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第三者承継をきっかけに板金企業と宇宙スタートアップが「共創」

グループシナジーで未知の領域へ進出 ― 新たな成長フェーズへ

株式会社 渡辺工業

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画像:第三者承継をきっかけに板金企業と宇宙スタートアップが「共創」計5台のベンディングマシンが並ぶ曲げ工程。曲げ長さ3mまで対応する

第三者承継をきっかけに新たな成長フェーズへ

画像:第三者承継をきっかけに板金企業と宇宙スタートアップが「共創」2025年4月に後継社長に就任した福田泰幸社長

茨城県筑西市に拠点を構える㈱渡辺工業は、中小企業投資を専門とする投資会社による第三者承継をきっかけに、新たな成長フェーズへと踏み出した。

日本のものづくりを支える多くの中小製造業が、経営者の高齢化と後継者不在という課題に直面し、すぐれた技術を持ちながら廃業の危機に瀕している。そうした中、同社は経験豊富な経営者の招聘と、投資会社の伴走支援により、長年培ってきた技術・技能を散逸させることなく新たな市場へと適応させた。こうした同社の取り組みは、第三者承継という選択肢のひとつのロールモデルとして注目されている。

廃業の危機から投資会社による事業承継を選択

同社は1975年に渡邊研一前社長が夫人とともに創業し、半世紀にわたって地域のものづくりを支えてきた。創業当初は小型プレス機と溶接機のみ。その後はベンディングマシンやパンチングマシンを順次導入し、薄板精密板金部品の一貫生産体制を構築して、事業を拡大していった。

しかし、後継者の不在に加え、渡邊前社長の病気の再発により、事業継続が困難となった。当初から「従業員とその家族を何よりも大切にする」という方針を徹底してきた渡邊前社長夫妻は、「会社をたためば、長年支えてくれた従業員やその家族、お客さまに多大な迷惑をかけてしまう」という危機感から、第三者承継の道を模索し始めた。

渡邊前社長は、知人の紹介で中小企業投資を専門とする投資会社NYC㈱を知り、交渉を重ね、2023年10月に全株式を譲渡した。NYCは、投資家から資金を募るファンドとは異なり、自己資金を活用した「自己勘定投資」(プリンシパル投資)を行うのが特徴。自由度が高く、保有期間の制約もないため、投資先企業の意向に寄り添った支援を行える体制が、事業の存続を願う渡邊前社長の琴線に触れた。

2025年1月、NYCを通じて渡辺工業の後継社長として迎え入れられたのが、福田泰幸社長だった。福田社長は板金加工業界の営業責任者として20年以上の実務経験があり、北関東から長野県に至るエリアで精力的に活動してきた。加工技術にも精通し、大手建設機械メーカーなど多くの優良顧客を開拓した実績を持つ。職人気質の渡邊前社長からは「自分にはない圧倒的な営業力・人脈・知識を持っている」と信頼を寄せられ、入社してからわずか3カ月後の2025年4月に2代目社長に就任した。

画像:第三者承継をきっかけに板金企業と宇宙スタートアップが「共創」超小型人工衛星の通信性能を検証するための「試験用通信機パーツ」の試作品。左は筐体の上下にビス止めで取り付けるフタ(アルミ・板厚2.5㎜)。中央は16パーツで構成される溶接構造の筐体(アルミ・板厚2.5㎜)。右は社内で製作した仮止め用の溶接治具

新体制のもと社内改革と事業拡大を加速

福田社長の就任後、渡辺工業はNYCの伴走支援を受けながら、社内改革と事業拡大を加速させた。

工場の工程間コミュニケーションが不足していたため、毎週末の工程会議ですり合わせを行うなど組織設計を実施。意思決定体制も、オーナー社長が単独で判断する従来の方式から、部長以上の役職者が参加する経営会議で決定する仕組みへと移行した。

また、財務会計システムと顧問税理士を刷新し、月次決算の早期化・省力化をはかるとともに、予実管理を採り入れ、予算の策定と実績との比較・分析をタイムリーに行うようになった。勤怠管理システムや図面管理システムの導入、電気事業者の見直しによる電気料金の削減にも取り組んだ。

さらに、Webサイトをリニューアルし、2カ月ごとにコンテンツを追加。2025年6月には金属加工業界の専門商社として設立された「NYC Metal」が取りまとめるかたちで、グループ3社で展示商談会に共同出展した。いずれも大きな効果があり、新規顧客の獲得につながっている。

福田社長は、2025年1月に入社してから現在までの1年強を振り返り、次のように語っている。

「非常に密度の濃い1年でした。ただ、この間に取り組んだこと、実現できたことは、決して私ひとりの力によるものではありません。NYCのサポートは大きく、渡邊前社長が育て上げてきた良質な企業風土や従業員にも恵まれました。新体制に対する従業員からの反発は、ほとんどありませんでした。不安の方が大きかったのだと思います。私もサラリーマンでしたから、できるだけ従業員の気持ちに寄り添いながら、施策を進めることを心がけました。同行してもらったり、意見を求めたり、責任を分かち合いながら巻き込むことで『自分たちでやっていくのだ』という自覚と自信が芽生え、一気に会社がまとまっていきました」(福田社長)。

  • 画像:第三者承継をきっかけに板金企業と宇宙スタートアップが「共創」「試験用通信機パーツ」のアルミ製の筐体はハンディファイバーレーザ溶接機FLW-1500MTで接合した
  • 画像:第三者承継をきっかけに板金企業と宇宙スタートアップが「共創」「試験用通信機パーツ」の電磁波漏れを検証する宇宙スタートアップKick Space Technologies㈱の佐藤凛社長(左)と岩木優介さん(右)

会社情報

会社名
株式会社 渡辺工業
代表取締役
福田 泰幸
所在地
茨城県筑西市井上1162-1
電話
0296-37-5746
設立
1989年(1975年創業)
従業員数
22名
主要事業
照明器具・産業機械・工作機械・建設機械・商用車・特殊車両・航空宇宙機器などの精密板金加工・溶接
URL
https://watanabe-kg.co.jp/

つづきは本誌2026年5月号でご購読下さい。

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