「デジタル」と「グリーン」 ― 成長市場に対応する板金加工
2024年の創業80周年にむけ、企業体質強化を進める
5G、EV急速充電器、半導体製造装置、ホームドアの仕事が順調
三光産業 株式会社
5G基地局用電源装置の筐体はアルミを接着とリベットで接合し組立を行う
三光産業㈱は、移動体通信基地局向け電源装置の設計・製作・組立、EV充電器などの板金筐体、半導体製造装置、ホームドア関連などの板金製品を手がけている。自社開発したバリ取り機「バートル」「ハンドリング・バートル」の製造・販売も行っている。
基地局向けの電源装置は、昨年から始まった5G向けが順調だ。中でも、アルミニウム合金板の表面に化成皮膜処理し、合成樹脂塗料を焼付塗装したプレコートメタル(カラーアルミ)を使った防水対応の屋外用筐体が好調。アルミ筐体は接着とリベットによる接合を採用し、溶接レスを実現している。
また、銅バー(銅帯)を含めた各種部品の加工から組立配線、防水検査、物流までの一貫体制を確立するなど、完成品メーカーとしてさらなる顧客満足度の向上を目指している。
5G、EV充電器、半導体製造装置、ホームドアなどの受注動向と、2024年に80周年をむかえる同社の展望について、堀武美社長に話を聞いた。事業後継者である製造部の堀武大部長と、堀部長を支える営業部の外山政彦部長も同席してのインタビューとなった。
左から順に堀武大部長、堀武美社長、外山政彦部長
付加価値生産性20%改善で減収増益
― コロナ禍による仕事への影響はいかがですか。
堀武美社長(以下、姓のみ) 世界的に移動が制限され、供給が滞った影響などにより、2020年度の売上は前期比マイナスになりました。しかし、2018年から取り組んできた工程間のムダ取りを強化し、付加価値生産性20%改善を目標に取り組んだ結果、増益になりました。
2020年8月以降、受注状況は改善してきています。今期中にコロナ以前の数字に戻ることを期待しています。当社の売上の70%弱を占める移動体通信基地局関連のほか、EV充電器関連も上向きです。また、2年半前から始まったホームドアの仕事が予想以上に好調です。設計・開発段階からの提案と対応を高く評価していただきました。
3年前から取り組んでいる半導体製造装置も好調で、増産となっています。四半期ごとに発注量が伸びている状況で、しばらくは右肩上がりで伸びていくと思います。
― 好調な理由は、設計・開発段階からの提案ですか。
堀 一貫受注をするためには提案が欠かせません。2年前から設計・開発に関わる生産技術部門に5名のスタッフを増員しました。優秀な外国人エンジニアもいて、彼らの活躍にも期待しています。
ファイバーレーザ複合マシンACIES-2512T-AJの月間の平均稼働率は97%
HDS-1303NTによるホームドアパネルの曲げ加工(本社工場)
5G用電源装置の筐体にカラーアルミの接着・リベット構造を採用
― 移動体通信基地局の電源装置の仕事が順調のようですね。
堀 当社が生産している5G基地局用電源装置は屋内用と屋外用があり、屋外用が月産で200~250台といったところです。数年前からキャリア各社が環境負荷低減の一環として、電気の変換回数を削減できる切り替えも行われています。5G以外の機種も生産しており、キャリア向け装置は全体で月産1,000台以上になります。
5G対応の屋外設置用電源装置は耐候性 ― 特に防アルミの薄板では、強度や耐震性を十分に確保できるかという課題もありました。
そこで、筐体外箱をカラーアルミの1.0㎜で製作し、内張りなどで補強することで、強度や耐震性を向上させました。ただ、カラーアルミの1.0㎜をファイバーレーザで加工するのは難しく、ほとんどはパンチングで加工しています。レーザ溶接もできないので、接着とリベットで対応しました。
電源装置は2段構造となっており、側板・底板・天板・扉・中板などは4´×8´のシート材にネスティングし、曲げ加工と接着・リベットで組み立てています。散水試験を自動的にできる試験室も設置しました。
とはいえ、すべてがカラーアルミというわけではなく、コストが安いZAMを使う場合もあります。
左:溶接ロボットによる基地局電源用筐体の溶接/右:溶接後の研磨作業をロボットで自動化している
会社情報
- 会社名
- 三光産業 株式会社
- 代表取締役
- 堀 武美
- 所在地
- 埼玉県入間郡越生町越生東3-11-2
- 電話
- 049-292-3232
- 設立
- 1947年
- 従業員数
- 160名
- 主要製品
- 携帯電話基地局向け電源装置、ホームドア、半導体製造装置、EV用充電器、大型消火器などの板金部品
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