田文治氏

―6月に開催されたFOOMA JAPAN 2017は、出展者・来場者ともに過去最高となりました。食品機械の国内生産額についても、2年連続で5,000億円を超えるなど、食品機械業界は好調です。

増田文治社長(以下、姓のみ) おかげさまで今回のFOOMA JAPANは大変盛況でした。開催期間中は、経済産業省の糟谷敏秀製造産業局長と産業機械課の片岡隆一課長が来場され、業界関係者と親しく意見交換をされていました。日本の食文化に感動した訪日外国人の方々がリピーターとなって日本の食文化を求める、といったこともみられます。

ただ、課題もあります。「食の安全・安心」で食品安全システムを確立して、リスクマネジメント体制の構築や食品安全意識の向上、統一された管理基準によるルールの徹底、プロセスの継続的改善などを、業界で実現していかなければなりません。

厚生労働省は2013年10月、食品加工用機械について、新たな「改正労働安全衛生規則」を施行しました。これは、労働災害に占める発生件数の比率として、食品製造産業が44%と高く、年々その比率が上がってきたことが大きな要因でした。日食工でも、より安全・安心な食品製造を行うために、この法令を遵守する安全設計を行うとともに、食品製造業界のお客さまへの指導を徹底しています。

食品製造関係者のなかには、「手づくり」に対するこだわりを持つお客さまも多いです。そうした製造現場では、ミキサーで食材を攪拌しているプロセスに、作業者が「へら」で作業に加わる場合があります。その作業をしないと独特の味が出ないといわれます。中には、ガードやカバーを外して作業される。職人の「手づくり」へのこだわりが“売り”となっている菓子が多いことも事実です。

年商10億円の菓子メーカーが、150種類以上の和洋菓子を製造し、販売することなどはよくあることです。消費者の多様なニーズに応えるためには、多品種少量生産にならざるを得ません。そうした食品製造業界の現実と、食品機械メーカーの実情を関係省庁の方々にも理解してもらい、そのうえで対応していただきたい。そういう意味では、今回のFOOMA JAPANには主務官庁である経産省のトップの方々に業界の実態をご理解いただけた、プレゼンスを高める良い機会だったと思います。

  • 画像:日本ならではの食品機械を海外へ広める埼玉県所沢市にある㈱マスダックの本社工場
  • 画像:日本ならではの食品機械を海外へ広める「機械事業」の生産ライン

会社情報

会社名
株式会社 マスダック
代表取締役社長
増田 文治
住所
埼玉県所沢市小手指元町1-27-20
電話
04-2948-0161
設立
1957年
従業員数
268名
主要事業
和洋菓子製造機械の設計・開発、製造、販売、検査、据え付け、メンテナンスサービス、菓子の製造、検査、研究・開発
URL
http://www.masdac.co.jp/

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