Interview

町工場が活きるビジネスエコシステムを再構築する

ローカルを突き詰めることで、グローバルにつながる

TOKYO町工場HUB 代表 古川 拓 氏

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画像:町工場が活きるビジネスエコシステムを再構築する古川拓氏

お家芸だったはずの「ものづくり」の領域でも、このところ日本は精彩を欠いている。とりわけ2017年以降に相次ぎ露呈した大手企業の品質不正の連鎖は収束する気配がない。この問題は一企業の問題では済まされず、グローバル市場におけるJapanブランドの信用失墜につながっている。

その大きな要因のひとつが現場力の低下である。日本のものづくりを支え、経済発展に寄与してきた中小零細企業は大きく減少し、熟練技能者の数も減り、これまで培ってきた技術・技能が伝承されないまま消失している。

東京都の統計によると、従業員数5名以上の製造に関わる事業所は、1990年には都内に4万社以上あったが、2020年には1万社を割り込んでいる。30年間で1/4以下に激減したことになる。

大手の発注元と中小の下請けというピラミッド構造は崩壊し、産業構造は大きく変化している。

かつての下請け企業は町工場ならぬ「待ち工場」として、発注元に言われるがまま「良い品物を、安く、早く」つくって納めれば成り立つ側面もあった。しかし、現在の工場経営はそれだけでは立ち行かない。培ってきた技術・技能と限られた資源を活用し、新たな企業価値を創造する必要に迫られている。

そんな中、「TOKYO町工場HUB」代表の古川拓氏は、各分野の専門家や企業をつなぐ仲介役として、町工場の技術力を生かした新たな事業展開による価値創造、ビジネスモデルの転換に挑戦している。足立区や葛飾区などの城東地区を中心に、業種・業態もさまざまな中小零細企業100社以上とネットワークをつくり、「ものづくりのエコシステム」の構築に取り組んでいる。また、「ものづくり」「まちづくり」「ひとづくり」の相乗効果による地域活性化にもチャレンジしている。

古川代表に中小零細企業の価値創造と付加価値の連鎖について話を聞いた。

銀行勤めから起業家へ ― 「技術によって社会の諸課題を解決したい」

― 古川様の経歴を簡単にご紹介ください。

古川拓代表(以下、姓のみ) 出身は千葉県です。京都大学法学部を卒業後、15年ほどメガバンクに勤め、バンカーとして仕事をしました。2004年に退社する前の10年間は米国で仕事をしていました。銀行退社後は、画像認識の研究開発を行うベンチャーを起業すると同時に、米国の投資ファンドの役員や財団の理事などを兼任し、国内外の幅広い事業のプロデュースに関わりました。

私が一貫して追求しているのは、「技術によって社会の諸課題を解決すること」です。新しい技術やビジネスモデルの社会実装に挑戦し、その現場に身を置いて模索を続けています。最先端のAI技術の開発に取り組みながら、南アジアやアフリカの国々の医療や教育、通信などの社会インフラのビジネス開発に力を注いできました。

画像:町工場が活きるビジネスエコシステムを再構築する「TOKYO町工場HUB」が掲げる「スタートアップのエコシステム」の概念

「小さいもの」が世界を変える時代へ

― 「TOKYO町工場HUB」をスタートするに至るお考えの変遷を教えてください。

古川 社会課題の解決に取り組む過程で、技術革新が世界のビジネスのあり方を大きく変えていることを肌で感じました。また、世界中で画期的なイノベーションを起こす人々に出会い、先進的な事業開発のアプローチを間近で見ることもできました。「小さいもの」が大きな力を持って世界を変えていく時代への変化です。社会を変える新しい価値創造のあり方に希望を見いだすようになりました。

翻って日本を見てみると、新しい社会やビジネス環境の変化に対応できていないように思います。海外にいると日本のものづくりの影響力が大きく下落していることを実感します。グローバル化の進展と過酷な国際競争の結果、東京の工場数も激減しました。

しかし、悪いことばかりではないと思っています。これまでメーカーの下で縛られていた制約が弱くなり、町工場は自由に動けるようになっています。激しい淘汰を生き抜いてきた町工場には価値があります。その価値を新しいグローバル社会の文脈で再評価し、価値創造の新しいエコシステムを構築しようと考え、2017年に「TOKYO町工場HUB」を始めました。

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会社情報

事業名
TOKYO町工場HUB
会社名
有限会社 KITEイメージ・テクノロジーズ
代表取締役
古川 拓
所在地
東京都葛飾区白鳥4-22-21-305
URL
https://tokyo-fabhub.com/

つづきは本誌2023年3月号でご購読下さい。

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