ファイバーレーザ溶接による高速・高品位加工
「もう1台ほしい」 ― FLW-ENSISが加工領域拡大と負荷低減に貢献
医用画像診断装置と半導体・FPD製造装置に活用
三条精密工業 株式会社
①ファイバーレーザ溶接システムFLW-3000ENSISによるファイバーレーザ溶接/②医用画像診断装置の制御装置に用いられるフレームのパネルは、タップ溶接(断続溶接)で接合されている。FLWを活用することで溶接作業時間が約1/3に短縮した/③半導体製造装置用部品。FLW-ENSISの「プッシュプルフィラー機構」により肉盛り溶接の品質が改善した
「精密板金加工分野のコンビニエンスストア」
左:代表取締役の丸山勝氏/右:取締役専務の丸山正晴氏
三条精密工業㈱は、事業コンセプトとして「精密板金加工分野のコンビニエンスストア」を掲げ、得意先の利便性を第一に、自社技術の研鑽と信頼獲得に励んできた。長年培ってきた技術力と充実した設備により、Q,C,Dをはじめとする得意先ニーズにフレキシブルに対応することで顧客満足度を高めている。
「精密板金加工はあらゆる工業製品において普遍的に必要不可欠」(丸山勝社長)という考えから、成長が見込まれる旬の業界を模索し、得意先を開拓し続けてきた。現在主力となっている医用画像診断装置の仕事は2006年から、急速に仕事量が増えている半導体・FPD製造装置の仕事は2017年からスタートしており、時代に合わせた変化対応力を発揮している。
2014年以降は設備投資を積極化。2014年にパンチ・レーザ複合マシンACIES-2512T(2連棚仕様)、2016年と2018年にベンディングマシンHG-8025を各1台、2017年にファイバーレーザ溶接システムFLW-3000ENSISを導入し、自動化・合理化・品質向上に取り組んできた。それが成果を挙げ、従業員数はこの10年間、30名前後でほぼ変わらないにもかかわらず、直近3年間で売上高は約20%伸びている。
現在の売上構成は、医用画像診断装置の制御装置用部品が20~25%、半導体・FPD製造装置用部品が5~10%、通信機器、電子機器、建築ドア・シャッター関係などが各10%、残りが「その他」と幅広い。得意先は東北・関東甲信越に広範囲に広がっており、県外売上が70%を占めている。
2014年に導入したパンチ・レーザ複合マシンACIES-2512T+AS-2512NTK+ULS-2512NTK
曲げ工程。中央にHG-8025が2台ならぶ
YLRに続きFLW-ENSISを導入 ― 溶接工程の負荷の平準化を目指す
同社は2009年、YAGレーザ溶接ロボットYLR-1500Ⅲを導入し、レーザ溶接とロボットの運用ノウハウを培ってきた。
YLR導入を推進した丸山正晴専務は「他工程よりも負荷がかかる溶接工程にロボットを導入することで、負荷の平準化をはかりたいと考えました。また、市場に行き渡っていないYAGレーザ溶接機をいち早く採り入れ、差別化に役立てたいという思いもありました」と振り返る。
YLRは、SPCCを中心とする鋼板(板厚1.2~1.6㎜)とステンレス(板厚1.0~3.0㎜)の筐体・カバーなどの溶接に活用。「ティーチングが懸念していたほど時間がかからなかった」(丸山専務)ため、段取りや仕上げといった前後工程まで含めるとリードタイムが30%減少するなど、効果を発揮した。
2017年8月には、2台目のレーザ溶接機として、ファイバーレーザ溶接システムFLW-3000ENSISを導入した。「負荷の平準化」「他社との差別化」という導入目的は、YLRのときと変わらない。
YLRを導入してロボット化を進めたものの、それでもまだまだ人手に頼る仕事は多かった。それをできるだけFLW-ENSISに移行し、少しでも負荷を減らしたかった。
丸山勝社長は「前にもまして溶接作業者の確保・育成が難しくなっている一方で、ロボットの性能は急速に向上しています。少しでも早くロボットを活用した加工ノウハウを社内に確立していきたい」と導入の意図を語っている。
FLW-ENSISのティーチングペンダントによるティーチング作業
FLW-ENSISで溶接した理化学研究機器の部品(SUS304・板厚1.0㎜、外径φ61×H105㎜)
会社情報
- 会社名
- 三条精密工業 株式会社
- 代表取締役社長
- 丸山 勝
- 住所
- 新潟県三条市大字金子新田乙497-14
- 電話
- 0256-32-1740
- 設立
- 1952年
- 従業員数
- 33名
- 主要事業
- 医療機器、半導体製造装置、通信機器、電子機器、建材などの板金・プレス部品加工
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