「女性視点での板金加工品」―今までなかった価値を創造
自社ブランド「三代目板金屋」を立ち上げる
株式会社 山崎製作所 代表取締役社長 山崎 かおり 氏
自社ブランド「三代目板金屋」より発売した新商品「KANZASHI」。開設したオンラインショップにも次々と注文が入っている
㈱山崎製作所は3月15日、新商品「KANZASHI」を自社ブランド「三代目板金屋」より発売した。繊細なデザインと実用性を兼ね備えた「KANZASHI」の企画・開発は、山崎かおり社長を含む4名の女性社員で構成する「なでしこ板金部隊」が担当。これまで男性の視点で進められてきた板金加工品の開発の世界に、女性の視点や感性を吹き込もうとしている。
「三代目板金屋」の取り組みは、ブランドマネジメントの点でもユニークだ。手がける製品には、「女性」「板金」「和」というコンセプトとモダンなデザインが融合しており、それをWeb・ブログ・SNSなどで広く発信。販売はセレクトショップや百貨店などを中心に行っている。
一方、本業である受託加工の事業も着実に拡大。同社は2015年10月に医療機器メーカーの製造支援を行うことを目的に発足した医療産業クラスター「SPメディカルクラスター」(静岡県)の参加メンバーの1社で、大学や病院との医工連携を進めている。
同社は今でこそ意欲的な取り組みを進める企業として注目されるが、一時期は瀕死の状態に陥るなど、これまでの道のりは平坦ではない。2代目経営者の山崎かおり社長に、これまでの取り組みと今後の展望について聞いた。
瀕死の状態から会社を再生
山崎かおり氏
―意欲的な取り組みを次々進める御社は、多方面から注目される板金企業です。しかし、2代目経営者に就任した当時(2009年)は、大変だったと聞いています。
山崎かおり社長(以下、姓のみ) 先代である父から事業を継承した当時、リーマンショックの影響で売上は大幅に減少していました。老朽化した設備の更新もままならず、倒産も頭をよぎるような状態で、社内には重たい空気が漂っていました。社員間のコミュニケーションもほとんど途絶えており、当時は瀕死の状態でした。
社員のみんなに下を向かせてしまっているのは経営者の責任です。社員の雇用を守り、前を向きながらイキイキ働いてもらう環境を整えるのは経営者の義務です。
社長に就任して固く決意したのは「山崎製作所を景気に左右されない企業にする。会社を絶対再生させる」ということでした。
パンチ・レーザ複合マシンLC-2012C1NT
ベンディングマシンHD-1303NT
―会社再生のため、どういった取り組みをしたのですか。
山崎 コミュニケーション不足が深刻だったので、全社会議をはじめました。社員同士が顔を突き合わせる機会を設け、1人ひとりが何を感じ、どういう会社にしていきたいと思っているのか、そしてそのなかで自分はどう成長していきたいのか、といったことを話し合いました。
これまで社内会議をほとんどしてこなかったので、最初はみんな戸惑いもあったと思いますが、次第にぽつりぽつりと考えを話してくれるようになりました。社員間での話し合いが活発になったあとは、経営理念を社員全員で構築しました。今年1月から掲げている経営理念は、昨年の全社会議でまた新しく決めたものです。
人材育成を行う際には、画一的に進めるのではなく、1人ひとりに焦点を当てることを意識しています。自身が進んでいきたいことと、会社がどの方向に向かおうとしているのかについて意思疎通を図り、みんなが同じ目標に進んでいけるよう気を配っています。
熟練職人による曲げ加工
同社で製作した焼却装置関連の部材
会社概要
- 会社名
- 株式会社 山崎製作所
- 代表取締役社長
- 山崎 かおり
- 住所
- 静岡県静岡市清水区長崎241
- 電話
- 054-345-2186
- 設立
- 1967年
- 従業員
- 23名
- 業種
- 工作機械関連のカバー・架台・フレーム、制御盤関連、医療機器関連、建築関連など
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