クラウドファンディングを活用し、自社ブランド商品を開発
目指すのは“モノ”と“コト”をつくるコンテンツ型企業
有限会社 日青工業
“モノ”と“コト”をつくるコンテンツ型企業を目指す
㈲日青工業は、モトクロスのプロライダーだった青木一郎社長が現役を退いた後、1989年に設立した精密板金加工企業。千葉との県境に近い茨城県稲敷郡河内町で、茨城・千葉・埼玉エリアを中心に事業を展開している。役員を含め総勢7名という規模ながら、理化学機器、配電盤・制御盤、照明、食品加工機、アミューズメント関連、建築、オフィス什器、設備時計など、多彩な仕事を手がけている。
その一方で、2013年頃から自社ブランド商品の企画開発・販売を本格的にスタート。異業種コラボよる家具ブランド「mills ends」を展開しているほか、新たに金属製蝶ネクタイ「Metal Butterfly」を開発し、今年5月に正式リリース予定。それに合わせてオリジナルの金属製アイテムを取りそろえたオンラインショップ「mechanical wonder」をオープンする計画だ。
旗振り役の青木恵之(しげゆき)専務は「シートメタルデザイナー」を標榜し、地元・茨城を中心に業種を問わず多種多様な人物たちと交流を重ねてきた。青木専務が掲げる経営理念は「Made in the Future」。目指すのは、「未来のあるべき姿を思い描き、その未来から今を見つめて、“モノ”をつくり“コト”をつくるコンテンツ型企業」だ。
雌伏10年 ― 家業の危機に触れ事業承継
青木専務は、首都圏の大学を卒業した後も東京・横浜にとどまり、映像業界で働くことを志した。しかし2002年、26歳のときに、家業である日青工業の主力得意先がITバブル崩壊のあおりを受けて連鎖倒産。折悪しく、同社はその前年に新工場を開設・移転したばかりで、業績が急激に悪化するなか、建物・設備の借入金の返済が重くのしかかっていった。
家業の危機を知った青木専務は「周囲に迷惑をかけるわけにはいかない。自分が後を継いで立て直せるかトライしてみよう」と事業承継を決意した。
それからは借入金の完済を目標に奮闘してきた。青木専務が入社した時点のメンバーは、青木社長夫妻、青木専務、アルバイトの女性の4人。青木専務は、パンチングマシンのオペレーションとプログラムを行いながら、新規得意先の開拓に力を注いだ。なかなか軌道に乗らず赤字経営が続くなか、2005年頃には主力のパンチングマシンARIESが経年劣化で復旧困難となり、パンチングマシンEM-2510NTをリースで導入。「借金を返すためだけに仕事をする日々でした」と青木専務は振り返る。
ところが入社から10年が経ち、EMがリースアップした2012年頃から、風向きが変わり始める。青木専務が独力で開設したWebサイトを通じて、新規の引合いが入ってくるようになった。キャッシュフローは改善し、徐々にではあるが、ようやく事業が軌道に乗り始めた。
それから7年。入社時点から現在までの間に、メンバーは4人から7人に、得意先社数は約10社から約50社に増えた。以前は板金サプライヤーからの横請けが多く、利益率が低いうえに安定していなかったが、今では90%以上がメーカーとの直接取引となっている。主要得意先は3社で、業種は食品加工機械、医療機器、設備時計(駅などに設置される大型の時計)。それぞれが売上の15~20%を占め、3社合計で50~60%。また、昨年5月頃から提携加工会社(パートナー企業)として取引を開始した受発注プラットフォームCADDiから受注する仕事が20%前後になった。
「ようやく経営が安定し、前へ進む余裕が生まれてきました」と青木専務は語っている。
会社情報
- 会社名
- 有限会社 日青工業
- 代表取締役
- 青木 一郎
- 専務取締役
- 青木 恵之
- 住所
- 茨城県稲敷郡河内町竜ケ崎町歩11-33
- 電話
- 0297-84-4533
- 設立
- 1989年
- 従業員数
- 7名
- 事業内容
- 各種産業用機器、建築内外装、店舗内装の精密板金加工/自社ブランド商品(蝶ネクタイ「Metal Butterfly」、家具ブランド「mills ends」)の展開
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