特集

金型交換の自動化で生産性向上を実現

「多品目一括金型段取り」で曲げ加工の処理速度を30%改善

新規・多品種少量・短納期に「アセンブリー生産」で対応

株式会社 北陽製作所

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画像:「多品目一括金型段取り」で曲げ加工の処理速度を30%改善2021年12月に導入した自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATC。「多品目一括金型段取り」により金型段取りの回数は1/2に減り、処理速度は30%向上した

ステンレス製品が主の精密板金加工企業

画像:「多品目一括金型段取り」で曲げ加工の処理速度を30%改善左から北原陽子専務、北原完治会長、篠原秀賢社長

㈱北陽製作は、ステンレス製品を中心とした多品種少量生産・短納期対応を得意とする精密板金企業である。

同社は1974年、北原完治会長大西清前社長が東京都昭島市で創業し、昭島市内の食品包装機械メーカーの協力会社として発展してきた。その後は三多摩エリアを中心に食品機械、計測機器、検査機器、空圧・油圧機器などの大手・中堅メーカーと取引を開始。昭島市内や隣接する立川市に工場を増設しながら、最新鋭の加工設備をいち早く導入することで事業を拡大してきた。

2005年、昭島市内の本社工場が手狭になったことで、埼玉県入間市に入間工場を新設。2015年には入間工場の隣地と工場建屋を取得し、昭島工場の設備を移転して、本社・工場を集約・統合した。

現在は、ものづくり一筋の生え抜きで製造系を担う篠原秀賢社長と、北原会長の長女で総務・経理・営業事務などの管理系を担う北原陽子専務が両輪となって、会社全体を盛り立てている。

新規・多品種少量・短納期に対応

現在の得意先は100社を超え、毎月定期的に受注するのは20~30社。売上構成は、異物検出装置が約30%、包装機械が10%超で、そのほか食品機械、医療機器、半導体製造装置などがそれぞれ数%から10%となっている。

加工材料はステンレスが60%を占め、SPCCやSPHCといった鉄系材料が40%。異物検出装置や包装機械を含め、食品製造ライン向けの製品が多いため、必然的にステンレスの割合が高くなる。中心的な板厚は1.2~3.0㎜で、板厚12㎜までは社内で対応している。

1カ月の受注件数(図面件数)は5,000~6,000件。このうち溶接を含むものは30~40%で、子部品を含めたパーツ品目数は月1万を超える。新規品の割合は約50%と高く、1カ月に2,500~3,000件、1日平均150件ちかくのプログラムを作成しなければならない。しかも平均ロットサイズは5個以下で、多品種少量生産の典型といえる。

さらに、極端な短納期対応も求められる。溶接まで含めて「納期3~4日はざら」(北原会長)、「今日中にほしい、明日までにほしいという依頼もよくある」(篠原社長)という。

高い新規品割合(50%)、多品種少量生産(ロット5個以下)、短納期(溶接込みで3~4日)という、どうしても人手に頼りがちな生産形態にあって、いかにして自動化・効率化を進めていくかが重要な経営課題だった。

  • 画像:「多品目一括金型段取り」で曲げ加工の処理速度を30%改善複雑形状やフレーム構造の製品は3次元モデルを作成する
  • 画像:「多品目一括金型段取り」で曲げ加工の処理速度を30%改善平板・パイプ・形鋼兼用ファイバーレーザマシンENSIS-3015RI。午前中は平板、午後はパイプ・形鋼、夜間は平板を加工する

HG-ATCと多品目一括金型段取りで多品種少量生産の効率化に挑む

2021年12月、自動化・効率化を推進するために同社が新たに導入したのが、自動金型交換装置付きベンディングマシンHG-1003ATCだ。

篠原社長は「ATC(自動金型交換装置)付きのベンディングマシンが登場した当初は、それほど注目していませんでした。ロボットでなければ本当の自動化とは言えませんし、金型交換だけ自動化したからといって、投資額に見合った改善効果が得られるとは思えませんでした。分割金型による自由な金型レイアウトも、当社の場合は曲げ工程数4~6工程の製品が中心で、ステップベンドはあまり使わないので、効果は限られるだろうと思っていました」。

導入を決断したのは2020年、主要な設備更新が一段落したタイミングだった。同社の生産形態で自動化・効率化を進める方策を改めて検討したとき、HG-ATCと曲げ加工用CAM VPSS 3i BENDの「多品目一括金型段取り」が状況を打開する一手になるのではないかと期待した。

同社は短納期の仕事が多いため、ブランク工程は生産準備が最低限で、最短でアウトプットができる“プッシュ型”の生産方式を採用している。3台のブランク加工マシンを使って納期順・オーダー(機種)単位で加工し、機種ごとにまとめて曲げ工程へ受け渡す。当然、そこには板厚が異なる製品も混ざり込むことになる。

曲げ工程は、機種ごとのまとまりのまま加工するのであれば、頻繁に金型段取りを行わなければならない。逆に、金型段取りを少なくするのであれば、異なるまとまりから同じ板厚の製品をピックアップし、曲げ加工後に元のまとまりに戻さなくてはならない。このジレンマを解消するために、多品目一括金型段取りを活用することでアセンブリー生産(機種単位での加工)を採り入れることを考えた。

「板厚ごとに仕分けたりせず、台車に積み重なっているブランク材をそっくりそのままCAMで読み込んで加工できるようになれば理想的と考えました」と篠原社長は語っている。

  • 画像:「多品目一括金型段取り」で曲げ加工の処理速度を30%改善焼け取り・洗浄を終えたステンレス製のホッパー
  • 画像:「多品目一括金型段取り」で曲げ加工の処理速度を30%改善RPAのフローチャート画面。AI-OCRとの組み合わせで受注登録や検収明細書との照合を自動化している

会社情報

会社名
株式会社 北陽製作所
取締役会長
北原 完治
代表取締役
篠原 秀賢
専務取締役
北原 陽子
所在地
埼玉県入間市寺竹46-22
電話
04-2936-4360
設立
1977年(1974年創業)
従業員数
32名
主要事業
食品機械、異物検出装置、包装機械、医療機器、半導体製造装置などの精密板金加工全般
URL
https://hokuyo-w.co.jp/

つづきは本誌2022年3月号でご購読下さい。

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