特集

第35回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その1)

アートの工法提案へ向けた実験作 ― 「ハイドロフォーミング」を採用

「バルーン」が「神奈川県知事賞」を受賞

大田産業 株式会社

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画像:アートの工法提案へ向けた実験作 ― 「ハイドロフォーミング」を採用「神奈川県知事賞」を受賞した大田産業㈱の「バルーン」(SPHC・板厚1.6㎜、W300×D150×H500㎜)

ハイドロフォーミングで製作した「バルーン」

画像:アートの工法提案へ向けた実験作 ― 「ハイドロフォーミング」を採用太田勝久社長

「第35回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「造形品の部」に出品した大田産業㈱の「バルーン」が「神奈川県知事賞」を受賞した。同賞は「将来の製品化に期待が持てるアイデアや考え方、技術・技能が含まれている作品」に贈られる。

この作品はSPHC・板厚1.6㎜から切り出したハート型のブランク材2枚を重ね、外周の端面を溶接した後、内面に高圧の水を流し込む「ハイドロフォーミング」(液圧成形)の工法によって成形している。一般的なプレス成形とは異なる塑性加工技術を板金加工プロセスに採り入れた発想と、今後さまざまな形状への適用が期待される点が評価された。

同社は、リーマンショック後から毎年のように板金フェアに参加するようになり、第31回(2018年度)のときには出品回数が10回を数えた企業に贈られる「特別奨励賞」を贈られた。

同社が出品する作品は基本的に、顧客から与えられた技術的な課題に取り組む過程や、太田勝久社長の自発的な技術開発の過程で生み出されており、実験的かつ挑戦的な要素が含まれていることが多い。今回の「バルーン」も顧客から示された課題に対応するため、同社にとって未知の工法であるハイドロフォーミングを採り入れた。

画像:アートの工法提案へ向けた実験作 ― 「ハイドロフォーミング」を採用左:ハート型の展開図。ファイバーレーザマシン(LCG-3015AJ)で切り出し、2枚重ねて、TIG溶接で外周の端面を接合する/右:ハイドロフォーミングの工程。内面に水を送り込み、液圧によって膨らませていく

特装車・防災設備向けステンレス部品がメイン ― Webマーケティングも積極展開

同社は1942年、太田社長の祖父が創業した。創業当初は軍需産業向けに部品を供給し、戦後は二輪車向け部品の金属プレス加工を手がけるようになった。1992年に太田社長が就任してからは、プレス機の老朽化が進んできたこと、タイミングよくトラック向けステンレス燃料タンクの仕事を受注できたことから、板金加工へとシフトしていった。

現在の主力製品は、特装車と防災設備に用いられる板金部品。この2業種で売上全体の80%程度を占めている。特装車向け部品は客先仕様のオプションパーツが中心で、防災設備向け部品は物件対応となるため、量産品は皆無。生産数量は1~2個が当たり前で、多くても10個以下となっている。

特装車向け部品は半分以上、防災設備向け部品はほぼすべてがステンレス製品。板厚は、ステンレスで板厚1.5~5.0㎜、鉄で1.6~4.5㎜に対応する。そのほか、アルミや銅も全体の10%ほどを占めている。

従業員数5名と小規模で、人的リソースが限られる中、Webマーケティングに力を入れ、累計で10以上のソリューションサイトを立ち上げてきた。現在は「金属の箱」「ステンレス台車」「シム・ライナー製作」「パンチングメタル製作」「ブスバー製作」「太陽光発電備蓄ベンチ」の6つのソリューションサイトを運営している。

中でも力を入れているのが「金属の箱」で、箱のタイプ・サイズ・材質・板厚・穴数・数量を入力すると概算見積りが自動表示される。2022年には事業再構築補助金に採択され、「金属の箱」のサイトに強度を自動計算するプログラムを実装し、筐体設計の領域へ進出する計画だ。

  • 画像:アートの工法提案へ向けた実験作 ― 「ハイドロフォーミング」を採用第29回(2016年)板金フェアで「造形品の部」銅賞を受賞した「装飾鏡」(SUS304・板厚1.5㎜)
  • 画像:アートの工法提案へ向けた実験作 ― 「ハイドロフォーミング」を採用アートイベント向けに製作したオブジェ

会社情報

会社名
大田産業 株式会社
代表取締役社長
太田 勝久
所在地
兵庫県神戸市西区神出町宝勢1463-1
電話
078-965-3977
設立
1955年(1942年創業)
従業員数
5名
主要事業
特装車部品・防災設備部品・各種機械部品・各種ボックス・アート作品・オブジェなどの製作
URL
https://www.ohtasan.co.jp/

つづきは本誌2023年5月号でご購読下さい。

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