「企業は継続を目指さなければならない」
32歳で社長就任―JMC同期生や地域の先輩経営者との交流を通じて成長
株式会社 共進 代表取締役社長 伊藤 潤一 氏
サラリーマンから経営者へ
代表取締役社長の伊藤潤一氏
現在39歳の伊藤潤一社長は「経営者になってからの体験は、何もかもが人間として大きく成長させてくれる貴重なものでした」と感慨深げに語っている。
カーボンの素材メーカーに勤めていた伊藤社長は2002年、25歳のときに、㈱共進・森永治会長（当時社長）の三女で、現在は同社の取締役管理部長を務める伊藤こずえさん（旧姓・森）と結婚した。森会長の長女・次女はすでに結婚しており、会社は後継者不在の状況だったが、伊藤社長は当初、義父の会社を継承する考えはなかった。
ところが伊藤社長は、長女が生まれるタイミングに合わせて一念発起し、事業継承を決意。結婚から2年後の2004年、27歳のときに同社に入社した。
伊藤社長は「私が勤めていたメーカーは中堅企業で、基本的に週休2日。一方、共進はまだ従業員5～6人で、義父（森会長）はほとんど休みも取れない状況でした。ですから週末に妻の実家へ遊びに行っても、義父は仕事で不在。お客さまのところへ納品にいって夜中に帰宅するのを、私はお酒を飲みながらのんびり待っている。義父の奮闘ぶりを横目に見ながら『これはいつまでもただ見ているわけにはいかない』と思うようになりました」と振り返る。
左：プログラム室。生産管理（手前）、設計・プログラム（奥）を担当している／右：同社で作成した自動はんだ付け装置の3次元モデル
JMC受講、同期生との交流で刺激
伊藤社長は2004年8月に共進に入社し、その2カ月後の10月には、職業訓練法人アマダスクールが主催するJMC（経営後継者育成講座）を受講した。
「会長に勧められて受講した格好です。最初に受講料を聞いたときは『そんなにかかるなら受講しなくても良いのに』と思いましたが、振り返ってみると、安いものだったと思います。私が受講した91期は、私を含め受講生が9人いて、賑やかでした。中でも㈱コプレック（静岡県）の小林永典社長と㈱ナカジ（東京都）の中島亮社長は当時からパワーがあり、刺激的でした。おふたりには今でも良くしてもらっています」。
伊藤社長は入社2カ月目。それに対してほかの受講生はもともと家業の継承者という立場だったこともあり「私にとっては教えられることばかりだった」と伊藤社長は言う。
「コプレックの小林社長からは『本くらい読んでおいた方がいい』と、三枝匡さんの『V字回復の経営―2年で会社を変えられますか』を紹介してもらいました。この本がとにかくおもしろくて、それ以来、いろいろな書物やセミナーを通じて勉強をするようになりました」。
JMCは前期・後期合わせて22日間の全寮制集中教育。寮で夜に同期の面々と酒を酌み交わしながら話したことは、今でも印象深く残っている。
「打ち解けてくると、最初は父親や会社、社員に対する愚痴が始まります。しかし時間をかけてお互いに愚痴を吐き出していくと、今度は自分の立場を客観視できるようになって、『本当にその人たちが悪いのか』『自分の能力がないだけなんじゃないのか』と冷静に考えられるようになっていきます。そして最後の最後には、カタチはどうあれ、今まで会社を存続させてきたというだけで今の社長には実績がある、そのことにまず感謝をしなければいけない、と考えるようになる。この感謝の気持ちは、その場にいた全員に共通の認識だったと思います」。
印象的だったカリキュラムについては「マネジメントゲームです」と即答した。
「ゲームを通じて経営体験ができるというものですが、決算書が読めるとか数字を理解できるといったこと以上に、現状を把握し、課題を認識し、戦略を練り、経営計画を策定し、意思決定を行う、という経営の基礎を擬似的に経験できたことが、とても勉強になりました。今では当社の工場長にも、別のセミナーでマネジメントゲーム研修を受けてもらっています」。
レーザマシンFO-3015NT（4kW）
溶接組立工程
会社情報
- 会社名
- 株式会社 共進
- 代表取締役会長
- 森 永治
- 代表取締役社長
- 伊藤 潤一
- 住所
- 福島県いわき市小川町西小川字北反3
- 電話
- 0246-83-2627
- 設立
- 1991年
- 従業員数
- 24名
- 事業内容
- 自動はんだ付け装置などの設計・製作／板金加工、機械加工、焼付塗装、表面処理
つづきは本誌2016年8月号でご購読下さい。