オンラインセミナー「withコロナ時代の製造業 たった2つの新戦略」
“集約”と“分散”の両立 ― 「集散両立化」が最重要テーマに
製造業の「オープン化」と「リモート化」を提案
キャディ 株式会社 代表取締役CEO 加藤 勇志郎 氏
部品加工の受発注プラットフォーム「CADDi」を展開するキャディ㈱の成長が止まらない。板金・製缶・切削部品まで領域を拡大し、加工を委託するパートナー企業は600社を超えた。得意先企業は、装置・産業機械メーカー1,500社を含め、計5,000社を突破した。
新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、キャディは「withコロナ時代の製造業 たった2つの新戦略」をテーマにオンラインセミナーを開催し、発注企業(調達)・加工会社の両方に対して問題提起を行った。このセミナーで加藤勇志郎社長は「withコロナ、with感染症を前提とした経営戦略が必要になる」と述べ、その解決策として「オープン化」と「リモート化」を提案した。
以下、加工会社向けセミナーの概要を紹介する。中小製造業にとって関わりが深い「オープン化」の部分にフォーカスし、「リモート化」については割愛した。また、セミナー後に小誌が行った単独インタビューの内容も併せて紹介する。
コロナ禍は10年スパンで考える必要がある
新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)は、過去の疫病(SARS、MERS、エボラなど)と比較しても類を見ないスピードで拡散しており、そのスピードはまったく衰えていない。どこで収束するかまったくわからない状況だ。
社会的免疫の達成には最低でも数年かかるといわれている。ワクチンや新薬の開発・普及も、通常は数年かかるといわれている。海外では、一度感染して抗体を持っているはずの人が再感染した事例が報じられており、再発も織り込むと10年くらいのスパンで考える必要がある。
しかも、新型コロナ以外の新型感染症が、今後増殖するといわれている。温暖化によって感染症のリスクが高まり、凍土融解による新型ウイルス発生の可能性も示唆されている。つまり、これからは感染症のリスクを前提とした経営戦略が必要になってくる。
コロナ禍の経済的インパクトとリスク
新型コロナによる経済的インパクトは非常に大きい。リーマンショックの時は、日本の実質GDPが元に戻るまで5年かかった。今回のコロナショックはそれ以上のインパクトで、元に戻るまで5年以上かかる前提で事業を進めるべきだ。
新型コロナの影響でサプライチェーンにも支障(納期遅延や生産停止など)が出ており、大手メーカーは自社の生産拠点・調達先の分散を始めている。
加工会社の場合、仕入先は材料の1次加工会社、材料商社、材料メーカーとつながっていく。販売先としては、まず直接のお客さま(装置メーカーなど)があり、その先にはプラントやゼネコンや食品工場などがあり、さらに何層も連なって、最終消費者にたどり着く。このサプライチェーンのどこかで感染が起こったり、ロックダウン(都市封鎖)によって生産が止まったりした瞬間、調達難・納期遅延・販売難・販売遅延が発生する。
われわれの試算では、今の新型コロナの感染力を踏まえると、1年間のうち40%くらいの時間は、どこかでサプライチェーンが断絶している状態になる。そうした状況に向けたリスク分散が重要な課題になる。現時点でほとんどの会社が等しくこの課題に対応できていないことは、慰めになるかもしれない。しかし逆に言えば、この場面での対処のしかたが周りとの大きな差につながる ― この認識は非常に重要だと思う。
コロナ禍が企業のバリューチェーンに与える影響はさまざまだが(図1)、ここでは短期的かつ事業の存続に関わるリスクにフォーカスし、経営戦略―経営層のレイヤーとして何をすべきか、話していきたい。
プロフィール
- 加藤 勇志郎(かとう・ゆうしろう)
1991年生まれ。東京大学卒業後、2014年に外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。日本・中国・米国・オランダなどグローバルで、製造業メーカーを多方面から支援するプロジェクトをリード。特に、重工業、大型輸送機器、建設機械、医療機器、消費財をはじめとする大手メーカーに対して購買・調達改革をサポート。2017年11月にキャディ㈱を創業した。
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