特集

新たな価値創造に挑む九州

“空間づくり”から“価値づくり”へ

熊本地震からの復興 ― 第2工場建設へ

金剛 株式会社

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画像:“空間づくり”から“価値づくり”へ①ベンディングロボットHG-1003ARsによる曲げ加工/②HG-1003 ARsで加工した棚板を使った傾斜スライド棚。地震の揺れで棚板を傾斜・スライドさせることで、図書資料の落下を軽減する

図書館向けの書架を製造

画像:“空間づくり”から“価値づくり”へ前列の右から中村卓也取締役、小田部隆執行役員、後列の右から山下暁開発三チームリーダー、浜田洋至生産部グループ長、大野聡製造本部副本部長

金剛㈱は、図書館やオフィスで使われる移動棚の大手メーカーとして知られる。図書館家具、開・閉架書庫、自動書庫、また、美術館・博物館向け収蔵庫設備(調湿内装、耐火扉)、収蔵棚、音声ガイダンスシステム、カルテ保管棚・管理システム、オフィス・壁面収納家具、学校関連備品、物品棚、在庫管理システムなどの関連設備の製造販売を手がけ、昨年創業70年を迎えた。昨年12月には、経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定された。

昨年逝去した谷脇源資氏が1947年、熊本市に金剛測量製図器械店として創業。創業10年目にメーカーに転身し、鉄扉、金庫、スチールキャビネット、郵便ポストなどを製造販売するようになった。1966年にラック分野へ展開し、図書館業界向けの書架を製造。1967年に熊本県立図書館にラック納入第1号、1974年には世界初のハンドル式移動棚を発売した。

1993年に免震装置付き移動棚を発売、1995年の阪神淡路大震災で免震装置付き移動棚の性能が認められ、“免震の金剛”というブランドが浸透した。2011年の東日本大震災の際も、多くの図書を震災被害から守ることができ、「図書館の本棚倒壊を免れた」と感謝の言葉が同社に寄せられた。

  • 画像:“空間づくり”から“価値づくり”へパンチ・レーザ複合マシンEML-3510NT+ASR-2512NTK
  • 画像:“空間づくり”から“価値づくり”へHG-1303×2台による曲げ加工

社会の変化に対応し、“空間づくり”をコーディネート

近年、図書館は書籍の閲覧だけでなくコミュニケーションの場として発展している。同社が受注した武蔵野美術大学の新しい美術館・図書館(2010年開館)のコンセプトは「書物の森」。同社は空間づくりをコーディネートするビジネスモデルを積極的に展開するようになった。そして、ここで培ったノウハウを美術館・博物館などへも展開、現在では事業の柱のひとつになり、官公庁・文教施設・民間企業などのオフィス空間づくりにも取り組むようになっている。

こうした変化に対応する企業努力の結果、2017年9月期決算の売上高は前期比5%増の84億7,500万円となった。

2016年4月に発生した熊本地震の影響で、生産量は地震前の80%程度にとどまり、業績は後退したが、早期に工場を再開。災害復興需要や民間部門の需要拡大の取り込みに成功し、翌期(2017年9月期)には増収増益を確保した。社会の変化に対応したビジネスモデルの変革が同社の発展を支えたといっても過言ではない。

2009年に就任した田中稔彦社長は、熊本地震からの復興期に創業70周年をむかえ、Webサイト上に「これから金剛は創造的復興を目指します。そのために創業80年に向けて金剛のビジョンである『空間づくりから価値づくりへ』を次のテーマで実現します」「一つ目は、空間の価値をさらに高めるモノづくり。すなわち、得意とする棚や収蔵空間の機能、効率をより高める技術の進化です。二つ目は、地震対策技術など防災減災の社会づくり。震災による経験から、本当に私たちを守ってくれる空間をハード、ソフト両面から追求します。三つ目は、社会とつながった空間の質的価値づくり。実存のモノと情報に置換されるコトが、より緊密になる中で、機能や快適性を飛躍的に向上させる技術の深化に努めます」(2017年3月)とメッセージを掲げている。

  • 画像:“空間づくり”から“価値づくり”へ溶接作業
  • 画像:“空間づくり”から“価値づくり”へ電動式移動棚

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会社情報

会社名
金剛 株式会社
代表取締役社長
田中 稔彦
住所
熊本県熊本市西区上熊本3-8-1
電話
096-355-1111
設立
1951年(1947年創業)
従業員数
300名
主要事業
オフィス・文化施設関連設備の製造・販売
URL
https://www.kongo-corp.co.jp/

つづきは本誌2018年3月号でご購読下さい。

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