“Chance, Challenge, Change”を目指す台湾板金業界
設立10年でクリーンルームのファン・フィルターユニットメーカーへ成長
部材加工にファイバーレーザ複合マシンを導入
錐光金屬股份有限公司(Asia Air Precision Technology Ltd.)

サプライヤーからメーカーへ
郭智雄総経理
1989年に桃園市で同社を創業した郭智雄総経理は、それまでは鋼材商社で工場長を担当。仕事柄、材料の動向を分析する中で、台湾でこれから成長が見込まれる半導体や液晶などのハイテク機器の製造に欠かせない、クリーンルーム関連の精密板金部品が絶対必要になると考えた。
クリーンルームは、空気中における浮遊微小粒子、浮遊微生物が限定されて清浄度レベル以下に管理され、また、その空間に供給される材料・薬品・水などについても要求される清浄度が保持され、必要に応じて温度・湿度・圧力などの環境条件についても管理が行われている部屋。清潔度レベルを向上させるためには空気の濾過・流量・風向きのコントロールが必要となる。そのためには空気を送り込むファン、空気を濾過するフィルターがユニットになって、クリーンルーム内の空気を制御することが必須となっている。郭総経理はここにビジネスチャンスを見出そうとした。
開業資金として総額3,800万元(1億3,300万円、1台湾ドル=3.5円換算)を用意し、工場とCNC制御の日本製板金機械を導入、従業員20名からスタートした。設計部門にはAutoCADを導入。設計から製造までをワンストップで行うことで、精密板金部品の受託加工を始めるようになった。
当初から台湾国内よりも海外のクリーンルームを製造するメーカーにターゲットを絞った。特にドイツ最大のクリーンルームメーカーであるM+W社(Meissner + Wurst 社)を訪問、精密板金加工による提案を行った。創業して間もなかったが、同社の製造品質は高く評価され、1年後にはM+W社の認定工場となり、各種精密板金部品を納入するようになった。そしてM+W社が台湾の半導体メーカー、TSMC社向けに受注したクリーンルームのファン・フィルターユニット(以下、FFU)の開発と製造支援を行うようになっていった。
1992年には精密板金部品の製造から、クリーンルーム用FFUの開発・製造に特化するようになって、受託加工を行うサプライヤーから自社ブランドを持つメーカーへと発展していった。その後、工場も移転、従業員も35名に増員した。
-
ファイバーレーザ複合マシンLC- 2515 C 1 AJによるファイバーレーザ加工
-
ベンディングマシンが並ぶ曲げ工程
自社ブランドのクリーンルーム用のファン・フィルターユニット(FFU)を開発
1995年にはドイツからクリーンルーム内の空気を濾過するための技術を導入、より小型のFFUの研究・開発を始めた。1996年にはクリーンルームの天井に使われる天井格子システムを独自開発して、台湾市場で販売を始めた。この頃から同社のFFUの品質と技術が日本でも評価されるようになって、半導体製造工場のクリーンルームで採用されるようになった。
そして工場を3,500㎡の新たな場所(現在地)に移転、工場内にクラス100,000に対応したクリーンルームを設置して、製品の組立精度の改善を実現した。そしてクリーンルーム用のFFUのOEM/ODMメーカーとしての地位を確立、2000年からは自社ブランドでFFU製品(遠心ファン、ドライブ、モニター通信ソフトウエアなど)を製造・販売するようになった。
板金加工設備に関しては、ドイツ・M+W社の認定工場になるための条件のひとつが、ドイツ製のパンチングマシンで加工することだったため、ドイツ製のパンチングマシンを最終的に3台導入。2004年には材料供給を自動化したパンチングセルを導入し、生産合理化と高精度化に対応するようになっていった。そして4´×4´サイズの同社製FFUの優れた性能が評価され、スイスのクリーンルームメーカーにも採用されるようになった。2000年にはISO9001の認証を取得するとともに、その後、機械や機器のリスクマネジメントに対応するISO12100の認証も取得した。2013年にはEC FFUの認証も取得した。
-
自社製のFFUを装備したクリーンルーム
-
設計・プログラムでは3次元CAD SolidWorksを使った3次元設計に対応している
会社情報
- 会社名
- 錐光金屬股份有限公司
- 英社名
- Asia Air Precision Technology Ltd.
- 総経理
- 郭智雄
- 住所
- 台湾・桃園市大園区五權里大埔23之3號
- 電話
- +886-3-3818355
- 設立
- 1989年
- 従業員
- 35名(このうち外国人研修生7 名)
- 主要事業
- クリーンルーム用のエンジニアリングパーツ、クリーンルーム(ドライ)用ファン・フィルターユニットシステムなど
つづきは本誌2016年3月号でご購読下さい。