Interview

外国人材が60%を占める板金工場

「技能実習」と「特定技能」の制度を活用

株式会社 タシロ 代表取締役社長 田城 裕司 氏

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画像:外国人材が60%を占める板金工場田城裕司氏

少子高齢化と人口減少が急速に進み、製造業は十分な人材が確保できなくなっている。そうしたなかで政府は2019年4月より、「素形材産業」を含む14業種※に限定し、外国人の就労を認める新たな在留資格制度を創設した。

創設された在留資格には「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類がある。「特定技能1号」は、特定産業分野において相当程度の知識、または経験を持つ外国人に向けた在留資格で、来日してから特別な育成や訓練を受けることなく、すぐに一定の業務をこなせる水準であることが必要となる。「特定技能1号」の在留資格で来日するには、「技能実習2号」を修了した者、もしくは日本語スキルに加え、仕事に関する知識・経験に関しての試験に合格することが必要となる。現状では特定技能評価試験の実施国は、特定技能の2国間協定を締結している12カ国に限定されている。

「特定技能2号」は、「特定技能1号」の修了者が望んだ場合に、次のステップとして用意されている在留資格で、今のところ2021年度に「建設業」と「造船・舶用工業」の2業種で試験をスタートする予定となっている。

政府は2019年度に最大4万7,550人、5年間で最大34万5,150人の受け入れを見込んでいたが、2019年末時点で「特定技能1号」の就労者は1,621人にとどまっている。

そうしたなかで㈱タシロでは、外国人技能実習生として同社で3年間就労し、帰国していた中国人1名、ベトナム人2名の計3名を「特定技能1号」として受け入れている。技能実習生9名と合わせて同社の外国人材は計12名となり、同社の就業者全体の60%に達した。田城裕司社長に、外国人材を受け入れる狙いについて聞いた。

※14業種:介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

外国人材が60%を占める板金工場

― 今回、「特定技能1号」に該当する3名を受け入れ、外国人材が全体の60%を占めることになりました。

田城裕司社長(以下、姓のみ) 当社は以前から毎年3名ずつ、外国人技能実習生を受け入れてきました。当初は中国人が中心でしたが、数年前からはベトナム人に変わり、今は9名の技能実習生がいます。

これまでの入国管理制度では、技能実習生の在留期限は職種によって、最長3年もしくは5年。日本語に慣れ、これから戦力として働いてくれる頃に帰国してしまいます。

彼らは来日する前に日本語教育を受けてきますが、それはあくまで最低限の会話能力で、日本語で仕事を教えるのは大変です。そのため当初は、曲げ加工のようなスキルが必要な仕事よりも、バラシ、バリ取り、簡単な溶接作業などに従事してもらうことが多くなります。

その後、仕事に慣れていくうちに、溶接作業が上達したり、曲げ加工にチャレンジしたりする実習生も出てきます。彼らの中には、3年間で数百万円貯金し、帰国してから家を購入したり、子どもを全寮制の学校に通わせたりと、“夢”を実現させた人もいます。

しかし、力をつけてきた頃には在留期限の3年が経過して、帰国してしまう。彼らも、技能実習生を積極的に受け入れている韓国や台湾のように10年くらいは働きたいという気持ちを持っていることが多いのですが、これまでの日本の制度ではかないませんでした。

2019年4月に新設された「特定技能1号」の在留資格で来日すれば、さらに最長5年間は働けます。これまで当社で技能実習生として働いたことがある人材に、さらに5年間働いてもらえるなら、当社にとっても助かります。

画像:外国人材が60%を占める板金工場「特定技能1号」の在留資格で勤務する外国人材。左から中国人の姜鵬さん、ベトナム人のチャン・ヴァン・ズオンさん、ファム・ドゥック・ヒエンさん

「特定技能」の入管申請は神奈川県第1号

― 「特定技能」で外国人材を受け入れた事例は、まだ多くありません。もう少し経緯を教えてください。

田城 この制度が始まることを知り、技能実習生として当社で働いていた中国人の姜さん、ベトナム人のチャンさん、ファムさんに声をかけたところ、再び働きたいという希望を持っていました。

まずは姜さんについて、「技能実習2号」の修了経験を条件に、昨年5月30日、東京出入国在留管理局横浜支局に「特定技能1号」での就労許可申請を行いました。驚いたことに、当社の申請が神奈川県第1号でした。ただ、許可が下りるまでに時間がかかりました。昨年12月に入ってようやくすべての手続きが完了し、今年2月に来日できました。

ベトナム人の2名は、昨年11月に「技能実習2号」を修了し、2カ月間の帰国を経て、今年1月に「特定技能1号」の在留資格を得て再来日しました。

3名のうち2名は溶接作業に従事してもらい、ファムさんにはCAD/CAMを習得してもらって展開・プログラムに携わってもらっています。ファムさんは技能実習生の時に曲げ加工を経験していて、干渉せずに曲げるにはどのように展開したら良いかといったことまで配慮でき、助かっています。

これからの中小製造業は、人手不足に対応するために「技能実習」と「特定技能」の制度をうまく活用していくことが必要だと思います。

画像:外国人材が60%を占める板金工場「技能実習」と「特定技能1号」のちがい

会社情報

会社名
株式会社 タシロ
代表取締役社長
田城 裕司
住所
神奈川県平塚市入野284-1
電話
0463-31-7118
設立
1971年
従業員数
20名(外国人材12名)
主要製品
歯科治療用の椅子、食品製造装置のシュートやホッパー、一般産業機械のブラケットやカバー類、新幹線車両、レース用オートバイの部品加工、介護用自動車部品
URL
http://www.tasiro.co.jp/

つづきは本誌2020年6月号でご購読下さい。

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