金型交換の自動化で生産性向上を実現
「多品目一括金型段取り」で曲げ加工の処理速度を30%改善
新規・多品種少量・短納期に「アセンブリー生産」で対応
株式会社 北陽製作所
ステンレス製品が主の精密板金加工企業
㈱北陽製作所は、ステンレス製品を中心とした多品種少量生産・短納期対応を得意とする精密板金企業である。
同社は1974年、北原完治会長と大西清前社長が東京都昭島市で創業し、昭島市内の食品包装機械メーカーの協力会社として発展してきた。その後は三多摩エリアを中心に食品機械、計測機器、検査機器、空圧・油圧機器などの大手・中堅メーカーと取引を開始。昭島市内や隣接する立川市に工場を増設しながら、最新鋭の加工設備をいち早く導入することで事業を拡大してきた。
2005年、昭島市内の本社工場が手狭になったことで、埼玉県入間市に入間工場を新設。2015年には入間工場の隣地と工場建屋を取得し、昭島工場の設備を移転して、本社・工場を集約・統合した。
現在は、ものづくり一筋の生え抜きで製造系を担う篠原秀賢社長と、北原会長の長女で総務・経理・営業事務などの管理系を担う北原陽子専務が両輪となって、会社全体を盛り立てている。
新規・多品種少量・短納期に対応
現在の得意先は100社を超え、毎月定期的に受注するのは20~30社。売上構成は、異物検出装置が約30%、包装機械が10%超で、そのほか食品機械、医療機器、半導体製造装置などがそれぞれ数%から10%となっている。
加工材料はステンレスが60%を占め、SPCCやSPHCといった鉄系材料が40%。異物検出装置や包装機械を含め、食品製造ライン向けの製品が多いため、必然的にステンレスの割合が高くなる。中心的な板厚は1.2~3.0㎜で、板厚12㎜までは社内で対応している。
1カ月の受注件数(図面件数)は5,000~6,000件。このうち溶接を含むものは30~40%で、子部品を含めたパーツ品目数は月1万を超える。新規品の割合は約50%と高く、1カ月に2,500~3,000件、1日平均150件ちかくのプログラムを作成しなければならない。しかも平均ロットサイズは5個以下で、多品種少量生産の典型といえる。
さらに、極端な短納期対応も求められる。溶接まで含めて「納期3~4日はざら」(北原会長)、「今日中にほしい、明日までにほしいという依頼もよくある」(篠原社長)という。
高い新規品割合(50%)、多品種少量生産(ロット5個以下)、短納期(溶接込みで3~4日)という、どうしても人手に頼りがちな生産形態にあって、いかにして自動化・効率化を進めていくかが重要な経営課題だった。
HG-ATCと多品目一括金型段取りで多品種少量生産の効率化に挑む
2021年12月、自動化・効率化を推進するために同社が新たに導入したのが、自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATCだ。
篠原社長は「ATC(自動金型交換装置)付きのベンディングマシンが登場した当初は、それほど注目していませんでした。ロボットでなければ本当の自動化とは言えませんし、金型交換だけ自動化したからといって、投資額に見合った改善効果が得られるとは思えませんでした。分割金型による自由な金型レイアウトも、当社の場合は曲げ工程数4~6工程の製品が中心で、ステップベンドはあまり使わないので、効果は限られるだろうと思っていました」。
導入を決断したのは2020年、主要な設備更新が一段落したタイミングだった。同社の生産形態で自動化・効率化を進める方策を改めて検討したとき、HG-ATCと曲げ加工用CAM VPSS 3i BENDの「多品目一括金型段取り」が状況を打開する一手になるのではないかと期待した。
同社は短納期の仕事が多いため、ブランク工程は生産準備が最低限で、最短でアウトプットができる“プッシュ型”の生産方式を採用している。3台のブランク加工マシンを使って納期順・オーダー(機種)単位で加工し、機種ごとにまとめて曲げ工程へ受け渡す。当然、そこには板厚が異なる製品も混ざり込むことになる。
曲げ工程は、機種ごとのまとまりのまま加工するのであれば、頻繁に金型段取りを行わなければならない。逆に、金型段取りを少なくするのであれば、異なるまとまりから同じ板厚の製品をピックアップし、曲げ加工後に元のまとまりに戻さなくてはならない。このジレンマを解消するために、多品目一括金型段取りを活用することでアセンブリー生産(機種単位での加工)を採り入れることを考えた。
「板厚ごとに仕分けたりせず、台車に積み重なっているブランク材をそっくりそのままCAMで読み込んで加工できるようになれば理想的と考えました」と篠原社長は語っている。
会社情報
- 会社名
- 株式会社 北陽製作所
- 取締役会長
- 北原 完治
- 代表取締役
- 篠原 秀賢
- 専務取締役
- 北原 陽子
- 所在地
- 埼玉県入間市寺竹46-22
- 電話
- 04-2936-4360
- 設立
- 1977年(1974年創業)
- 従業員数
- 32名
- 主要事業
- 食品機械、異物検出装置、包装機械、医療機器、半導体製造装置などの精密板金加工全般
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