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「第10回 経営者フォーラム」開催

医工連携による医療現場向け商品の開発

M&Aにより開発からの一貫体制を確立

株式会社ニットー 代表取締役社長 藤澤 秀行 氏

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画像:医工連携による医療現場向け商品の開発講演中にウェアラブルチェアの装着・実演を行った

職業訓練法人アマダスクールが主催する「第10回 経営者フォーラム」が11月15日、FORUM246(神奈川県伊勢原市)で開催され、㈱ニットー(神奈川県横浜市)の代表取締役社長・藤澤秀行氏「医工連携による医療現場向け商品の開発~M&Aにより開発からの一貫体制確立~」と題して講演を行った。

㈱ニットーは1967年の創業以来、自動車や電機向けの金型製造を手がけてきた。2004年以降は、事業継続が困難となっていた量産プレス加工企業(2004年)、アルミの板金・溶接を手がける企業(2005年)、厚板のプレス加工企業(2008年)をM&Aで取得し、失われようとしている加工技術・ノウハウ・得意先を継承した。それとともに、設計・試作・試作品検証・量産検討・金型製作・量産品検証・品質管理・量産にトータルで対応できる体制を構築し、得意先メーカーのパートナー企業として存在感を高めてきた。

2012年からは自社製品の企画・開発・製造・販売にも取り組みはじめ、「ヌンチャクケース」の愛称で知られる「iPhone Trick Cover」(iPhoneケース)をリリース。さらに、千葉大学との医工連携により医療現場向けウェアラブルチェア「archelis(アルケリス)」を開発した。

「iPhone Trick Cover」は、中小企業が自社製品にクラウドファンディングを活用した日本初の事例として注目された。また、どちらの製品も、開発段階からWebなどで情報を公開する「公開型製品開発」(オープンイノベーション)の手法を採っていることも特徴だ。

また、横浜青年経営者会(青経会)のメンバーを中心としたものづくり企業10社とデザイナーとのコラボで「ヨコハマメーカーズヴィレッジ」(YMV)というブランドを立ち上げ、イタリアで開催される世界最大規模の家具・デザインの見本市「ミラノ・サローネ」に共同出展するなど、活躍の場を広げている。

以下、藤澤社長の講演から、M&Aによる一貫生産体制の構築と自社製品の展開に関する部分を抜粋して紹介する。

M&A(企業買収) ― 5年間に3回実施

画像:医工連携による医療現場向け商品の開発藤澤秀行氏

私は横浜生まれの横浜育ち。2代目社長として、父が創業した㈱ニットーを継いだ。当社のメインはプレス金型の製作で、そこから少しずつ仕事の幅を広げてきた。現在では「金型」「プレス加工」「機械加工」「治工具・設備」と4つの部門がある。

当社のターニングポイントとして「M&A(企業買収)」「工場集約」「自社製品」の3つを挙げたい。

これまでに3回、M&Aをした。最初は2004年。当時、私は専務だった。当社が金型を納めているプレス加工企業、㈱伏見製作所の事業を引き継いだ。伏見製作所は当時約60年の歴史があり、社員は15人くらい。社長は当時70歳くらいで、病に倒れて仕事を続けられなくなった。社長の奥様が、慣れない経営と社長の看病をしている状況で、私の父に「会社を引き継いでくれないか」と相談があった。

そのときの私の気持ちは「猛反対」だった。当時の伏見製作所は業績が良くなかった。借金も多く抱えていた。「今後、自分がニットーを引き継がなくてはいけないのに、なぜ借金のある会社を吸収しなければいけないのか」と思った。しかし父は悩んだすえ、「困っている人を助けよう」という思いで事業を引き継ぐ決断をした。

  • 画像:医工連携による医療現場向け商品の開発「iPhone Trick Cover」の開発にあたり、クラウドファンディングを活用して資金調達・マーケティング・プロモーションを同時に行った
  • 画像:医工連携による医療現場向け商品の開発3次元CADでウェアラブルチェアの設計を行う藤澤社長

中小製造業にとってのM&Aのメリット

全株式を買い取り、私が伏見製作所の代表取締役に就任した。当時の私はニットーの専務として、若輩ながら「改革しなくてはいけない」と考えていた。伏見製作所の経営も「任されたからには」と一生懸命に取り組み、1年ほどで業績が回復してきた。

そのとき私は「M&Aは中小製造業にとって非常にメリットがある」と感じた。

買収される会社の社員は、雇用が継続される。お客さまは、取引を継続できることで部品供給が滞らずにすむ。経営者は経営を引き継いでもらうことで安心してリタイアできる。伏見製作所の場合は奥様が社長の看病に専念できるようになった。

そして買収する企業 ― 当社にとっては「短期間の工場設備の増強、技術拡大、販路拡大」というメリットがあった。製造業で新しい事業を興そうとすると、「設備」を買い、「技術者」を育て、「お客さま」を見つけなくてはならない。M&Aは、それらを短期間どころか一瞬で手に入れられる。

2005年にはアルミの板金・溶接を手がけていた㈲田辺製作所を合併し、2008年には厚板のプレス加工を行っていた㈲小池慎一製作所を買収した。3社とも横浜市金沢区に立地し、後継者がいない会社だった。10年以上前のことだが、当時も今も中小製造業は後継者難に悩まされている。中小製造業は親族が引き継ぐかたちが多いが、そうではないかたちもあって良いのだと思った。

もっと言うと、日本という国は、資源がないなか、ものづくりによって高度成長を遂げてきた。ものづくりのノウハウこそが日本の資源だと考えれば、そのノウハウが失われないように引き継ぎ、次代へつなげていくことも、われわれのような若手経営者の役割ではないかと思っている。

画像:医工連携による医療現場向け商品の開発ブランド価値を高める手法

プロフィール

藤澤 秀行(ふじさわ・ひでゆき)
1973年生まれ。1995年、横浜国立大学工学部(当時)卒業後、日本発条㈱に入社。1997年、㈱ニットーに入社。2004年、31歳でM&Aにより取得したグループ会社の代表取締役に就任。2006年、33歳で㈱ニットーの代表取締役社長に就任(現職)。現在46歳。
※千葉大学フロンティア医工学センター特別研究員

つづきは本誌2020年1月号でご購読下さい。

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