Interview

進化する「東京町工場ものづくりのワ」

IoTを活用したTIG溶接の技能伝承を実用化

株式会社 今野製作所 代表取締役 今野 浩好 氏

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画像:進化する「東京町工場ものづくりのワ今野浩好氏

㈱今野製作所は油圧機器事業、板金加工事業、エンジニアリング&サービス事業、福祉機器事業などを柱に事業を行っている。

そのうちのひとつを担う板金加工事業の2019年度の売上高は1億8,000万円。ステンレス加工を主体に、理化学分野、医薬品分野、大学の工学・物理・生物の各研究室向けや公的研究機関向けの機器・器具・装置などを受注設計生産している。また研究開発用の器具・治具などのオーダーメイドも行っており、設計業務を兼務するスタッフを含め10名の社員が対応している。

2011年からはNPO法人「ものづくりAPS推進機構」の東京都交流促進事業に参加し、法政大学デザイン工学部の西岡靖之教授の指導のもと、ITカイゼンに取り組んできた。西岡教授は、同社の今野浩好社長も理事を務める一般社団法人「Industrial Value Chain Initiative」(IVI)の発起人。ボトムアップ型アプローチによる「つながる工場」の実現を目指し、日本版Industrie 4.0の構築を目指している。

2013年からは同社を含む3社でプロジェクト「東京町工場 ものづくりのワ」をスタート。「業務プロセスの見直し」と「生産管理システムの開発」に取り組んだ。2014年からは、2年間にわたって企業間連携の実証実験「つながる町工場プロジェクト」を実施、不況に強い体質づくりにも貢献している。

今野社長に「東京町工場 ものづくりのワ」の活動と成果について話を聞いた。

イノベーティブな組織づくり

― 2011年以降、ドイツから発信された第4次産業革命「Industrie 4.0」への取り組みが始まりました。日本では経済産業省が「Connected Industries」を打ち出し、IVIなどが中心となって日本版Industrie 4.0を構築しようと活動しています。そうした状況で御社が参加している「つながる町工場プロジェクト」や「東京町工場 ものづくりのワ」の活動が注目されています。

今野浩好社長(以下、姓のみ) 2013年からスタートした「東京町工場 ものづくりのワ」は、足立区や江戸川区の町工場3社が結集し、ひとつの組織のように機能してイノベーティブな組織づくり、ものづくりを行うためのアライアンスを組み、生まれました。

2012年頃に㈱西川精機製作所(東京都江戸川区)西川喜久社長㈱エー・アイ・エス(同)石岡和紘社長と知り合い、勉強会や交流会を通して親しくなるうち、各社が若手の育成で悩んでいることを共有。そこで3社合同で技術講習会を開催することを決め、ベテランにも参加を呼びかけました。同業他社の社員が同じ場所で学ぶという、それまでにない挑戦でしたが、良い意味でのライバル心が芽生えたり、お互いのベテラン社員の技術に刺激を受けたりと、期待以上の手応えを感じました。

私は社員の変化に驚くとともに「教育以外にも連携が可能かもしれない」と思い、ふたりの経営者に話をしました。そうして発足したのが「東京町工場 ものづくりのワ」です。3社はいずれも板金・切削・溶接など金属加工を得意としていましたが、扱う分野がちがっていました。「環境変化が激しい中でどうしたら中小製造企業が生き残ることができるのか」「生き残るためには変化対応力を備え、高付加価値な製品を受注・製作する術を身に付けないといけない」という危機感のもと、各社がそれぞれの経験とノウハウを持ち寄り、ワンストップの高度なものづくりの実現を目指すことにしました。

当時の当社はアナログの職人型の板金工場。スペースは限られ、パンチングマシンやレーザマシンもなく、設備面では大きく後れを取っていました。そこでIoT技術を活用して3社が経験とノウハウを持ち寄り、ワンストップの高度なものづくりの実現を目指すことにしました。

― 3社が最初に手がけたのが「業務プロセスの見直し」と「生産管理システムの開発」ですね。

今野 そうです。連携したからといってすぐに生産性が向上するわけではありません。各企業が独自のやり方のまま、ただ集まっただけでは、かえって情報が混乱し、生産性が下がってしまいます。私たちが「連携する」と叫んでも現場の仕事はうまく流れない。そのため、まずは業務プロセスの見直しからスタートしました。

ノウハウが属人化しているため、担当者が休むと仕事が止まってしまうということが日常的にあり、技術・技能のデジタル化を進めることにしました。各社の仕事の流れ、受注から出荷、代金回収までの流れを整流化するために、生産管理システムを構築することにしました。

  • 画像:進化する「東京町工場ものづくりのワ生産管理システムContexerの現場端末から3次元モデルを呼び出す
  • 画像:進化する「東京町工場ものづくりのワIoTを利用した溶接訓練の様子。㈱エー・アイ・エスで運用中

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会社情報

会社名
株式会社 今野製作所
代表取締役
今野 浩好
所在地
東京都足立区扇1-22-4
電話
03-3890-3406
設立
1969年
従業員数
39名
主要業種
①油圧機器事業(自社ブランド「イーグル」の油圧ジャッキ、油圧爪つきジャッキ、油圧機器の設計製作)/②板金加工事業(クリーン環境のステンレス器具・備品のオーダーメイドサービス、研究開発機器・装置のプロダクトパートナー)/③受託開発事業(福祉機器などの開発・製造販売)
URL
http://www.bankin-order.com/

つづきは本誌2020年11月号でご購読下さい。

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